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中国は、昨年10月下旬に開かれた中国共産党第19期中央委員会第5回総会(5中総会)で策定した第14次5か年計画(2021~25年)の間に、「法定の定年退職の年齢を段階的に実施する」との方針を固め、大きな波紋を広げている。

 

現在の定年年齢は、男子60歳、女子55歳である。これでは、2035年に年金財源が枯渇するということも大きな理由であり、定年年齢を引き揚げざるを得ない事情に直面している。これへの反対論が根強くて驚かされる。早く年金を貰って「楽隠居」したいという層が多いのだ。若者も反対している。就職難がさらに拍車を掛けると言うもの。

 

パールバックの小説『大地』に登場する農民たちは、農閑期に全く作業せず、一日2食という「ぐうたら生活」を送っている。勤労意欲が、極端に乏しい国民性が表われているのだ。この伝で言えば、勤労生活を早く切り上げて年金生活を送りたいということになろう。

 

中国人は、日本人の勤労観と全く異なることに驚かされる。日本では元気な間、ずっと働きたいというのが常識であるから、中国の定年年齢引上げ反対に、国民性の違いを実感する。

 


『人民網』(2月27日付)は、改めて2021~25年中の定年年齢引上げを報じた。その理由について次のように説明している。

 

第14次五カ年計画の提案の中で、法定の退職年齢を段階的に延長することが打ち出された。中国の経済社会の発展に伴って、定年が全体として早すぎるという問題が非常に目立つようになってきた。

 

(1)「今後、寿命が延びると予想される。2019年の中国の予測寿命は77.3歳で、都市部ではさらに長く80歳を超える。また教育を受ける期間が長くなっている。現在、中国の新たに増加した労働力のうち、高等教育を受けた人の割合はすでに半分を超えた。労働者の平均就学年数は13.7年に達し、働き始める年齢がどんどん遅くなっている。退職年齢が変わらないため、平均勤続年数が短くなり、人的資源の浪費や人的資本の利用率の低下がもたらされた」

 

定年年齢の延長は、政府の主張が正しい。今後の生産年齢人口の急減を考えると、早急に対策を立てるべきである。

 


国連統計を用いて中国の生産年齢人口(15~59歳)推移を示したい。国際標準の生産年齢人口は15~64歳だが、中国は健康上の理由で15~59歳である。定年60歳(男子60歳、女子55歳)を反映したものだ。

 

生産年齢人口推移(国連調べ)

暦年     生産年齢人口       変化率

2010年 9億4639万1000人   100.00

2020年 9億3461万6000人    98.73

2025年 9億1165万8000人    96.30

2030年 8億6993万6000人    91.86

2035年 8億3119万8000人    87.84

2040年 8億0866万8000人    86.50

2045年 7億7790万2000人    82.13

2050年 7億1852万7000人    75.89

2055年 6億8818万7000人    72.72

2060年 6億6791万1000人    70.50

2065年 6億5071万1000人    68.71

 

この推移を見ると、2025年以降に急減することが分かっている。早く「楽隠居」したいとか、就職難だからという理由で定年年齢延長が許される状況ではなくなっている。尻に火がついている状態だ。

 

『東方新報』(2020年12月1日付)は、「中国 定年年齢引き上げで波紋」と題する記事を掲載した。

 

中国の60歳以上の人口は2018年現在、約2億5000万人で、全人口の約18%だが、この比率は今後、少しずつ高まり、2050年には30%を超えることは確実といわれている。

 

(2)「『このままだと年金と社会福祉が維持できなくなる』と懸念する声が高まっている。こうした声を受け、共産党指導部は「定年延長の方針」を固めた。延長方法の具体案は発表されていないが、外国と同様、数年ごとに1歳ずつ定年の年齢を引き上げる経過措置を取る可能性が高いといわれている

 

数年ごとに、1歳ずつ定年の年齢を引き上げるという。こういう経過措置を取れば、影響を受ける人の数を減らせるが、中国経済への生産年齢人口減少の影響は大きい。中国のGDP成長率は急速鈍化である。

 

(3)「定年延長の方針決定に対し、中国のインターネットには賛否両論が寄せられている。「年をとっても社会貢献できることはいいことだ」「老後の不安を解消できる」といった賛成の声のほか、「保険料の負担が増える」「孫の面倒を見る人がいなくなる」といった反発の声も寄せられている。中国の規定では、定年後すぐに年金の支給が始まるので、定年延長すれば納付期間が長く、もらえる期間が短くなるため、上の世代と比べて不公平感を覚える人が多いようだ」

 

「保険料の負担が増える」という反対理由は、極めて近視眼的である。定年延長で給与を貰うのだから、プラスの方が多いいはずだ。こういう理屈に合わない反対論が多いのだろう

 

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