a0960_008570_m
   

中国では、豪州への経済制裁を発動し豪州炭の輸入を禁止したことが裏目に出て、国内の石炭価格が暴騰し、電力不足に陥っている。この珍現象で、嗤うに嗤えない経済無策の烙印が押される事態だ。

 

中国では、経済政策を牛耳る「3人衆」がいる。国家主席の習近平氏、副首相の劉鶴氏、もう一人は最近、メキメキ頭角をあらわしてきた銀保監会(銀行保険監督管理委員会)の郭樹清主席である。馬雲(ジャック・マー)氏率いるアリババ集団傘下の金融会社アント・グループに対する締め付けを強化している人物だ。

 

この3人衆は、「市場経済の弱点には、厳格な規制で対処できるという信念を共有している」という。『フィナンシャル・タイムズ』(2月3日付)が報じた。今回の石炭不足は、前記3人衆が音頭を取って進めたのであろう。石炭不足は、市場経済の弱点どころか厳格な規制がもたらした大失敗である。

 

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2月11日付)は、「中国で石炭不足の危機、『豪いじめ』が裏目に」と題する記事を掲載した。

 

中国が豪州産石炭の輸入を禁止したことで、中国国内の石炭市場では価格高騰や供給不足などが起き、危機に陥っている。新型コロナウイルスの起源を巡り、独立した国際的な調査を要求したオーストラリア政府に反発した中国は、昨年9月から豪州産石炭の輸入を非公式に禁止した。12月半ばには、中国政府が石炭の大口買い手である電力大手を呼んで供給不足問題を議論する会合を開催し、禁輸措置をその場で公式なものとした。

 

(1)「中国は燃料炭が不足しており、当局はそれまで最大の供給元だった豪州以外から輸入を拡大するよう指示。石炭価格は昨年半ば以降、84%高騰しているが、中国の買い手は遠方から調達するため、さらに大幅な上乗せ価格での購入を余儀なくされた」

 

輸入炭が、昨年の5月頃から減り始めたという。8月には前年同月比で30%以上の減少となり、11月には43.8%減と大幅な減り方だ。輸入炭を原料としている沿海地区の火力発電所の操業に支障をきたす事態になった。石炭価格の高騰は当然である。

 


(2)「ノルウェー産サーモンからモンゴルの資源まで、中国当局は近年、自国の購買力を駆使して、他国に政治的圧力をかける姿勢を強めてきた。だが、今回の石炭市場の混乱は、こうした対外戦略が裏目に出る局面があることを如実に物語っている」

 

中国は、自国の購買力を盾にして相手国へ政治的圧力を掛けてきたが、今回の豪州への復讐が、大逆転をもたらし国内の石炭市場を混乱させている。

 

(3)「中国の石炭価格は1月までの7カ月間に急伸し、高品質の燃料炭はトン当たり130ドル余りと過去最高値をつけた。昨年半ばからは2倍近い水準だ。背景には、昨年の(国内)生産ペースが落ち込んだことに加え、景気が想定以上の回復を遂げたことがある。習近平国家主席は、気候変動対策に関して世界で指導力を発揮することを目指しており、国内の化石燃料の消費抑制に取り組んでいる

 

下線部分は、習氏が化石燃料の消費抑制を狙って石炭価格を高めに設定しているという。だが、現在の石炭価格は昨年半ばからの2倍近い水準まで高騰している。これは、「価格政策」を超えて大失敗というべきである。

 


(4)「中国当局は2018年以降、石炭輸入にクオータ(割当枠)を導入している。環境対策に追い風となる一方、中国産の石炭を強化することにもなった。また足元の供給不足は、中国中央・北東部の石炭産地で進められている反汚職と環境関連の調査も要因となっている。地元政府は昨年、調査が鉱山事故にも及んでおり、石炭生産が急減すると警告していた」

 

このパラグラフを読めば、中国の石炭政策は明らかに失敗している。石炭需給は、市場の価格形成に委ねて、当局が行き過ぎを調整する程度がベストである。こういう価格機能を無視して、「規制第一」に走った結果がこの始末である。

 

(5)「中国北部では40年ぶりの寒さを記録しており、石炭不足を受けて世界からの輸入に頼らざるを得ない状況となった。国家発展改革委員会(NDRC)は豪州産石炭の輸入は引き続き禁じたが、その他の国についてはクオータを断念した。豪州は高品質の石炭が豊富なことで知られる。中国国内の供給不足は、まさにこうした優良炭で顕著で、足元では価格が豪州産の2倍の水準に跳ね上がっている。業界関係者によると、買い手はトン当たり139ドルの高値を受け入れざるを得なかったという」

 

政治的な思惑で高品質の豪州炭をオミットし、国内石炭価格は豪州産の2倍にも跳ね上がっている。愚かな結果に驚くほかない。改めて、国家主席の習近平氏、副首相の劉鶴氏、銀保監会の郭樹清主席の3人衆は、「市場経済の弱点には、厳格な規制で対処できる」という逆立ちした信念が、中国経済に混乱をもたらしていると言うほかない。

 

次の記事もご参考に。

 

2021-02-01

メルマガ228号 「暴走中国」 安保と経済で落とし穴に嵌まり 自ら危険信号発す

2021-02-11

メルマガ231号 米中「30年戦争」 中国は急激な出生減で暗黒予兆、米国包囲網も重なり「自滅」