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文政権は、進歩派を名乗っている。世界標準の進歩派は、革新思想に燃えているはずだ。自由と人権を守る政治思想のパターンである。韓国進歩派は、名ばかりである。その実態は、民族主義である。保守派以上に右派という、極端な政治行動を見せている。

 

文政権になって驚くのは、政権が司法を完全に握っていることだ。政権の犯罪はことごとく隠蔽されるか、捜査を途中で打ち切らせるという発展途上国並みの蛮行を行っている。その根本的な理由は、大統領制にある。三権分立は形式に過ぎない。人事権を握る大統領が、司法・行政・立法を操る制度である。文政権は、それが最悪な形で現れている。韓国の将来を危ぶむ理由である。

 

『中央日報』(2月22日付)は、「われわれはなぜ帝王的大統領と決別すべきなのか」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙の主筆・副社長である李夏慶(イ・ハギョン)氏である。

 

(1)「申ヒョン秀(シン・ヒョンス)大統領府民情首席の辞意波紋の本質は、「私だけが正しい」と信じる帝王的大統領の独走だ。青瓦台(チョンワデ、大統領府)に対する権力型不正捜査の遮断は任期末大統領の最大の関心事である。「防波堤」である李盛潤(イ・ソンユン)ソウル中央地検長を留任させようとする文在寅(ムン・ジェイン)大統領の意中を、朴範界(パク・ポムゲ)法務長官が正確に読み取った。「なぜこちら側に立たないのか」という趣旨で申氏を責めた」

大統領府民情首席である申氏が、辞意を表明した。その理由が、大統領府で文大統領を検察の捜査から逃れさせようとする側近の浅ましさに呆れた結果だという。韓国の歴代大統領は、集中する権限を存分に使った後、検察の追及を逃れるべく「煙幕」を張る。文氏もそれを始めているというのだ。



(2)「文大統領は2012年大統領選敗北後に反省した。「ひょっとして私たちは民主化に対する献身と進歩的価値に対する誇りによって、考えが異なる人々との間に線を引いて派閥分けをしたり優越感を持ったりしていなかったか、振り返る必要がある。私たちがいわゆる『礼儀をわきまえない進歩』を自ら招いたのではないか、謙虚な反省が必要な時だ」(『1219終わりが始まりだ』)と言ったが、「礼儀をわきまえない進歩」は相変わらずだ」

 

文氏も、在野時代は謙虚であった。それが、大統領に就任し全て一存で決められる政治機構に酔ってしまい、善悪の判断を超えてしまった。いま任期が1年余となって、退任後の検察追及を恐れ始めている。哀れな「子羊」の心境であろう。

(3)「民主主義国家では犯罪を犯せば誰でも捜査の対象になる。原発経済性評価ねつ造、蔚山(ウルサン)市長選挙介入、ライム・オプティマス事態、チョ・グク一家の不正、金学義(キム・ハクウィ)不法出国禁止容疑で、政界の実力者や超親文議員が次々と捜査や裁判を受けている。この状況を到底容認できないというのが、大統領府民情首席「申ヒョン秀(辞任)波紋」の核心だ」。

 

大統領府民情首席は、かつて文在寅氏が盧武鉉政権時に務めたポストである。清濁合せて飲むポストであり、これに嫌気した文氏は1年で自ら辞任した経緯がある。その精神的疲れを癒やすべく、ヒマラヤへトレッキングしたほどだ。申氏もこれと同じ心境である。政権の汚れ役であろう。



(4)「国民を無視する非常識の出発点は、帝王的大統領制だ。韓国の「ツァー(皇帝)」は宮廷の中に座り、国民の意思を聞きもせず、誰の牽制(けんせい)も受けないで重大な決定を下す。(国民は)小間使を選んだのに、上典(主人)になって(国民の上に)君臨する。そしてその大部分が悲劇的運命を迎える。
文大統領も議員時代、帝王的大統領制を批判した。「大統領制よりも内閣責任制がはるかに良い制度だ。民主主義が発展したほとんどの国が内閣責任制を採用している。大統領制を取り入れて成功したのは米国くらいで、米国も連邦制という、連邦に権限が分散した土台の上に成功しているのでわれわれとは環境が違う」。

 

韓国の大統領制は、帝王的大統領である。任期5年間、極端に言えば好き勝手が出来るポストである。だから、検察捜査を受けるのは不可避である。検察の追及を受けたくなければ、帝王的大統領にならなければ良いだけの話だ。権力を使って悪事を働きながら、検察に追及されたくないとは、余りにも身勝手と言うべきであろう。



(5)「そのような文大統領も帝王的大統領の道を進んでいる。民意を敬うという意志がどれほどあふれていても、制度が不良なら多元的意志決定は不可能になる。大統領制の原産地は米国だ。国家元首と行政首班の権限を一人の人間が持つ。勝者独占なので連立政府を構成する必要がない。独裁者が出現しやすい制度だ。文大統領も明らかにしたように、成功した国は米国くらいだ。米国が「選挙君主制」「帝王的大統領制」ではない「民主的大統領制」国家になることができたのは、ワシントンの超人的節制があったからだ。長期政権で没落した李承晩(イ・スンマン)・朴正熙(パク・チョンヒ)とも違った」

 

米国の大統領制が上手く機能したのは、三権分立がそれぞれ「チェック・アンド・バランス」として機能した結果である。米国が、欧州の悪しき点を捨て、良き伝統を継承した結果である。韓国は、朝鮮李朝の歴史をそのまま受け継ぎ、大統領制に名前を変えただけの悲劇が現在、政治を混乱させている。文大統領は、韓国政治を混乱させている張本人である。