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従来の規定では、習近平中国国家主席の任期は2022年までである。昨年、憲法を改正して国家主席の任期制を廃止したので、習氏の健康が許す限り「皇帝」として振る舞えることになった。民主主議国では、あり得ない政治状況である。この「独裁政権」出現が、中国と世界に大きな波乱要因になることは言うまでもない。

 

『中央日報』(4月5日付)は、「タマネギと人生、そして中国」と題するコラムを掲載した。筆者は、ユ・サンチョル中国研究所長である。

 

(1)「中国をどう読むか。この問いに対するときはいつも「人生はタマネギのようなもの」と語った米国詩人カール・サンドバーグの言葉が脳裏をよぎる。外皮を1枚ずつはがすとき、その辛さに涙が出るのはタマネギと人生だけだろうか。千の顔を持つ中国も同じだ。それでも方法はあるはずだ。最近、中国の内心を垣間見るためのコツが一つある。それは中国で起きていることのほとんどは習近平国家主席の「長期執権」の野心と脈が通じているという点だ」

 

今後の中国が、どのようになるかを推測するには、習近平氏の好むコースの可能性を調べることである。世界覇権が実現するか、その条件を一つ一つ調べるべきだろう。習氏には、そういう緻密な作業を欠いているように思える。子どもが、オモチャを欲する気持ちと大した違いはなさそうである。

 

(2)「今年2月の終わりの日のことだ。中国新華社は中国共産党政治局委員や国務委員など中国最高指導部要人52人が習氏に業務報告をしたと伝えた。これを受けて、香港では来年の第20回党大会を控えて習氏に「忠誠の誓い」を立てたという分析があった。2012年第18回党大会で第1人者になり、2017年の再任に続く2022年の3連任に向けた布石ということだ。また、先月の全国人民代表大会(全人代)では33年ぶりに「全人代組織法」が改定された」

 

一人の独裁者に対して、14億人が支配されているとは不思議な構図である。習氏が、軍事力を握っているとは言え一人も反対者が出ず、独裁のもたらす余禄に預かっている。その姿は異常である。

 

(3)「骨子は全人代常務委員会が、首相や中央軍事委主席の建議なく副首相や中央軍事委副主席などを任免することができるようにしたものだ。全人代は「会って握手をし、手を挙げて表決し、拍手で通過させる(見面握手表決挙手通過拍手)」という皮肉を聞くところだ。一部では全人代に実質的な権限を付与したと言われているが、これもやはり習氏の権力強化につながっている。習氏が派閥の異なる首相・李克強氏を差し置いて、側近である全人代常務委員長の栗戦書氏を通じて、随時、党の重要人事を行えるようになったためだ」

 

下線部は、習氏一存で政治を動かせる体制づくりである。全人代常務委員会が、副首相や中央軍事委副主席などを任免することができるという「簡便型」を考案した。全人代は、これまで「盲腸」のような位置づけであった。その盲腸に、重要な機能を与えたのだ。

 


(4)「これに伴い、習氏は後継者問題に関連し、任意に人事を行える力を持つようになった。馬云にお灸をすえたこともこれと違わない。党に恥をかかせた不敬罪もあるが、ビッグデータの構築と報道機関所有など習氏の長期執権の最も強力な土台である「党の支配」に脅威になったのが本当の問題だ」

 

「馬云」は、アリババ創業者の「馬雲」(ジャック・マー)である。習氏は、マー氏の実力を奪った形だが、反習派である江沢民一派と地下水脈で繋がっていることを警戒したことは疑いない。習氏の超長期政権実現にとって、江沢民一派の動向に気を許せないのだ。

 

(5)「米国と正面から対立している中国の荒々しい外交も習氏の強いリーダーイメージ向上に役立つということだ。中国当局はまた、最近中国人の頭脳を掌握しようとする「思政」部門の教育に全力を注いでいる。社会主義の人民としての世界観、人生観、価値観など三観を備えるようにするという名の下、「習近平思想」学習の真っ最中だ。習氏執権はその終わりを予想することが難しい。このことがわれわれに与える示唆は決して軽くない」

 

この世に、「習近平思想」が存在しているはずはない。習近平を神格化して中国の統一を守るという苦肉の策である。中国政治には「共通意識」がないために、個人崇拝というもっとも危険な手法を使わざるを得ないのだ。この習近平「神格化」が、さらに大きな矛楯を生んで、中国を引き返しのできない地点まで暴走させるだろう。

 

(6)「中国の最近のすべての形態には、それが習氏の長期執権にプラスかマイナスかについてそろばんをはじく計算が働いている。中国と何かしようと考えている者なら、真っ先に考慮しなければならないポイントだ」

下線は重要である。中国においては、「全ての道が習近平に通じる」のだ。歴史において、独裁が栄えたケースはない。この事実を静かに思い浮かべるべきだろう。

 

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