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中国習近平氏の強硬策は、先進国の反発と警戒心を一斉に高めている。中国に対して「寛容」な国はなくなった。唯一、ドイツのメルケル首相は中国へ親近感を持っているが、今秋に引退予定である。こうなると、もはや一国も中国を受入れる国はなくなる。

 

NATO(北大西洋条約機構)は2月17日、バイデン米政権の発足後、NATOとして初の閣僚会合となる国防相理事会を開いた。この席で、米欧同盟の修復へ2030年に向けた新しい改革構想の検討に入った。年内に開く首脳会議で採択をめざすという。主要課題のひとつが欧州やサイバー空間、北極圏でも存在感を増す中国との対峙である。

 

NATOは1949年、欧州防衛が目的で結成された。主として、旧ソ連の進出を警戒した軍事同盟である。だが、中国の軍事進出という新たな危機を迎えて、全世界的な警戒網設立へ動き出しそうだ。中国にとって、まさかNATOまで敵に回すとは想像外の事態だろう。

 


『日本経済新聞 電子版』(2月18日付)は、「NATO、中国の『脅威』対抗 2030年へ新構想」と題する記事を掲載した。

 

(1)「NATO理事会では、ストルテンベルグ事務総長が「NATO2030イニシアチブ」と題した30年までの改革構想を加盟国の国防相に提案した。米新政権の発足を機に新たなNATO像をまとめ、トランプ前政権時代に深まった同盟の亀裂修復につなげたい考えだ。「欧州と北米の関係の新しい章を開くまたとない機会だ」。ストルテンベルグ氏は17日、理事会初日の協議終了後の記者会見で力を込めた。欧州防衛を軽視するかのような言動を繰り返したトランプ前政権時代に冷え切った米欧関係の改善に期待を寄せた」。

 

NATOは2030年までに、「NATO2030イニシアチブ」をまとめることになった。新たな脅威となった中国へのNATO戦略構想をまとめる。NATOにとっても中国の軍事進出が、ついに脅威として受け取られることになった。

 


(2)「ストルテンベルグ氏は理事会で、20年12月に公表した専門家グループの報告書に基づき、加盟国の国防相にNATOが対処すべき課題と、対応の方向性を提示した。ロシアと並列する形で中国の脅威への対抗を前面に打ち出したのが特徴だ。17日の記者会見では「世界中の民主主義の同志国との協力強化」で「ロシアや中国のように価値を共有できない国々に傷つけられているルールに基づく秩序を守ることができる」と強調。具体的な提案内容は説明しなかったが、報告書が提言した日本やオーストラリアとの連携強化などが盛り込まれたもようだ

 

NATOは、日本や豪州との連携強化を視野に入れているという。北大西洋条約機構理事会はすでに2018年7月、ブリュッセルの在ベルギー日本大使館へ、「NATO日本政府代表部」を開設すること認め、開設済みであるという手際の良さだ。日本政府が、安全保障政策で万全の構えをしていることについて、それなりの評価をすべきだろう。

 


「NATO2030イニシアチブ」では、日本やオーストラリアとの連携強化が盛り込まれる方向のようだ。米国は、「クワッド」(日米豪印)プラスαで「アジア版NATO」を模索している。NATOが、このアジア版NATO結成に協力することになれば、アジア各国も参加するだろう。とりわけ、南シナ海で中国に島嶼を奪われたフィリピン、ベトナムなども有力候補に挙がってくる。

 

そういう事態になれば、中国は一挙に劣勢に追込まれる。中国は、莫大な軍事費を投入して周辺国を威嚇してきたが、もはやその効果がないと分かった時、国内はどういう状況になるだろうか。現在は、「中華再興」と国威発揚に燃えているが、急速な高齢化と社会福祉費増大の中で、軍事負担に耐えられないことを認識したとき、中国は「第二のソ連化」する可能性がある。

 

『ロイター』(2月20日付)は、「中国台頭は『決定的問題』、NATO事務総長が危機感」と題する記事を掲載した。

 

(3)「北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は19日に開かれたミュンヘン安全保障会議で、欧州や米国、カナダに対し国際的ルールに基づく秩序の維持を訴え、中国の台頭はNATOにとって問題だという認識を表明した。「中国とロシアは自らの利益のためにルールを書き換えようとしている」とした上で、「中国の台頭は大西洋を挟む社会にとって決定的な問題であり、われわれの安全保障、繁栄、生活に影響をもたらす可能性がある」と述べた。NATOは依然としてロシアを主な敵国と見なしているが、中国の軍事的影響力拡大に対応するため、同盟の主要方針である「戦略概念」に中国を含めることを検討している

 

下線部分は、極めて重要である。中国をNATOの「戦略概念」に含めることを検討しているとした。これは、ロシアと並んで新たに中国を自由と民主主義の「敵」と位置づけることだ。私はこれまで本欄で、アジアの安全保障政策としてNATOとの協力が不可欠と主張してきた。これが現実化すれば、世界の安全保障体制は大きく変わるだろう。

 

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