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米国バイデン政権の誕生で、JR東海支援のリニア建設が一歩前進した。当面は、ワシントンボルティモア(約64キロメートル)を15分で結ぶ計画だ。最高時速は約500キロに達する。将来は、ニューヨークまで延長する計画である。これが実現すれば、日本のリニア技術が一躍、世界へ普及することは確実である。夢のあるプロジェクトである。

 

『日本経済新聞 電子版』(2月9日付)は、「JR東海支援の米リニア、着工手続き前進 新政権も追い風」と題する記事を掲載した。

 

JR東海が支援し、米主要都市をリニア技術で結ぶ「北東回廊プロジェクト」が前進した。米連邦鉄道局(FRA)が2021年1月、環境影響評価書の準備書(草案)を公開した。22年初めにも最終的な評価書をまとめる。鉄道好きで知られるバイデン米大統領の就任も追い風とみられ、必要な手続きや資金、地元の合意を得られれば、30年ごろの開業が見えてくる。

 


(1)「北東回廊計画はリニア技術を使い、ワシントンボルティモア(約64キロメートル)を15分で結ぶ。最高時速は約500キロに達する。7割の区間で地下を通り、空港の1駅を途中駅とする。最終的にはワシントンから約360キロ先のニューヨークまで延伸し、60分で両都市をつなぐ構想だ」

 

ワシントンボルティモア間は、リニア技術を採用する。最終的には、ニューヨークまで延伸(360キロメートル)する計画だ。米国の心臓部を走るリニアだけに、世界の注目度はいやが上にも上がる。

 

(2)「事業主体は、米企業のボルティモア・ワシントン高速鉄道(BWRR)で、JR東海は技術支援の形で携わる。27年以降に開業し、東京(品川)名古屋を40分で走行するリニア中央新幹線のノウハウを提供し、日本の鉄道技術の向上や協力メーカーのコスト削減につなげたい考えだ。

 

日本の新幹線とリニアが、米国へ「上陸」する。新幹線は、米南部テキサス州の主要都市ダラスヒューストン間(約385キロ)を1時間半ほどでつなぐ計画の技術支援もしている。同計画は21年にも着工に入る見通しだ。

 

(3)「既にワシントンボルティモア間では鉄道が走っている。全米鉄道旅客公社(アムトラック)による高速鉄道や、メリーランド州の交通局による通勤電車が通る。所要時間はそれぞれ40分弱、1時間ほど。自動車でも早ければ1時間程度で到着する。JR東海幹部は「ニューヨークまで延伸できれば事業としても成り立つ」と話す。またボルティモアまででも工事に伴う20万人規模の雇用創出や、交通渋滞の緩和効果が見込める。米国の国内総生産(GDP)を「年間で約6億ドル(約630億円)押し上げる」との試算もあり、利点も多い」

 

ボルティモアまでの工事でも、20万人規模の雇用創出が見込める。米国GDPを年間約6億ドル押し上げるという。

 


(4)「新型コロナウイルス禍が足かせとなり、実現に向けた手続きが停滞していた。ここにきて前進したのは「FRA(米連邦鉄道局)が米政権の交代をきっかけに、議論を活性化させたかったのでは」(鉄道関係者)との声がある。1月に米大統領に就任したジョー・バイデン氏は「アムトラック・ジョー」との愛称があるほど、鉄道と縁が深いからだ」

 

バイデン大統領は、大の鉄道フアンである。これが停滞していた手続きを促進したとも言われている。

 

(5)「バイデン氏は上院議員時代、30年以上にわたり、ボルティモアの北東にあるウィルミントンの自宅からワシントンまでアムトラックで通勤していたという。財務体質が厳しいアムトラックの支援に尽くしてきたほか、鉄道が自動車や旅客機に比べ環境負荷が小さい点を評価してきた経緯もある。公共投資にも力を入れようとしている。世界的に広がる脱炭素の流れも追い風だ。BWRRはワシントンボルティモアのリニアについて、距離あたりのエネルギー使用量の減少で「温暖化ガスを200万トン以上削減する」と強調する。日本で言えば一般家庭70万世帯の年間二酸化炭素(CO2)排出量に相当する」

 

世界的に広がる脱炭素の流れも、リニア推進の追い風になった。ワシントンボルティモアだけで、温暖化ガスを200万トン以上削減すると試算されている。

 

(6)「BWRRの最高経営責任者(CEO)、ウェイン・ロジャース氏は環境影響評価書の草案公開を「重要なマイルストーン(節目)に到達した」と評価する。今後は所管官庁のFRAが4月まで評価書の意見を募った後、最終的な評価書を作成する。並行して安全基準の連邦規則案を作るほか、BWRRが資金調達や用地確保、地元との合意形成に努める。書類が完成すれば着工段階に移る。書類の完成に2年前後、工期は7年ほどを見込む。ワシントンボルティモア間の総工費は150億ドル(約1兆6000億円)前後と言われる。資金調達のハードルは低くないため、JR東海の金子慎社長は「公共投資として行われることを期待している」と話している」

 

今後、書類の完成に2年前後、工期は7年ほどを見込む。ワシントンボルティモア間の総工費は150億ドル前後と予想されている。公共投資として行われれば、資金調達の壁は解決する。