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中国で年に1度の重要会議、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が3月5日に開幕した。注目点は2つある。21年のGDP成長率目標と第14次5カ年計画(2021~25年)の成長率目標である。事前の予測では、21年のGDP成長率目標は「8%以上」が大半を占めていた。蓋を開けたら「6%以上」と2%ポイントも低かった。第14次5カ年計画では、成長率目標を掲げなかったのだ。

 

本欄では、中国経済の基盤が崩れていると繰り返し指摘してきたので、こういう事態でも格別の驚きはない。中国指導部が、経済の実勢悪を認めて「スロースタート」になったものと受け止めるべきだろう。

 

問題の実勢悪の中身は何かだ。不動産企業の借金過多症が、限界を超えていることである。住宅ローンと不動産向け融資は、今年1月1日から制限を加えている。だが、市民の住宅バブル信仰は一段と拍車がかかっている。不動産バブル最後の炎が燃えている感じである。この危険ラインスレスレの中で、不動産大手の中国恒大の過剰負債問題が注目されている。

 


『フィナンシャル・タイムズ』(3月4日付)は、「中国恒大のEV、資金調達も追いつかぬ不動産負債」と題する記事を掲載した。

 

(1)「巨額の負債を抱える中国不動産大手、中国恒大集団は電気自動車(EV)業界への野心を抱いて子会社を設立したが、いまだに1台のEVも販売していない。香港株式市場に上場しているEV子会社、中国恒大新能源汽車集団の株価は今年に入って81%上昇し、時価総額は630億ドル(約6兆7000億円)を超えた。新製品の発売に四苦八苦しているにもかかわらず、米フォード・モーターなど実績あるライバルの時価総額を上回った。

 

倒産寸前とも言える中国恒大集団は、EVへの進出をネタに資金調達するという詐欺まがいのことを行なって倒産を免れている。「EV」と言えば、時代の寵児である。株価が、車を発売する前から急騰するという狂った時代だ。いずれ馬脚を表わして、傷をさらに大きくするであろう。

 

(2)「この株価高騰は、世界の株式市場に広がる投資家のEV熱を反映したわけでない。親会社の中国恒大が中国当局から1200億ドル(約13兆円)を超える負債を削減するよう求められる中で、影響力のある複数の投資家が中国恒大とその子会社の支援を継続するとの情報が市場に流れたからだ」

 

記事では、EV熱に浮かされて株価が上昇したのでないと断っている。複数の投資家が、中国恒大とその子会社の支援を継続するという情報の結果という。だが、EVという「エサ」があったからこそ、株価が動いたはず。起爆剤はEVであることは間違いない。

 


(3)「クイディティ・アドバイザーズのアナリスト、デービッド・ブレナーハセット氏は同社の株価急騰について「これがバブルでなかったら何をバブルと呼べばよいのか」と首をかしげた。恒大汽車は1月末、中国恒大および創業者の許家印氏と関わりのある複数の人物を引受先として新株を発行し、34億ドル(約3600億円)を調達すると発表した。これを受けて同社株はその日の取引だけで50%以上急騰した」

 

EVを生産する恒大汽車は、1月末に1日だけで50%以上も急騰している。EVが買い材料になったことは疑いない。

 

(4)「専門家によると、中国恒大は中国不動産市場の成長が鈍化する中で、業務を多角化するために恒大汽車を立ち上げたという。中国のビジネススクール、長江商学院で会計財務論教授を務める劉勁氏は次のように語った。「中国不動産価格は高騰しすぎたため経済に甚大なリスクをもたらしている。だからこそ不動産大手は新たな成長の原動力を求めている」と」

 

下線部の指摘は重要である。中国不動産価格は、高騰しすぎたため経済に甚大なリスクをもたらしているのである。このリスクを逃れるために、中国恒大集団はEVに手を出す形で投資家の目を眩ませているのだろう。日本の高度成長期にも同様な詐欺があった。TV受像器をつくったことのない上場企業の重電機メーカーが、カラーテレビへ進出すると発表して株価を吊り上げた事件があったのだ。これと同じ類いの話だろう。

 


(5)「香港の調査会社GMTリサーチのアナリスト、ナイジェル・スティーブンソン氏によれば、恒大汽車の主要業務は不動産開発だという。恒大汽車のキャッシュフロー計算書をみると同社は高額の不動産投資を継続しており、EV工場にはわずかな資金しか回っていないからだ。親会社に設定した与信枠からもEV子会社へ資金が流れており、中国恒大が財務健全化に向け資産売却を進めている時に恒大汽車は調達した資金を何に充てるつもりなのかとアナリストらは疑念を深めている」

 

EV企業の恒大汽車が、高額の不動産投資を継続しているという。詐欺は明白である。中国恒大集団が倒産すれば、中国の不動産市場に激震が走ることは疑いない。

 

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