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文政権は、選挙で勝つために何でもやることを証明しようとしている。過去は、これが成功してきたが、今回の公務員「土地投機根絶案」で文政権不人気を挽回できるか不明である。

 

ソウル市と釜山市という韓国の1位・2位の市長選で与党候補が不利な状況に追込まれている。不人気な理由は、住宅高騰の裏で公務員が土地投機して大儲けしている事件が発覚したからだ。その不正も、100人以上がかかわったという「集団土地投機」で、国民の怒りが収まらないのである。

 

韓国で、公務員の土地投機が大きな社会問題になった背景は、「新階級」が生まれているという絶望感がある。新階級とは、「公務員・学閥・不動産」の3つを指す。今回の公務員による不正な土地投機は、公務員と不動産が合体しているところに国民の大きな反発がある。

 

公務員試験に合格するには2~3年の就職浪人が当り前の社会だ。そうして得た資格を悪用して土地投機で利益を懐にする。朝鮮李朝時代の役人の両班(ヤンバン)が、農民を収奪していたころと瓜二つの現象である。韓国社会は、韓服から背広に替わっただけで、公務員(役人)の行動に何らの変化もないのだ。

 

『中央日報』(3月29日付)は、「韓国、すべての公務員財産登録 過去に投機で稼いだ利益まで没収推進」と題する記事を掲載した。

 

公職者が過去に不動産投機で稼いだ利益まで遡及して没収する案を与党が推進する。親日反民族行為と同一線上で処罰するという趣旨だ。財産登録範囲は9級までの元公職者に拡大することにした。与党「共に民主党」と政府は28日に高位協議会を開きこうした方向で公職者投機根絶対策を協議した。29日に文在寅(ムン・ジェイン)大統領主宰で開く緊急反腐敗政策協議会で対策を確定し発表する。



(1)「この日の高位政府与党協議会に参加した民主党の金太年(キム・テニョン)代表代行は「現行法でも公職者の不動産投機の不当利益を没収しておりすでに推進中。不十分な部分があると判断されれば没収に向けた遡及立法に出るという点を明確にする」と明らかにした。犯罪行為を処罰する法律の大部分は遡及適用されない。憲法上、法律が作られた時点以降の犯罪行為にだけ適用する。「親日反民族行為者財産の国家帰属に関する特別法」程度だけが例外だ。過去の日帝強占期に親日派が蓄積した財産は遡及して没収できる」

 

韓国では、盧武鉉政権時代に「日本憎し」で親日子孫の財産を没収する法律を作った。これは、時期を遡って法律を実施する「遡及」という特別の手法である。今回の土地投機による利益没収は過去に遡るというのだ。ここまでやれば、選挙対策として十分という狙いであろう。ただ、朝令暮改の韓国与党のこと。市長選が終われば、取り消すこともありうると観測されている。

 

(2)「民主党のチェ・インホ首席報道官は「政府与党では具体的議論がなかったが、党最高位では公職者の地位を利用して投機利益を得たり試みたりした者を親日反民族行為者と同列と規定して投機犯罪を取り扱おうという議論があり共感が形成された。遡及立法が推進されるだろう」と明らかにした。現在政府与党内部では韓国土地住宅公社(LH)職員の土地投機で議論になった第3期新都市までに遡及適用する案も議論されている」

 

ここで、改めて「親日」を持ち出してくるところが「ミソ」である。国民に「反日意識」を想起させる効果を狙っている。「反日」と言えば、選挙に勝てるという妄念に取り憑かれているのだ。

 

(3)「公職者の土地投機犯罪に対する処罰水準も非常に高くなる。未公開情報を持って土地・住宅など不動産を売買し50億ウォン以上の不当な利益を得た公職者は最大で無期懲役に処する。不当利益規模が5億ウォン以上50億ウォン未満であれば3年以上の有期刑に処する。不法行為で得た利益は没収され、不当利益の3~5倍に相当する金額を罰金として払わなくてはならない。現在4級以上の公務員を基準とする公職者財産義務登録範囲も元公務員に拡大する。財産公開対象ではなかった5~9級まで広がる。公務員任用と同時に財産公開対象になることもあるという意味だ」

 

下線部分は、最大で無期懲役という。なにか、中国の公務員が賄賂を受け取って無期懲役に処せられるのと似たような話だ。中韓の儒教社会は、公務員が民衆を食い物にしている「同じ穴の狢(むじな)」である。公務員は、「パブリック・サーバント」という認識に欠ける点で、マックス・ヴェーバーの指摘するように、近代官僚制とちがった「家産官僚制」と言わざるを得ない。お気の毒だが、韓国社会は時代遅れなのだ。