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グローバル経済は、すでに名ばかりとなっている。中国の軍事進出は、世界的な懸念を生んでいるためだ。各国とも「戸締まり」に余念がなく、「赤い資本」に警戒信号を上げている。

 

豪州は、中国からいわれなき制裁を受けている。昨年4月、中国へ新型コロナ発生を機に、感染調査の徹底を申入れたことが、中国の逆鱗に触れて嫌がらせが始まった。豪州は、今なお中国から制裁を受けっぱなしである。

 

中国は豪州産大麦の輸入に80%の関税をかけ、豪州産牛肉の輸入に新たな制限をかけた。それ以来、紛争に巻き込まれた品目のリストは急速に増加している。さらに豪州産ワインに反ダンピング(不当廉売)措置を発動し、107%以上の保証金を徴収した。石炭まで輸入禁止処分される始末だ。こういう状況では、豪州が中国資本に「ノー」を突きつけたのも致し方ないであろう。

 


『フィナンシャル・タイムズ』(3月1日付)は、「20年の豪への中国投資、ピークの16年から94%減」と題する記事を掲載した。

 

中国企業によるオーストラリアへの投資額が2020年に大きく減少した。豪政府の審査厳格化や豪中関係の悪化、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)による海外投資の世界的な落ち込みが影響した。豪州が、米英など5カ国と機密情報を共有する枠組み「ファイブ・アイズ」の他の参加国も、安全保障の観点から外国からの投資への監視を強めている。

 

(1)「最新のデータによると、20年の中国企業の対豪投資額は10億豪ドル(約830億円)と、前年の26億豪ドルから61%減少した。16年のピーク時は165億豪ドルだった。同年は両国が自由貿易協定を結ぶなど関係が良好だった。対照的に20年に記録された投資案件はわずか20件だった。豪州国立大学が管理する中国投資データベースによると、20年の投資は不動産、鉱業、製造業の3業種にとどまった。前年は全業種にわたっていた」

 

豪州にとって中国は、もはや友好国でなく敵性国家へと落込んだ。20年の中国企業の対豪投資額は約830億円で、前年から61%も減少した。ピーク時の16年からは94%減である。中国と豪州の関係が如何に悪化しているかを示している。

 

(2)「同大学のシロー・アームストロング東アジア経済研究所長は、新型コロナウイルスの影響および豪政府による海外資本、特に中国資本への監視強化が投資急減の主な理由だと指摘した。同氏は国連のデータを引用し、パンデミックが始まって以降、世界の海外直接投資は42%、対豪投資は46%それぞれ減少したと話した。「コモディティ(商品)ブームの最盛期には豪州が中国マネーの最大の投資先だったことを考えると驚くべき話だ。米国より多くの投資を受け入れてきたが、それが消えてしまった」と同氏はフィナンシャル・タイムズ(FT)に話した」

 

パンデミックが始まって以降、世界の海外直接投資は42%、対豪投資は46%それぞれ減少している。だが、中国の対豪州投資の減少率は昨年、61%にも達している。対豪投資全体の減少率を上回っている。

 

(3)「豪中関係は過去数十年で最低の水準にある。豪政府が新型コロナウイルスの起源について国際的な調査を要求したほか、外国からの干渉を禁じる法律を制定するなど外国投資への監督を強化したためだ。また、豪政府は20年3月に投資制度を一時的に変更し、全ての外国からの投資案件が外国投資審査委員会(FIRB)の審査を受けることになった。案件に関わる銀行家によると手続きが大幅に遅れており、特に中国企業が影響を受けているという

 

下線のように豪州は、中国への警戒を強めている。これは、中国のスパイが大量に入り込み豪州政治を左右するほどの影響力を持ち始めたことへの警戒だ。中国が、ことさら豪州へ辛く当っているのは、中国スパイが摘発されている復讐である。

 

(4)「さらに政府は、中国の蒙牛乳業によるキリンホールディングスの子会社ライオン・デイリーへの6億豪ドルでの買収と、中国国有ゼネコンの中国建築による南アフリカ企業が保有する建設企業プロビルドへの3億豪ドルの買収を、非公式に反対の意向を示して断念させた。「豪政府は、中国投資を歓迎しないという非常に明確なメッセージを出した」と中国企業の顧問を務める元駐中国大使のジェフ・レイビー氏は話した。「最もひどい例はライオン・デイリーだ。戦略上も安全保障上もまったく正当化できない。FIRBは承認したが財務相が阻止した」

 

中国の蒙牛乳業は、ライオン・デイリーへの6億豪ドルでの買収を決めたが、豪政府から安全保障を理由に買収を反対された。牛乳を安全保障と結びつけたのは、「食糧安全保障」という網であろう。豪州の中国への反発心の強さを証明している。

 

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