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韓国は、米国バイデン政権に対してトランプ政権の行った米朝ハノイ会談を受け継ぎ、対話路線を求めている。これは、バイデン政権の対北政策を完全に無視した要請である。米国は、トランプ方式によるトップダウン外交を否定している。

 

米国における対北政策の変化を弁えず、トランプ政権時代の方式に拘るのは、韓国外交の音痴というほかない。世界外交を動かす当事者は米国である。それを認めるならば、バイデン政権の動きに沿った外交が成果を上げられるはずだ。

 


『朝鮮日報』(2月14日付)は、「文政権は『20年前の外交惨事』を繰り返すのか」と題する寄稿を掲載した。筆者は、尹徳敏(ユン・ドクミン)韓国外大碩座(せきざ)教授・元国立外交院長である。

 

最近の文在寅(ムン・ジェイン)政権の姿は、まさに20年前のデジャビュと言える。20年前のABM(弾道弾迎撃ミサイル制限)条約を巡る米ロ葛藤でロシアの肩を持ったのと同様に、韓国は中国の地域覇権への挑戦に直面した米国の戦略に加わろうとせず、中国に傾倒するかのような立場が見受けられる。

 

(1)「米国が推進するインド太平洋戦略にも、クアッド・プラスにも、クリーン・ネットワークにも参加するとの立場を示していない一方で、中国に対してはミサイル防衛もTHAAD(超高高度防衛ミサイル)の追加配備も韓米日の軍事協力も行わないという、いわゆる「3不約」を交わしている。ワシントンの朝野では、韓国は中国に傾倒した「影の国家」とする見方が強い

 

20年前の金大中政権は、ロシアの存在に脅威を感じていたように、文政権は、中国の存在を脅威として捉えている。米韓同盟がありながら、米国の不利益になるような外交戦略を取っている点で、両政権とも全く同じ誤りを冒した。米国と共に歩まないで「独り善がり」な行動を取っているからだ。米国は現在、文政権を中国の「回し者」と見ているほど。危険である。

 


(2)「文在寅大統領は新年の記者会見で「バイデン新政権はトランプ政権で成し遂げた成果を継承・発展させるべきだ」と言いながら、
トランプと金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の間で交わされたシンガポール宣言を対話の出発点としなければならないとした。まるで20年前、金大中大統領が、ブッシュ大統領にクリントンの対北政策を受け継ぐよう促したのと同じようなパターンだ。バイデン大統領と外交安保チームは、トランプの北朝鮮政策を非難した。イベント的な出会いとリアリティーショーを通じて、この3年間、非核化の進展どころか北朝鮮の核戦力を強化させる結果だけを招いたと考えている」

 

バイデン政権は、トランプ政権の対中政策を引継ぐが、対北朝鮮政策について見直し方針を打ち出している。文政権は、この明確な線引きを理解しようとせず、対北では従来方式を主張している。間違いなのだ。

 

(3)「過去、北朝鮮と交渉した豊富な経験を持つ彼ら(注:米国)は、トランプ政権の政策を継承するよう求める文大統領の指摘をどのように捉えているのだろうか。今、文政権が推進しようとしている方向性は、20年前の「外交惨事コース」だ。バイデン政権は、地政学的・軍事的・経済的な側面での中国の挑戦を最大の脅威と捉え、これに対応する核心戦略として同盟ネットワークと民主主義の連帯を強化しようとしている。バイデン政権は、中国を狙った同盟ネットワークを強化する上で、韓国を最も弱い関係と見なしていることだろう」

 

文大統領は、日韓関係を悪化させて今やその修復に大童の状態である。要するに、「風見鶏」外交をやっている。日本と関係悪化を起こせば、どういうブーメランが起こるか。そういう計算をしていないのだ。同様に、米国にも同じような振舞である。南北対話ということに拘り、米国を北朝鮮との対話路線に引き込もうと狙っている。米国が、それを拒否している以上、実現は不可能なはずだ。

 

(4)「トランプ大統領は、韓国を同盟よりも「米国優先主義」の次元で扱った。 韓米同盟に対する価値があまり付与されなかったため、文政権の中国偏向的な態度に対し、これといった立場表明を行わなかった。しかし、バイデン政権は韓米同盟を重視し、韓国の役割に対する期待があるだけに、韓国に明確な立場を求めるものと予想される」

 

米中対立の長期化・先鋭化の中で、これまで見過ごされてきた韓国の「二股外交」はもはや不可能である。こういう外交環境の悪化を考えなければ、米韓同盟は機能しなくなるのだ。

 


(5)「20年前の外交惨事から教訓を得ることができなければ、(韓国が、)金与正(キム・ヨジョン)氏が命令する通りに法を整備し、人事を行ったとしても、北朝鮮は文政権の望みを聞き入れないだろう。
北朝鮮が南北連絡事務所を爆破し、煮込んだ牛の頭、最大の間抜けと非難を浴びせている理由は、逆説的だがハノイ会談の失敗で文政権が米国にまったく影響力がないという点を悟ったためだ。現実味のある対北認識とともに、同盟として信頼を与えるとき、バイデン政権が耳を傾け、北朝鮮の前向きな動きを期待することができるだろう」

 

文大統領は、北朝鮮からの信頼を失っている。米朝ハノイ会談で北朝鮮は、韓国情報で動いて大失敗したからだ。一方、米国バイデン政権からの信頼度も低いのである。米朝から期せずして低評価されている韓国が、米朝を動かせる力などない現実を知るべきだろう。哀しきピエロが文在寅の役回りになった。

 

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