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日本のバブル崩壊が教科書

狂気の経済システムが破綻

米コロナ克服し成長軌道へ

 

中国の習近平国家主席は、3月5日に開幕した全人代(国会に相当)を足がかりにして、2035年までに近代的な強国を築き上げる目標を打ち上げた。習氏が、2035年まで国家主席の座にいることを間接的に示唆したものと受け取られている。

 

本来であれば、今回の全人代で高い経済成長率目標を打ち上げて、国民の関心を一身に集めるはずであった。それが、予想に反して地味なものに終わったのである。大きな不透明感が漂っているからだ。それは、国内と国外に分けられる。

 

国内では、過剰債務処理と不動産バブルの処理問題である。いずれも、全く手がついていないのである。海外では、米中対立の長期化と安全保障上の問題である。「インド太平洋戦略」は、クアッド(日米豪印)4ヶ国が結束を固めており、状況しだいではNATO(北大西洋条約機構)と連携する可能性も滲ませている。こうなると、中国は孤立する懸念が強くなる。習氏が、終身国家主席で君臨すれば、引くに引けない場面に追込まれる可能性が強まる。

 


一方の米国は、パンデミックで経済回復に手間取ったが、成長軌道に乗ってきた。バイデン米大統領は3月11日、十分な量のワクチンを確保できたとして、51日までに成人の希望者全員にワクチン接種ができる体制を整えると表明した。米国人にとって重要な祝日である7月4日の独立記念日までに、少人数の会合を開けるようにするなど生活の正常化に道筋を付ける考えも示した。こうして、米国はワクチン接種で退勢挽回の契機を掴んだ。

 

さらに、バイデン米大統領が提案した約1兆9000億ドル(約200兆円)の新型コロナウイルス追加経済対策が、3月10日に連邦議会を通過した。米経済は、約40年ぶりの高い成長率を遂げると予想されている。これによって、貧困の削減やインフレ率の押し上げも見込まれる「バラ色」の計画を描けるところまで来た。

 

日本のバブル崩壊が教科書

国際機関が、2020年代に米中のGDPが逆転するという予測は、上記のような米中それぞれの経済事情を検討すると、撤回せざるを得ない状況であることが分かる。これまでの中国経済は、不動産バブルによって実力(潜在的成長力)以上の成長を遂げてきた。これからは、その竹馬(不動産バブル)部分が切り捨てられる。それどころか、過去の不良債権の処理と住宅バブルがもたらした家計債務増加の重圧に泣かされる局面である。これだけではない。中国には、出生率急減による生産年齢人口(15~59歳)が急速な低下局面に入る。

 


日本経済は、1990年に株価と不動産の両バブルが崩壊した。その後は、バブルの後遺症と生産年齢人口の減少に悩まされ、「失われた20年」と揶揄されてきた。中国にも、これと全く同じ状況が始まると見るべきであろう。中国のバブル後遺症だけが、軽く済むという便法は存在しないからだ。

 

当時の日本は、米国との経済摩擦が加わって、急激な円高に悩まされた。これによって、半導体という「ドル箱」を失い、韓国にその席を譲らざるを得なくなった。中国は、それよりも厳しい「体制間競争」が重圧となる。こう見ると、中国の対米関係の圧力は、当時の日本よりもはるかに厳しいものになろう。中国は、「国運」を賭けた競争を強いられるのだ。中国が、安閑としていられる状況でないことは言うまでもない。

 

中国は、先の全人代中に株価急落という異変に見舞われた。従来の全人代は一種の「お祭り」気分で、先行きの楽観論が横溢していた。今回の全人代は、次のように様相が異なった。

 

1)2021年の経済成長率目標は、「6%以上」と事前予想を2ポイントも下回った。

2)第14次5カ年計画(2021~25年)の目標経済成長率の発表すらなかった。

 

前記2つの点が、何を物語るのか。中国経済が、過去にない事態に直面していることを示唆している。中国の株価が、急落したのは当然だ。その急落ぶりは、次に示す通りである。

 

上海総合指数

直近高値(21年2月18日) 3731.63

直近安値(21年3月9日)  3328.31(下落率10.81%)

 

中国投資家の間では、次のような動きが顕著である。株式市場のバブルや当局による引き締め策への懸念から、ハイテク、消費財など「成長株」が売却され、銀行などこれまで目立たなかった「割安株」へ投資する動きが広がっている、というのだ。高値株を売って利益を確定し、安値株を買うという投資家の防御姿勢が見られる。中国投資家が、中国経済の先行きに警戒姿勢を見せているのだ。これには理由がある。(つづく)



 

 

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