a1180_012431_m
   

欧州各国は、安全保障面の懸念と入札後の工事結果が芳しくないこともあり、入札から中国企業を締め出すケースが増えている。中国政府は、中東欧各国へ「一帯一路」と絡んで積極的な売り込み工作を行なってきた。それが、欧州の安全保障と危うくするリスクを抱えることに気付いて、ブレーキを掛けている。中国が、中東欧17ヶ国を束ねた「17+1」の首脳会議では、6ヶ国が示し合せて欠席するというサボタージュまで起こっている。

 

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2月24日付)は、「『中国離れ』欧州でじわり浸透、入札排除の動きも」と題する記事を掲載した。

 

欧州一部で、中国による経済への関与を阻止する動きが目立ってきた。地政学的な影響力を強める中国に対する警戒感が高まる中、米国が唱える対中戦略と歩調を合わせつつある。バルト海からアドリア海に抜ける地域の欧州諸国では、政府が中国国有企業が落札するとみられていた公共事業の入札を中止するか、中国勢による入札参加や投資を禁じる動きが相次いでいる。

 


(1)「決定に関与した当局者らは、国家安全保障上の懸念に加え、過去に入札に競り勝った中国業者が期待に添わなかったことへの失望感が中国排除の決定につながったと説明する。中止となった案件には、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に関連するものも複数含まれる。一帯一路を巡っては、一部の参加国から落胆の声が上がっていた。こうした「中国離れ」は主に欧州の小規模な国々で起きており、中国と緊密な経済関係を維持したい欧州連合(EU)主要国との間で域内の緊張を高める要因にもなっている」

 

EU内では、主要国と小規模国との間に対中国企業の姿勢に明確な違いが起こっている。小規模国は、中国ビジネスに期待しただけに、それに添わない結果に落胆している。これが、中国企業締出しという強硬策を招いている。

 

(2)「ルーマニアとリトアニアは一部の政府調達について、中国企業を幅広い分野で排除する措置を講じた。より的を絞って中国を締め出す国もある。スロベニア、クロアチア、チェコ共和国、ルーマニアは、中国企業が関与する原発、高速道路、鉄道網、保安検査機器、コンテナ船ターミナルの政府入札を中止した。ルーマニア・アジア太平洋研究所のアンドレーア・ブリンザ副所長は、冷戦時代にロシアの支配下に置かれた欧州の国々は、中国に対しても戦略上の懸念が根強い。そのほとんどが、安全保障を米国に頼っていることから、米中の貿易摩擦問題で自国がどちらの側に付くか、明確な姿勢を示したいと考えているという」

 

中東欧各国は、ソ連占領によって共産主義へのアレルギーを持っている。それが今、中国企業にも向けられている。安全保障をNATO(北大西洋条約機構)に依存しているので、米国へ明確な姿勢を見せたいという心理も働いている。

 

韓国は、米国の安全保障の傘に入りながら、中国へ秋波を送っている。中東欧各国の義理堅さを学ぶべきだろう。

 

(3)「EUは昨年、異例の安価で落札を狙う域外企業からの入札参加を排除する指針を公表。外国政府の補助金が欧州に与える影響について調査を開始しており、これには政府調達や企業買収などの分野が含まれている。EUでは、外資による加盟国への投資ついて安全保障上の影響を審査する新たな規則が昨年10月に発効しており、多くの加盟国が国内でも同様の規定を整備している。EUで最大の経済規模を誇る仏独は中国との経済関係強化を唱えているものの、域内では東・南欧諸国を中心に中国企業への警戒が高まっている」

 

中・東欧諸国は、巨大なインフラ需要が見込まれるので、中国企業にとって格好の標的となっている。しかも、欧州の競合勢をはるかに下回る価格を入札で提示することが多い。安値で受注を勝ち取った中国企業の多くは実績を出せずに終わっていると、地元の政治家は指摘する。中国企業は、こういう無責任なことをするのだから、締め出されるのは当然である。

 

(4)「アンゲラ・メルケル独首相とエマニュエル・マクロン仏大統領は、EUが2013年から中国と交渉してきた投資協定について、昨年12月の大筋合意を全面的に推進していた。大筋合意に対してポーランドが反対を表明。ジェイク・サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)も、正式に就任する前から、中国問題でEUと米国の連携強化を求めてきた。投資協定の発効にはなお正式承認が必要で、実現しても来年以降になるとみられ、欧州議会からも反発が強まっている」

 

仏独の両首脳は、中国との投資協定の大筋合意を歓迎しているが、ポーランドが反対を表明している。中東欧各国にも同調の動きがある。投資協定を審議し批准する欧州議会が、反対意向が強いとされており、波乱含みである。

 


(5)
「トランプ前米政権が、「クリーンネットワーク」と呼ばれる取り組みを通じて中国排除を働きかけたことを受け、複数のEU諸国は昨年、安全保障に関する基準で米国に追随。次世代通信規格「5G(第5世代)」インフラ整備で華為技術(ファーウェイ)を含む中国企業の参加を事実上禁止あるいは制限する国内法を制定した。ファーウェイは9月、EU当局に対し、米国を踏襲したポーランドやルーマニアの5G関連法案はEUの競争法に違反している可能性があるとして不服を申し立てた」

 

トランプ前米国大統領に反発していたEUが昨年、複数国で安全保障に関する基準で米国に追随した。ポーランドやルーマニアがそれで、ファーウェイから不服を申し立てられている。だが、安全保障が理由となれば却下されることになろう。

 

次の記事もご参考に。

2021-01-18

メルマガ224号 西側の技術封鎖! 中国は間違いなく「巣ごもり破綻」

2021-01-07

メルマガ221号 「傲慢&無知」中国、欧米一体で封じ込め戦略、英独仏がアジアへ海軍派

2021-02-01

メルマガ228号 「暴走中国」 安保と経済で落とし穴に嵌まり 自ら危険信号発す