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民族主義者の術中に嵌まる

米が提示する5つの警報

尖閣狙うが日本も十分対応

政敵倒しにアントを利用

 

中国の習近平氏は、国家主席2期10年という任期を改正して、期限を取り払ってしまった。従来であれば、習氏の任期は2022年までだ。鄧小平が、個人崇拝の再来を防ぐべく行った集団指導体制と国家主席任期制は、習近平氏の名誉欲によって葬り去られた。

 

習氏といえども、腕力で国家主席の無期限制を利用する訳にはいかない。国の内外で、中国共産党の「威厳」を高めて、国民と党員を納得させなければならないのだ。この結果、自然に起こる問題は、習氏の「凶暴化」である。内外で腕力を振って、相手をねじ伏せなければ、習氏が勝ち名乗りを上げられない局面が増えているからである。

 

習氏は、無理に無理を重ねざるを得ない矛楯に落ち込んでいる。毛沢東の『矛盾論』が指摘する、「正・反・合」という矛楯の深化によって、習近平氏が苦境に立たされ、自己否定の可能性が高まっているのだ。

 


民族主義者の術中に嵌まる

米国の著名シンクタンク「大西洋評議会」は、米国政府へ閣僚を送ることでも有名である。このシンクタンクから発表される報告書は、政策として結実する可能性が高いという評価を得ている。大西洋評議会は今年1月、The Longer Telegram」という論文を発表した。その内容は、次のようなものである。

 

「習近平の意思決定過程は、従来の中国共産党の意思決定過程と大きく異なっていると分析している。習近平は権威主義的傾向を強めており、意思決定は共産党ではなく、習近平とその周辺により決定されることから、共産党ではなく習近平個人に注目すべきであると主張している」

 

この点は、私もこれまで指摘してきたように、習氏を取り巻く民族主義者による独断専行に現れている。民族主義者とは、中央政治局常務委員(序列5位)の王滬寧(ワン・フーニン)氏である。戦時中の日本で言えば、大川周明という存在であろう。王氏は、明治維新以降の日本を研究しており、軍事力こそ国威発揚の主要手段と信じている主である。日本が、維新後わずかの期間に「世界5大国」へのし上がった過程をつぶさに研究した人物である。「軍事力こそ全て」という危険思想である。

 

習近平氏は、この王氏に強く影響されている。国家主席の任期制を廃止させたのも、王氏の入れ知恵であること間違いない。習―王の危険コンビが、中国の運命を狂わせようとしているのである。

 

このような二人の「軍事コンビ」に対して、米国はレッドラインを明示すべきというのが、大西洋評議会報告書の主旨である。レッドラインであるから、中国が以下の行為を行えば、米国が軍事的報復をすると、あらかじめ警告するものである。

 

レッドラインは、次の5項目である。

 

1)中国及び北朝鮮による大量破壊兵器の使用

2)台湾への軍事攻撃、経済封鎖、サイバー攻撃

3)東シナ海や尖閣諸島周辺で日本の国益保護活動を行っている日本自衛隊への攻撃

4)南シナ海における新たな埋め立て、軍事化及び航行及び飛行の自由の阻害

5)米国同盟国への軍事攻撃



米が提示する5つの警報

以下に、私のコメントを付したい。

 

1)中国及び北朝鮮による大量破壊兵器の使用とは、中朝を一体として扱っており、北朝鮮が核兵器を使用したならば、中国も連帯責任でその責めを負うべきとしている。つまり、北朝鮮が核使用しないように監視せよという通告である。

 

2)台湾への軍事攻撃、経済封鎖をしてはならない。米国は、国内法で「台湾関係法」を成立させている。これによると事実上、米国と台湾は軍事同盟で結ばれている。「台湾旅行法」によって、米台の政府高官の往来は自由になっている。こうして、「一つの中国論」は、米国によって空洞化させてしまった。

 

3)東シナ海や尖閣諸島周辺で活動する自衛隊へ攻撃してはならない。尖閣諸島海域へは、長期にわたり中国艦船による侵犯が行なわれている。海上自衛隊は常時、哨戒活動を続けているが、これに中国軍が攻撃を仕掛けてはならない。

 

4)南シナ海で、新たな埋め立てや基地化を行ってはならない。中国がフィリピンに近い南シナ海の要衝、スカボロー礁で埋め立ての兆候をみせた16年のことである。中国軍高官が出席した国際会議で、カーター米国防長官は軍事施設が建てられれば「米国は行動をとる」と警告した。中国はその後、現在に至るまでスカボロー礁で埋め立てをしていない。米国の警告は効いているのだ。

 

5)米国同盟国への軍事攻撃もレッドラインである。これは、「アジア版NATO」と同じ意味を持つ。インド太平洋戦略では、クアッド4ヶ国(日米豪印)が結束を固めている。これに、英国が新たな参加国(α)として加わる見通しだ。英国が、最新鋭空母「クイーン・エリザベス」と打撃陣をアジアへ派遣する方針で、日本が母港になる。(つづく)

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