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中国は、香港へ「国家安全法」を導入して、英国へ大きな代償を払わされる様相が濃くなってきた。習近平氏は2015年、英国訪問を果たし「英中蜜月」と騒がれた。それも、今は昔話となった。英国の中国嫌いが徹底してきたのである。

 

『日本経済新聞 電子版』(2月19日付)は、英中『黄金時代』に幕、香港住民は英移住ビザに殺到」と題する記事を掲載した。

 

英中関係の悪化に歯止めがかからない。中国が香港への統制を強めたのをきっかけに、香港の旧宗主国の英国が反発。英国が始めた香港住民の移住支援策には申請が殺到している。中国のウイグル族の人権問題では、中国が英BBCの放送を禁じた。「黄金時代」とうたわれた蜜月関係は終わりを迎えている。

 

(1)「英中関係は、最近まで「黄金時代」と称されていた。英国は2015年に中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)に主要7カ国(G7)で最初に参加した。中国企業による英国内の原子力発電所への出資や鉄鋼大手の買収など基幹産業での結びつきも強まった。だが、中国国内の新型コロナウイルス対策の初動への疑念などから、英国内で対中懐疑論が台頭し始めた。20年6月末に習近平(シー・ジンピン)指導部が香港で統制を強める香港国安法を制定すると、英中関係の悪化は決定的になった」

 

中国は、英中で取り決められた「一国二制度」を、香港への「国家安全法」導入で破棄した。これが、中国への不信感を強め、怒りへとなっている。かつての「大英帝国」である。その沽券に傷をつけられたのである。中英関係が、急速に冷却化するのは当然であろう。

 

(2)「中国の放送当局は21年2月11日、英BBCワールドニュースの放送を禁止した。BBCはウイグル族の「再教育施設」について、人権迫害や集団の性的暴行があったと報じ、中国が抗議していた。これに先立つ4日、英当局は中国国際テレビ(CGTN)の番組の最終的な編集権を中国共産党が握っているとして、放送免許を取り消した。英紙デーリー・テレグラフによると、中国人3人が中国の別々の報道機関への勤務を装って英国に入国していた。英当局が身元を突き止めスパイ容疑で中国に送還したという」

 

英国は、諜報機関が世界で1、2位を争う実績を持っている。その嗅覚の裏をかこうとした中国人スパイ3人が身分を突き止められ、強制送還されたという。中英関係は、ここまで冷却化している

 


(3)「英政府は、春以降に最新鋭空母クイーン・エリザベスをインド太平洋地域に派遣する際、日本の自衛隊と共同訓練する方針を固めている。中国の海洋進出をにらんだもので、東シナ海・南シナ海情勢を巡り一方的な現状変更の試みに反対するための連携強化だ」

 

英国は、最新鋭空母「クイーン・エリザベス」をインド太平洋に長期派遣する。日本が母港になる見通しである。これは、英国が日米主導の「インド太平洋戦略」の「クアッド」(日米豪印)へ参加する可能性を高めるものだ。米国は、すでに英国をクアッドの一員に加える意向と伝えられている。これが実現すれば、中国にとって極めて由々しき事態を招く。英国は、NATO(北大西洋条約機構)加盟国である。このことから、「クアッド」参加国は「アジア版NATO」の一員になる可能性が高まる。

 

NATOは、2030年を目標に対中国戦略を決定する予定だ。中国の存在がNATOにも脅威という認識である。それまでに、アジア版NATOが結成されれば、この双方に包囲される事態になろう。この意味で、英中対立は中国の将来に大きな影を落としそうだ。

 


(4)「
英国が強硬路線にカジを切るのは、ジョンソン政権を支える与党・保守党内の対中懐疑派が勢いを増している点が大きい。特に伝統的に人権を重んじる保守派にとっては、香港の自治の侵害やウイグル族の強制労働が疑われる問題は容認できない。英議会では政府提出の貿易法案に、特定民族の破壊行為があると認定された国との貿易や投資の協定を結びにくくする修正を加えようとする動きが活発化している

 

下線部分は、中国を想定している。英国議会は、政府に対して中国と将来、貿易協定を結ばせないように「ブレーキ」を掛けようとしている。

 

(5)「上院は、2月上旬の貿易法案の審議で「英国の高等裁判所に、民族破壊行為があったかを判断する役割を与え、『あった』と認定された場合、議会で当該国との通商政策について議論する」という趣旨の修正を加えた。議会が既存の自由貿易協定(FTA)を停止したり、進行中の交渉を止めたりできるようにする狙いだ。修正案が下院に戻ると、政府は上院の修正案を拒否する代わりに、「議会の委員会に民族破壊行為について調査する役割を与える」という妥協案を示した」

 

貿易法案は、高等裁判所が民族破壊行為のあったと判断した国に対して、議会が既存の自由貿易協定(FTA)を停止したり、進行中の交渉を止めたりできるようにする狙いである。これは、中国による新疆ウイグル自治区での民族弾圧を想定した法案である。英国は、この中国と自由貿易協定を結ばないし、貿易交渉を中断させるという内容だ。

 


(6)「2月9日、この案が賛成多数で可決された。与党・保守党から上院の修正案に賛同する議員約30人の造反が出た結果だ。上院は再び、同様の修正を追加して下院に差し戻す見通し。もし、法案の賛同者が増えて可決されれば、英国の参加後に中国が環太平洋経済連携協定(TPP)に入る際の大きな障壁になる可能性もある

 

英国は、今年中にTPPへ加盟が決まる見通しである。仮に将来、中国がTPPへ加盟申請しても、英議会がその交渉を打ち切らせる、つまり英国は中国加盟を阻止するとしている。TPPへの新規加入は、全加盟国の賛成が条件である。英国が一国でも反対すれば、中国加盟を阻止できる「縛り」を生かすのだ。さすがは、「大英帝国」である。その誇りにかけても、新興国・中国を甘やかさないという毅然とした姿勢である。

 

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