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韓国軍は、在韓米軍が握る韓国軍の統帥権(戦時作戦統制権)の移管を在韓米軍に要求している。朝鮮戦争は現在、法的に言えば「休戦」で平和条約を結んだ状態ではない。こういう不安定な中で、核を持つ北朝鮮軍が戦闘行為を再開した場合、韓国軍は降伏の道を選ぶ危険性が高い。元在韓米軍司令官が、こう言って韓国軍への統帥権移管に反対している。

 

韓国軍は、文政権の下で北朝鮮軍に対し「主敵」という形容詞を削除した。南北の融和感を醸し出している状態で、北朝鮮の不意打ちを受ければ、韓国軍の戦闘意欲はどうなるか。しかも、核攻撃をちらつかされれば、恐怖感で足が止まってしまうであろう。韓国軍は、「主敵」でない北朝鮮軍と真っ正面から戦う意欲を失わないか。それが、危惧されるのだ。

 

『朝鮮日報』(2月11日付)は、「『戦時作戦統制権が移管されれば韓国は北に服属する』」と題する記事を掲載した。

 

バーウェル・ベル元在韓米軍司令官が10日「北朝鮮が核兵器で武装している限り、韓国も米国も戦時作戦統制権の移管を進めてはならない」「統制権移管が強行されれば、韓国は北朝鮮に服属する危険性が高まる」と警告した。2006~08年に在韓米軍を指揮したベル氏はこの日、米政府系放送局『ボイス・オブ・アメリカ』(VOA)に送った声明で「統制権移管は韓国国民にとって歴史的なミスになるだろう」とした上で上記のように訴えた。

 

(1)「ベル氏は、「韓国は主権国家としていかなるやり方であっても統制権移管を早める権限と力を持っている」と前置きしながらも、「米国が統制権の移管を決め、後からこれが性急な決定だったと判断した場合、戦争が起こった時に米軍派兵を厳しく制限する可能性が高い」と予想した。ベル氏はさらに「米軍派兵が制限されれば、長く続いた同盟に大きな亀裂が生じ、韓国は北朝鮮政権の下に服属する危険性が高まる」とも指摘した」

 

韓国国防部(省に相当)の徐旭(ソ・ウク)長官は、先日の記者懇談会で「私の在任中に戦時作戦統制権の移管を進展させなければならない」と発言している。これは建前論である。世界一の軍事力を持つ米軍が統帥権を持っているから、北朝鮮軍は静かにしているだけという見方も一理あろう。進歩派が政権を握っている状態で、北朝鮮軍が戦闘行為に入れば「南北統一へ絶好機」と判断してもおかしくない。韓国進歩派は、それほど信頼のおけない政権である。

 


(2)「ベル氏は、「中国からの全面的な軍事支援が保障されている中で、米国が同盟パートナーとしての役割に完全に専念しない場合、北朝鮮軍は最後の戦闘で韓国軍を撃退する可能性が高い」と予想した。ベル氏はさらに「戦闘状況で米国以外に戦闘部隊を派遣し、防衛を支援するほど意味のある同盟国は韓国にはない」「米国がなければ韓国は北朝鮮に一国だけで対抗することになるが、北朝鮮は中国あるいはもしかするとロシアからも全面的な支援を受けるかもしれない」と警告した」

 

北朝鮮が、韓国を侵略しそれを支えた中国とロシア(旧ソ連)とともに、朝鮮半島全体から米軍を追出す機会を狙っていることは疑いない。ましてや、米中対立の長期化という中で、朝鮮半島を共産化できれば、これに勝る戦略はないのだ。米国が、こういう危険性の下で統帥権を移管する場合、そのリスクの高さを知っているであろう。

 

(3)「徐旭長官は先日、「韓国軍の防衛態勢は確実なので、これを信じて安心しても良いと国民に自信を持って言える」「北朝鮮の核とミサイル能力に対しても、韓米同盟の力と我々独自の能力を統合して抑制し、対抗する能力と態勢を持っている」と発言した。これについてベル氏は「米国が韓国に『核の傘』を提供する限り、戦闘兵力に対する戦時作戦統制権は米国が持ち続けなければならない」「統制権移管を完全に延期し、米国との安保同盟に専念することを韓国に強く勧告する」と主張した」

 

韓国が、米国の傘の下にある以上、統帥権は米軍が持つべきとの主張は正しい。韓国は、民族主義に走っているが、世界情勢変化の中でいかに即応すべきか。冷静に考えるべきだろう。

 


(4)「これに先立ち韓国国防部は今月2日に公表した「2020国防白書」において「韓米は戦時と平時における偶発的な状況に備え、連合作戦計画を発展させている」と明らかにした。しかし大規模な兵力や装備を動員する野外の機動訓練(FTX)を省略し、コンピュータ・シミュレーション方式の指揮所訓練(CPX)として行われる来月の連合訓練でさえ、北朝鮮の反発を受けて縮小・延期される可能性が浮上している。文在寅(ムン・ジェイン)大統領もつい先日、連合訓練について「北朝鮮との協議が可能だ」と述べたが、これについても米国からは懸念の声が相次いでいる」

 

韓国の政治状況で、韓国軍の統帥権を在韓米軍から韓国軍へ移管するのは余りにもリスクを伴う話だ。韓国軍は、米軍と一体になって初めて総合力を発揮できる存在である。

 

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