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中国は、昭和初期の日本のように「開戦準備」を思わせるような雲行きである。食糧安保を重視しているが、広い国土の割には耕作地面積(12.7%)が少ないのだ。しかも、肥料の多投によって地味が低下しており、単位面積当たり収量は米国の6割未満という。

 

ちなみに、米中の耕作地面積を比較すると、次のとおりである。2018年現在でFAO調査である。

米国(世界1位) 1億5773万7000ヘクタール

中国(世界4位) 1億1890万ヘクタール

中国は、耕作地面積で米国の75.4%である。単位当たり収量が、米国の6割とすれば、総収量の差は2倍に開く。一方、中国の人口は米国の4.3倍(2019年)である。

 

こういう基礎データを重ねてみると、中国が米国と戦端を交えることは不可能な計算だ。それに、米中が戦闘状態になれば、西側諸国は一斉に中国へ禁輸措置を取るだろう。米国は、中国をドル決済機構から排除するはずだ。こうなると、中国は戦争を継続できる状況にないことが分かる。中国は、軍拡をすることがいかに無益であるかを自ら立証している。

 

『日本経済新聞 電子版』(2月22日付)は、「中国農業政策『安保に重点』食糧生産年6500億トン堅持」と題する記事を掲載した。

 

中国の農業農村省は22日、2025年までの農業政策として食糧安全保障を重視する方針を示した。過去6年連続で達成した年6500億トン以上の生産量を数値目標として掲げた。対米摩擦を念頭に海外調達の不確実性が高まると懸念を示した。唐仁健農業農村相が記者会見で明らかにした。

 


(1)「20年の生産量は約6700億トンと最高を記録した。今後は就農人口の減少が生産規模を保つうえでの足かせとなる。
農業の現代化を進めて、大豆やトウモロコシで米国の6割に満たない単位面積当たりの収穫量を増やす。食糧安全への懸念を拭えないのは「外部の情勢を巡る不確実性や不安定さが明らかに増える」(唐氏)ためだ。大豆やトウモロコシを大量に海外から仕入れている。米国との覇権争いをはじめ外国との摩擦が続けば、食糧の安定輸入という問題は中長期的に中国にのしかかる」

 

下線部分が、中国の食糧安保を脅かす最大条件である。そこまでして、米国と覇権争いをする神経が理解できない。中国を侵略する国はないのだから、他国との共存共栄を図れば、食糧安保は自ずと実現できるのである。

 

(2)「中国のトウモロコシ輸入量が増加している。トウモロコシについて、自給自足を目標とするが、国内需給が引き締まっていることから昨年の価格は年初比で4割強も上昇した。米国産を中心に買い付けを進め、2020~21年度には一気に世界最大の輸入国に躍り出る可能性が出てきたと指摘されている。食糧供給について、これまでの「自給」から「輸入能力向上」にかじを切っている」

 

「輸入能力向上」には、他国と摩擦を起こさないことだ。現在のように、米中対立の長期化という最悪事態を迎えると、「輸入能力向上」に赤信号が灯るのである。こういう総合的な安全保障政策が、中国にあるとは思えない。相手国が気に入らないとなれば、簡単に実力行使の構えを見せるのは、「輸入能力向上」に逆行する動きである。

 


(3)「習近平国家主席も昨年12月、中国共産党の農業政策における重要会議で「食糧安全は国家の重要事項だ」と強調した。中国が長期目標で掲げるように中間所得層が拡大すれば、食糧需要も膨らむ。食糧安保を巡っては、中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会がすでに食品の浪費を禁じる法案の審議に入った。飲食店が顧客に過剰な注文をさせたり、「大食い」を売りにしたテレビ番組や動画を流したりすることを禁じる。21年には「食糧安全保障法案」も審議する方針だ」

 

飲食店で過剰な注文を控えるとか、「大食い」を止めるという対策で、食糧安保が維持できるはずがない。中国農業が、すでに自給自足を不可能にしている以上、他国との平和共存しか食糧安保を確立できる道はない。そういう自覚がないままに、口先で食糧安保を唱えても無駄である。

 

(4)「唐氏は、中国人の食卓に欠かせない豚肉について、「供給量は21年後半に正常な水準に戻る」と語った。豚肉はアフリカ豚熱(ASF)の流行や20年の長江流域の洪水被害で供給量が落ち込んだ。消費者物価指数(CPI)でみた豚肉価格は19年末から20年初めにかけて、前年同期の2倍超と高騰していた。必需品の値上がりをうけ、家計が節約意識を高める一因となった」

 

豚肉が、中国の最大好物である。養豚には、トウモロコシ・大豆の輸入が不可欠である。しかも、米国が主産地である。その米国と覇権争いをやろうと言うのだ。正常な感覚とは言いがたい。何を狙っているのか。精神分裂的な様相を呈している。

 

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