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米国民は、かつてないほど中国への印象を悪化させた。米調査機関ピュー・リサーチ・センターが3月4日公表した調査では、米国民の9割が中国についてライバルか敵だと回答した。また、米政府は中国の影響力を抑制すべきだとの答えが半分近くを占めたのである。

 

今週公表のギャラップ調査では、中国に対して否定的な見解を持つ米国民の割合が79%に上り、調査を開始した1979年以来で最悪の水準となった。中国よりも悪かったのはイランと北朝鮮だけだった。以上は、『ウォール・ストリート・ジャーナル』(3月5日付)が報じた。

 

米国で中国への意識が悪化していることは、今後の対中国政策がより厳しくなることを示唆している。習近平氏が、さらなる人権弾圧や近隣国への侵略行為を行なえば、米国で一挙に「反中運動」に火が燃え移る危険性を示しているのだ。

 


このような中国の「好戦性」をどのようにして食い止めるか。インド太平洋戦略を担う「クアッド」(日米豪印)は、互いに非軍事面での協力によって、中国の海洋進出を防げるというシンクタンク提案が出てきた。

 

『大紀元』(3月5日付)は、米専門家、「『中共に包括的対抗案を』クアッド各国の強み統合を提言」と題する記事を掲載した。

 

米シンクタンク、民主主義防衛財団(FDD)の専門家はこのほど、インド太平洋地域における中国当局の膨張主義に対抗するため、日米豪印の4カ国は各自の強みと役割を統合する必要があるとの見解を示した。

 


(1)「同財団のシニアフェロー、クレオ・パスカル氏は、今月初めに開催された米保守政治行動会議(CPAC)で、大紀元英語版の取材を受けた。同氏は、中国当局はインド太平洋地域で挑発を繰り返していると批判した。パスカル氏は、昨年6月に中印両軍が国境地帯で衝突した後、インド政府は多くの方法で中国当局に対抗したと話した。「インド政府は、微信(ウィーチャット)やティックトック(TikTok)など、中国企業が開発した多くのアプリを禁止した。インドは、中国側が膨大な量のデータを吸い上げ、人工知能(AI)技術を改良して、軍事利用するとわかっているからだ」

 

米中対立の長期化は、グローバル経済の終焉を意味する。安全保障において、グローバル経済が支障をもたらすという、これまでになかった事態が持ち上がってきた。今や、経済制裁は安全保障にとって不可欠な手段という「危険な時代」に移行している。これも、中国の好戦性がもたらした結果である。

 

(2)「パスカル氏によると、インドがTikTokの利用を禁止した際、TikTokの運営会社であるバイトダンスの時価総額は60億ドル減少し、「中国当局に経済的な打撃を与えた」。トランプ前政権は、中国大手企業の多くは共産党政権の支配下にあると警告していた」

 

インドが、中国への経済制裁として中国のTikTokの利用を禁止した。これが、中国へ経済的不利益を与え、軍事費の拡大阻止へなにがしかの貢献をしていると判断されている。

 

(3)「オーストラリア政府は、世界各国の中で、中共ウイルス(新型コロナ)への中国当局の対応について独立調査の必要性を求めた最初の国である。「このため、オーストラリアは中国当局から激しい報復措置を受けた。しかし、オーストラリアは怯まなかった。さらにインド太平洋地域の他の国にも支援を続けている」とパスカル氏は述べた」

 

豪州政府は、中国の報復に怯まない強い姿勢を見せ、日豪の軍事関係強化に努めている。モリス首相は、菅首相が就任直後に訪日して、日豪関係の強化を打ち合わせた。これは、中国への牽制であり、日米豪印が結束する姿勢の一端を見せた。

 

(4)「パスカル氏は、日本の役割について「まず、エネルギー分野において、同地域の他の国に経済的協力を提供することだ。そして、中国の軍事的存在感を低下させるために、日本は太平洋の島国との友好関係をより強化する必要がある」と提案した。山上信吾・駐オーストラリア大使は2月末、豪紙『オーストラリアン』への寄稿で、北朝鮮の核問題で日豪両国が東シナ海で連携していることを強調した。また経済分野では、宇宙開発のほかに低排出エネルギー技術においても、両国の協力の機会は「無限大である」との見解を示した」

 

シンガポールのシンクタンク「東南アジア研究所」のASEAN研究センター(ASC)が2月に発表した報告書によると、東南アジア諸国連合(ASEAN)のなかで、最も信頼できるパートナーは日本だと回答した国が多かった。米国に対する期待も上昇している。逆に、中国への期待は低下したのだ。中国からワクチン供与を受けながら、「軽蔑されている中国」の姿が垣間見える。

 


ASEANにおける信頼度(2021年)

日本 67.1%

EU 51.0%

米国 48.3%

中国 15.6%

 

日本の信頼度が抜群である。これは、ODA(政府開発援助)で相手国の立場に立つ低利・長期の融資が日本への信頼度を高める上で貢献している。また、いち早く日本企業が進出して、雇用増をもたらしたこともプラス要因だ。こういうバックグランドを生かし、日本の得意技である「水素エネルギー技術」(水素発電)を供与することも一案である。

 


(5)「パスカル氏は、中国当局は総合的な国力で世界覇権を目指していると警告した。「そのため、中国当局に対抗するには、銃や軍艦、中国系アプリの禁止だけでは不十分だ。中国当局の資金が株式市場に流入するのをブロックし、各国の市場に進出するのも阻止すべきだ。対抗は包括的なものでなければならない」としてきする」。

 

中国経済は、今やあちこちで欠陥を見せている。過去の無理した経済運営(不動産バブル利用)が限界に達したからだ。今後、その欠陥は一層大きくなる。中国のこうした脆弱性を突く戦略も必要である。「一帯一路」は、撤退するはずである。生産年齢人口の急減に伴う潜在成長率急低下は、「第二のソ連」に転落する危険性を内包している。

 

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