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文大統領は、北朝鮮からいくら罵倒されようと、じっと「我慢の子」を演じている。北朝鮮が望むことをすれば、必ず平和がやってくると認識しているためだ。文氏が、北朝鮮の望みを聞き入れてこそ、平和がやってくるという根拠のない理想主義に傾いているのは限界を超えている。韓国識者から大きな批判を浴びている理由だ。

 

『東亞日報』(3月17日付)は、「韓米合同軍事演習の縮小に対する北朝鮮の返事は『生まれつきの馬鹿』」と題する記事を掲載した。


(1)「北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の妹の金与正(キム・ヨジョン)氏が16日、韓米合同軍事演習を非難し、「3年前の暖かい春の日に戻ることは容易ではないだろう」と述べた。与正氏は、文在寅(ムン・ジェイン)政府に対して、「生まれつきの馬鹿」、「狂犬」と暴言を吐き、「任期の末期に入った南朝鮮当局の行く末は非常に苦痛で平坦ではないだろう」と警告した。また、「初めから面倒な仕事をつくらない方がよい」とし、バイデン米政権を激しく批判した」

北朝鮮の度を超した罵詈雑言には、聞き流しているだけでは韓国としての立場がないはずだ。一言、たしなめる警告ぐらいを発することも必要である。北朝鮮が、こういう下品な発言をするときは、韓国へのSOSを発している印とも言われる。だが、絶対に応じてはダメだろう。自制しようという動機が働かなくなるからだ。



(2)「政府は今回の韓米合同軍事演習を野外起動なく防衛的性格のコンピュータシミュレーション訓練に縮小して実施したが、与正氏はこれを評価するどころか嘲弄で応えたのだ。にもかかわらず、政府高官は、「南北首脳が板門店(パンムンジョム)宣言と平壌(ピョンヤン)宣言を確認することが目標」とし、南北首脳会談を再び推進する意向を明らかにした。相次ぐ北朝鮮の「対南叩き」と警告にもかかわらず未練を捨てることができないのは、政府が夢と理想に酔い浸って現実感覚を失ったのではないかという疑念を抱かせる

 

文政権は、北朝鮮からどのような悪口雑言を言われても、下僕のように振る舞っている。やはり毅然としたところを見せる必要があるのだ。こんな状況で、仮に南北交渉を始めても、対等な話合いは不可能であろう。

 

韓国は、こういう暴力団並の北朝鮮と交流する意義があるだろうか。バラ色の幻想から抜け出さなければならない。韓国が、損害を受けるだけである。



(3)「与正氏が米国務、国防長官の訪韓の前日に談話を出したのは北朝鮮のお決まりの手だ。与正氏は昨年12月、米国務副長官の訪韓に合わせて談話を出したが、北朝鮮に少しでも有利な局面を作ろうとしたのだ。与正氏が、「今後の南朝鮮当局の態度と行動に注目する」とし、9・19南北軍事合意を破棄する可能性まで取り上げたのは、文政権が米国に制裁緩和を説得してほしいという圧力であり、バイデン政権もこれに対して進展した立場を示すよう求めることに相違ない。これは、新型コロナ禍と貿易封鎖による北朝鮮の苦痛がそれだけ深刻という意味でもある」

 

韓国政府は北朝鮮のご機嫌取りをすぐにやめるべきだ。北朝鮮の対南非難と無茶な主張がますます水準を高める悪循環に陥ることになる。金与正氏の非難にタイミングを合わせて対北朝鮮ビラ法が制定されたのがその事例だ。韓国当局を圧迫すれば自分たちが望む結果を得られるという誤ったシグナルを北朝鮮に与えることになり、はるかに深刻な誤判断を呼びかねない。これは、『中央日報』(3月17日付)の社説である。韓国が、北朝鮮の言うままに動くことは、戦争誘発への危機を招き兼ねない。絶対に、応じてはならないのだ。

 


(4)「北朝鮮の韓米への激しい対応は受け入れられないが、北朝鮮の圧迫術策に振り回されてはならない。何より重要なことは、長期間停滞した米朝間の非核化対話を再開することであり、今回の韓米の会談では、この糸口を見出すことに議論が集中されなければならないだろう。北朝鮮も対話のムードづくりを台無しにする軽薄な発言を控えなければならない。このような行動は、米政権交代後も微弱ながら継続してきた米朝間の信頼の紐を弱めることになるだけだ」

 

北朝鮮は、韓国を言葉の暴力で威圧しようとしているが、こういう卑劣な手段を止めるには、米韓が一体化することである。現状は、北朝鮮をめぐって隙間風が吹いている。北朝鮮は、この隙を突いてくるのだ。もはや、政治体制も完全に異なっており、同じ民族と言えないほどの変化が起こっている。韓国が、北朝鮮を甘やかすことは「百害あって一利なし」という極限状況になっている。