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タイトルは誤解を招きやすいが、アジアの非核保有国の共同防衛案である。非核国が、核を持たずに安全保障体制を確立するには、NATO(北大西洋条約機構)と同様に、米国の核の傘で安全保障を確保しようという構想である。

 

米国のシンクタンク「シカゴ・カウンシル」を中心に結成された特別研究会はこれまで1年にわたり研究や討論を重ね、報告書を2月12日に発表した。オバマ政権で国防相を務めたチャック・ヘーゲル氏、英国のマルコム・リフキンド元外相・国防相、オーストラリアのケビン・ラッド元首相が共同議長を務めた。

 


『朝鮮日報』(2月15日付)は、「米国とアジアの同盟国は核兵器の運用を共に議論すべき、NATO式の核計画グループがアジアにも必要」と題する記事を掲載した。

 

米国や欧州、アジアの元外交官や国防相経験者らが「アジア核計画グループ(ANPG)」の創設を提案した。これは米国のバイデン政権が、韓国などアジアの同盟国と核兵器に関する具体的な政策を共に議論するというもの。NATO(北大西洋条約機構)加盟国と同じようにアジアの同盟国も米国の核兵器政策に関する議論に参加し、核の使用を決定するプロセスにおいてその意見を反映できるようにするというものだ。米国が、北朝鮮を核保有国として認めることに対する、同盟国からの疑念を払拭するための方策と考えられる。

 

(1)「1960年代に欧州の同盟国と米国が安全保障政策で協定を結び、同盟国を安心させる決定的な役割を果たしたNATOの「核計画グループ(NPG)」のような組織がアジアにも必要ということだ。研究会は、「アジア核計画グループには韓国、日本、オーストラリアのトップの政治指導者らを含むことも可能」とした上で「従来の相互防衛条約に代わるものではなく、逆にこれを強化するものだ」と説明した」

 


アジアでは、「インド太平洋戦略」の中軸として「クアッド」(日米豪印)が、対中共同防衛構想を進めている。これに「+α」候補として韓国・ベトナム・ニュージーランドの名前が上がっている。韓国の去就が明らかでなく、米国は英国を加える意向を強め、英国もこれに賛同していると見られる。

 

アジア共同核構想は、アジアの非核国がNATO方式で米国の傘に入るもので、中朝の威嚇から身を守る狙いである。

 

過去、日本がNATOへ加盟する話も出たことがある。これは、NATOを北大西洋地域に限定せずに世界規模の機構に発展させるためだ。日本のほか豪州、シンガポール、印度なども候補国に上がった。日本、豪州、印度は、期せずして「クアッド」参加国である。

 

米国は、「クアッド」国を「アジア版NATO」として結集する構想を考えている。そこで、参加国を増やすべく「クアッド+α」を検討しているもの。冒頭の「アジア核計画グループ(ANPG)」は、これと軌を一にしたものだ。

 


(2)「
NATO加盟国は、米国との協定に基づき、核兵器政策に関する議論に参加する。核兵器使用の最終的な決定権は米国の大統領が持つが、核の統制権については共有するというものだ。このようなモデルが適用され、韓半島有事の際に米国の核使用決定に韓国の意向を反映できるとすれば、非常に大きな意味があるとの見方で専門家の意見は一致している2019年にも、米国防総省国防大学は韓米日による『核兵器共有協定』を提案し、北朝鮮の挑発を抑制すると同時に、中国に対する圧力を高めるよう求めた。当時、韓国政府は「NATO式の核兵器共有については全く検討していない」との立場を示していた」

 

アジアの非核保有国が、米国の傘の中に入る構想は2019年に、米国防総省国防大学から提案された経緯もあり、目新しいものではない。底流には、こういう「核兵器共有協定案」が存在する。

 

(3)「これとは別に研究会は、韓国が加わるかどうかで問題になっているクアッドについて「米国をはじめとする参加国は、この対話組織に韓国を含めることを前向きに検討すべきだ」と主張した。米国、インド、日本、オーストラリアの4カ国が参加して2019年に結成されたクアッドは、米国のインド・太平洋戦略や対中けん制の最も中心にあるが、韓国政府は参加に否定的な立場を示してきた」

 

韓国文政権では結論が出ないだろう。「親中朝」意識が強く、中朝を仮想敵にするようなグループを忌避するはずだ。国家の安全保障よりも、学生運動時代の世界観に忠実であり、そこから抜け出せないのであろう。

 

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