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中国経済は、「社会主義市場経済」の名前通りに、政治が経済に介入している。その政治とは、生臭い政争である。アリババの傘下企業でフィンテックの最大手、アントが上場直前に延期になり、その後のフィンテックへ制約が加えられている裏に意外な事実が判明した。習近平氏の政敵である上海閥(江沢民・元国家主席が率いる)が、株主として絡んでいると言うのだ。

 

習氏は現在、中国で絶対的な権力を握っているが、いつ滑り落ちるか分からない不安定要因も抱えている。こともあろうに、米国と覇権争いすると宣言して、米国から日に日に包囲網を狭められている。それだけに、自らの政敵が、アントの株式上場で莫大な利益を上げられたら、いつ寝首をかかれるか分からない。そこで安全策として、フィンテック発展の芽を摘み、アントの上場を遅らせようという露骨な介入を始めた。

 

『フィナンシャル・タイムズ』(2月21日付)は、「中国がネット融資に新規制、アントさらに打撃」と題する記事を掲載した。

 

中国の銀行規制当局はネット融資を手がけるプラットフォーム企業に対する規制を強化した。専門家は、同国電子商取引最大手アリババ集団傘下の金融会社アント・グループの企業評価額がさらに下がる可能性を指摘している。

 

(1)「中国銀行保険監督管理委員会(銀保監会)が週末に発表した新たな規制では、プラットフォーム企業は銀行との共同融資額の少なくとも30%を自己資金でまかなう必要がある。さらに銀保監会は商業銀行がテック企業と共同で行うオンライン融資への支出額に上限を設ける。新規制は2022年から適用される。新規制の草案が昨年末に発表された際、中国テック企業の株価は急落した。アントが香港と上海で予定していた370億ドル(約3兆9000億円)規模の新規株式公開(IPO)が直前に延期された理由の一つにもなった」

 

アントは現在、数千億ドルに上る消費者融資の2%しか自己資金でまかなっておらず、残りの大部分はパートナー銀行が資金を提供している。それが、上記のような規制によって、銀行との共同融資額の少なくとも30%を自己資金でまかなう必要が出てきた。これは、フィンテックの収益を相当に圧迫するはずである。

 

ただ、金融の健全性という立場で言えば当然としても、アントの株主に習氏の政敵が潜んでおり、「ぬれ手で粟」を防ぐという不純な動機が絡まっているならば、論外の措置と言えよう。

 


(2)「アントは、アルゴリズムを用いて個人への融資可否を判断しているが、新規制で同社の企業評価額が一層の圧力にさらされると専門家は予想している。シンガポールのヘッジファンド、APSアセット・マネジメントの創業者ウォン・コック・ホイ氏は、今回の規制強化で中国のフィンテック企業による融資の規模が「大幅に縮小」し、各社の事業は商業銀行に似たものにならざるを得ないと話す。「アントは事業モデルの大幅な見直しを迫られる」。北京大学で金融を教えるマイケル・ペティス教授は、「消費者が融資を受けるコストが上がる。またアントの急成長事業が打撃を受け、企業評価額の急落は避けられないだろう」と指摘した」

 

今回のフィンテック事業への「縛り」(融資額に占める自己資金率30%)が、アントの成長性を著しく引下げることは必至である。それが、株価上昇の頭を抑える可能性を大きくするのだ。