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中国経済に奇跡は起こらない

石油需要2025年ピーク説

生産年齢人口急減が凶になる

 

昨年12月、中国の石油精製最大手であるシノペック(中国石油化工)が、極めて重要な見通しを発表した。中国の石油需要が、2025年にピークを迎えるというのだ。このニュースに、世界のどこも注目する向きはなかった。これは、中国経済が意外に早く減速することを予感させるものである。

 

エネルギー需要は、一国経済活動を総合的に示している。石油は、依然としてエネルギーの大宗を占める。脱化石燃料が叫ばれているものの、ここ数年で完全に実現するのではない。

 

習国家主席は昨年9月の国連総会で、中国は2060年までに二酸化炭素(CO2)排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を宣言した。この一環として、2030年までに排出量を減少させると表明したのである。シノペックによる中国の石油需要「2025年ピーク」は、一般にこの流れのなかで捉えられているのかも知れない。だが、そのように事態がスムースに運ぶ訳であるまい。シノペック予測の裏には、中国経済の悪化が隠されているのだ。

 


習氏は、CO2排出量を2030年までに減少させると言う。多分、プロパガンダであろう。中国は長年、石炭産業に雇用とエネルギーの創出を頼ってきた国である。国家統計局によると、石炭は2019年の国内エネルギー構成の58%も占めていた。CO2排出量抑制の上で最初に手をつけるべきは、石炭使用の減少である。

 

石油需要の減少は、CO2排出量抑制政策と直接関係ない。端的に言えば、経済活動の低下=GDP成長率の構造的な低下が、石油需要を減少させるのである。この問題は、後で詳細に取り上げたい。

 

中国経済に奇跡は起こらない

中国経済が、もはや日の出の勢いを失って「中低速過程」に入っていることは誰もが承知のはずである。だが、人口14億人を数える中国のことだ、何か奇跡が起こるのでないかと期待する向きもいる。中国が、2020年代後半にGDPで米国を抜き、世界一になるという予測はその最たるものだ。

 

中国経済に奇跡は起こらない。人口動態が、その決定的な要因であり、中国経済は急減速の運命にある。昨年の出生数が、1004万人と前年比30%強の落込みになったのは、出産適齢時の女性人口が急減している結果である。この動かし難い要因を考えれば、中国経済に奇跡が起こることはない。中国の石油需要が、2025年にピークを迎えるとの予測は、それを裏付けている。

 


世界銀行と中国政府のシンクタンクである国務院発展研究センターが、2019年9月に発表した報告書では、次のように分析している。

 

各年代別のGDP平均潜在成長率の推移

       2021~30年  31~40年  41~50年

包括的な改革   5.1%      4.1%     3.0%

中程度の改革   5.1%      2.9%     2.2%

限られた改革   4.0%      1.7%     2.3%

 

前記の「限られた改革」は、ほぼ何も改革しないことを示している。「改革」とは、市場経済化である。市場原則に沿った経済政策の展開であるが、中国では名ばかりである。当局からの統制・指令が全てだ。中国では現在、燃料炭不足で発電能力が落ち停電が頻発している。同時に、石炭価格は豪州での石炭価格の2倍にも跳ね上がっていながら、豪州炭の輸入を禁止している。豪州への経済制裁の結果である。

 

こういう不合理な経済政策を行っている中国が、力を入れているのは汚職取締である。悪徳官僚追放によって、国民の不満を解消しようとしているもの。昨年、党幹部から現場の党員まで含めて処分された総人数は約60万人である。19年(約59万人)よりも増えたのだ。

 


皮肉な話だが、この「汚職官僚」は市場機構の代替をしている。賄賂が、目詰まりを起こしている市場機構の流れをスムースにしていると言うのである。こうして、潤滑役である汚職役人を逮捕すればするほど、中国経済は上手く回らなくなるという、近代以前の経済機構に成り下がる宿命を負っている。

 

習近平氏は、市場経済システムの弱点を管理で補強できると信じている。国有企業の非能率をカバーさせるべく、同業同士による大型合併を強行した。これは、合併という「管理」で国有企業の非効率を補えると信じている結果だ。「経済改革」と逆行する動きである。

 

世界銀行が、前述の2021~30年の潜在成長率で、「限られた改革」の場合4.0%と判断したのは当然であろう。この延長で31~40年の潜在成長率は、1.7%まで低下すると見るのである。冒頭で取り挙げたシノペックが、石油需要のピークを2025年としたのは、合理的根拠あってのことだ。それについて、これから取り上げたい。(つづく)

 

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