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世界で二番目にコロナ患者が多いインドが、アストラゼネカ製のワクチン委託生産を行っているメリットを生かし、中国やパキスタンへ対抗してワクチン外交へ乗出している。

 

アストラゼネカ・ワクチンの有効性は、1回の接種でも約76%の有効性があり、3カ月間持続するとの分析結果によって裏付けられている。標準としている2回の接種で、これが約82%に上昇するという。中国製ワクチンの有効性は50%強とされる。インド政府が、アストラゼネカ・ワクチンで「ワクチン外交」に打って出る理由はここにあろう。

 

『ロイター』(2月8日付)は、「インド、『ワクチン外交』で中国やパキスタンに対抗」と題する記事を掲載した。

 

インドの当局者は7日、同国がカンボジアへの新型コロナウイルスワクチン出荷を承認し、モンゴルや太平洋諸島諸国への供給も計画していると発表した。同日にはアフガニスタンにも同国からワクチンが届いた。これは、全てインドが拡大している「ワクチン外交」の一環だ。

 


(1)「2月7日、インドの当局者は同国がカンボジアへの新型コロナウイルスワクチン出荷を承認し、モンゴルや太平洋諸島諸国への供給も計画していると発表した。狙いは、同様にワクチン供給を約束しているアジアの巨大なライバル国、中国を出し抜くことだ」

 

インドは自身が、コロナ感染者数で世界2番目に多い国で、国内では8月までに人口約13億人のうち3億人に接種する計画。1月16日に接種を開始し、同月中に医療従事者約300万人に接種した。夏までに設定した国内目標を達成するには、接種ペースをもっと加速する必要がある。こういう国内の切迫した事情を抱えるが、中国より有効性の優れたワクチンで対抗する構えだ。

 

(2)「モディ政権は、自国での接種計画はまだ始まったばかりだというのに、近隣諸国に英アストラゼネカが開発しインドのセラム・インスティテュート・オブ・インディアが生産するワクチン数百万回分を供与している。モディ首相は地域諸国との関係を改善し、中国の政治的、経済的優位を押し返すために、様々な疾病向けの世界最大のワクチン生産国としての国力を駆使する構えだ」

 

アストラゼネカ・ワクチンは、有効性において中国製ワクチンをはるかに上回る。その有利性を生かして中国のワクチン外交に対抗する構えだ。

 


(3)「インドのカンボジア駐在大使によると、インド政府はカンボジア向けの新型コロナワクチン10万回分を緊急承認。カンボジアのフン・セン首相からモディ氏に寄せられた依頼に応えた。カンボジアは本来、中国の重要な同盟国だ。中国も国営シノファーム(中国医薬集団)が主要な開発者であるコロナワクチンを百万回分、提供する見込みになっている。カンボジア駐在インド大使は、「ほかの友好国から無数の要請があったにもかかわらず、また、インド国民への接種の約束にもかかわらず、セラムを通じた(カンボジアへの)供与が保証された」と強調した」

 

インドはミャンマー、バングラデシュ、ネパール、スリランカ、モルディブにも、最前線の労働者を手始めに接種していくのを支援するためワクチンを送っている。「ワクチン・フレンドシップ」と名付けた取り組みだ。中国への対抗では、並々ならぬものがある。

 

(4)「インドは2月7日に、アフガニスタンにアストラゼネカのワクチン50万回分を送った。荒廃した同国にとって初めて届いたワクチンだ。同ワクチンは世界保健機関(WHO)からの緊急承認を待っている段階である。インドが長年、アフガニスタンに何百万ドルも投資してきたのは、仇敵・パキスタンのアフガニスタンへの影響力を押し返すための幅広い努力の一つと見なされている。インド政府筋は「このワクチンは無償供与だ」と語った」

 

インドは、パキスタンが仇敵である。カシミール高原の領有を巡って、長年の紛争を続けてきた。インドとしては、パキスタンによるアフガニスタンへ及ぼす影響力を排除しなければならない。その決め手が、「ワクチン外交」なのだ。

 


(5)「インド外務省報道官によると、同国はこれまでに寄付ないし商業契約を通じて計17カ国に総計1560万回分を提供した。向こう数週間でモンゴル、カリブ海諸国、太平洋諸島諸国にも送られるという。同氏は「対外的な供与は、それぞれの国内の必要に応じて進められている」と説明した」

 

インドは、これまでに寄付ないし商業契約を通じ、計17カ国に総計1560万回分のワクチンを提供している。インドは、隠れたワクチン供与国である。潜在的な科学技術力の高さを示している。

 

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