テイカカズラ
   

中国経済は、第14次5カ年経済計画(21~25年)の経済成長率目標を掲示することを中止した。米中対立の長期化という従来にない事態を迎えて、余にも不確定要素が多く、予測できないのであろう。こういう事態に陥っているにもかかわらず、2028年の中国GDPが米国を上回るという予測が出ている。いったい、何を根拠にして予測値を弾き出したのか、大恥をかかされた格好である。

 

『日本経済新聞 電子版』(3月6日付)は、「中国、国有企業重視一段と 民営50社を傘下に 米制裁対抗」と題する記事を掲載した。

 

中国が国有企業を重視する姿勢を強めている。5日開幕した全国人民代表大会(全人代、国会に相当)での政府活動報告で「国有企業を発展させて民営企業を導く」との方針を示した。2020年に国有企業や政府系ファンドが民営上場企業50社近くの経営権を獲得し、存在感を強める。ただ中国経済をけん引してきた民営企業の活力が損なわれれば経済成長を下押しする恐れもある。

 


(1)「従来の政府活動報告では国有企業の改革を進める方針を示してきたが、今年の同報告には「国有企業を強く優秀に大きくする」とも盛り込んだ。米国との対立継続をにらみ「国家経済安全保障を強化する」とも記載し、国有企業を活用する狙いが透ける。実際、国有企業が民営企業を実質的に傘下に収める動きが加速している。中国メディアによると、20年に国有企業や政府系ファンドから出資を受けて経営権を譲渡した中国の上場企業は48社にのぼる。なかでもIT業界など習近平指導部が重視するハイテク分野が目立つ」

 

国有企業改革論が後退して、「国有企業を強く優秀に大きくする」となった。戦時中の日本では、強制的に企業集約が行なわれたが、そういう暗い時代を想起させるほどだ。中国は、準戦時体制に変わった。

 

民営のIT企業が、国有企業傘下に入っているという。米国による半導体とソフトの禁輸措置が響いているのであろう。この先、中国のIT産業には停滞期が訪れる感じだ。

 

(2)「中国は民営企業を国有企業の傘下入りさせるとともに、国有企業自体も再編・統合して強化し始めた。背景には長引く米国との対立がある。中国の国有IT(情報技術)大手、中国電子科技集団(中国電科)は2月、同業の国有大手、中国普天信息産業集団(中国普天)の吸収統合に乗り出した。売上高の合計は5.6兆円に達する。中国電科は「軍工集団」と呼ばれる軍系大手の一角で、傘下に監視カメラ世界最大手、杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)を持つ。中国電科は米国の制裁対象で、規模拡大で制裁への抵抗力を高める狙いとの見方もある」

 

国有企業同士の再編合併が行なわれる。これも米国の禁輸措置の影響が及んでいる。

 

(3)「国有企業を統括する国務院国有資産監督管理委員会の郝鵬主任は2月の記者会見で「国有企業は中国共産党が政権を握る国で重要な支柱だ」としたうえで、今年からの5カ年計画で「競争力強化のために重点業界の再編統合を進める」と強調したさらに米国から経済制裁で攻められている半導体などの「弱点」の技術について、郝主任は「国有大手は新たな5カ年計画で規模拡大を進め、研究開発への投入を加速し、カギとなる中核技術の開発に打ち勝つ」と意気込む」

 

今後5年間、重点業界の再編統合を行なうという。まさに、米国の禁輸措置の影響である。中国経済の脆弱性がはっきりと現れている。これでは、とても米国とは対抗不可能である。

 


(4)「一方で民営企業への統制は強まる。政府活動報告では、上場延期に追い込まれたアリババ傘下の金融会社アント・グループを念頭に「独占禁止への取り組みを強化し、無秩序な資本の拡大を防ぎ、公平な競争ができる市場環境を守る」と盛り込み、民営ネット大手をけん制した。国有企業を優遇して民営企業が圧迫される「国進民退」が進む。ただ外資系投資会社の幹部は、「中国経済の活力だった民営企業が元気をなくせば、今後の成長に悪影響が出る可能性を否定できない」と分析する」

 

民営企業の活力を落とすような政策は、中国経済の成長率にはね返る。だが、国有企業中心主義を打ち出した以上、引っ込みがつかないのであろう。矛楯した政策に落込んでいる。

 


(5)「中国経済で民営企業の存在感は高まってきた。中国の税収に占める民営企業の比率は15年の5割から6割に上昇した。中華全国工商業聯合会によると、民営企業は雇用の8割以上、国内総生産の6割以上を占める。国家統計局が一定規模以上の工業企業を対象に実施した調査でも民営企業の利潤総額は2兆元(約33兆円)で、国有企業の1兆4000億元を上回った。民営企業が萎縮すれば技術革新にも影響しかねない」

 

中国経済に占める民営企業の比率は、次のように高いウエイトを占める

1)税収に占める比率は6

2)雇用に占める比率は8割以上

3)GDPに占める比率は6割以上

 

これだけ高い比率を占める民営企業が、「国進民退」という国営企業中心主義によって粗末に扱われると、中国経済は落勢を強めるであろう。

 

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