ムシトリナデシコ
   


韓国が、難しい立場になっている。北朝鮮政策をめぐって、米国は制裁強化を要求し、中国が制裁緩和要求という、まさに二律背反の立場に追込まれているからだ。二股外交がもたらした最大の皮肉である。韓国は、これまで制裁緩和を主張してきただけに、米国の要求する制裁強化要求には応じにくい立場だ。そうかといって、中国の要請に従えば米韓同盟はガタガタになる。どうする文在寅氏、哲学者カントの悩みを共有する場面だ。

 

冒頭から、いささか小理屈を並べて恐縮だが、韓国にとって米国と北朝鮮の要求は、カント哲学の「二律背反」に属する問題である。カントは、これについて「理性は、ここで合理的な真理(確実な事実)を確立する役割を演じることができない」としている。つまり、合理的な回答はない以上、米韓同盟に従うしかない。これが、「カント的回答」と思われる。

 

『東亞日報』(4月5日付)は、「米国が『国連の北朝鮮制裁の完全な履行』を強調した日、中国は『韓国が制裁緩和を努力すべき』」と題する記事を掲載した。

 

韓米日3ヵ国の安全保障担当の高官が、「国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁決議の完全履行」を強調したと米国が明らかにした日に、中国が韓国に「北朝鮮の安全への合理的な懸念の解決に向けて努力しなければならない」と求めた。中国は、「北朝鮮の安全への合理的な懸念」を北朝鮮体制の保証と制裁緩和を指す言葉として使ってきた。

(1)「米ホワイトハウスは2日(現地時間)、米東部メリーランド州アナポリスにある海軍士官学校で行われた韓米日3ヵ国の安全保障担当者による会合の後、共同声明で、「3ヵ国の安全保障高官は、国際社会が国連安保理決議を完全に履行することが必要であることを確認した」とし、「核拡散を防止し、抑止力を強化して、韓半島の平和と安定を維持するために協力する」と強調した。「北朝鮮の核および弾道ミサイル計画に対する懸念を共有し、非核化に向けた韓米日3ヵ国の一致団結した協力を通じて問題を解決していくことを再確認した」とも明らかにした。北朝鮮に対する抑止を強調し、北朝鮮と中国に制裁順守を迫ったのだ」

 

米国は、国連制裁という錦の御旗を持っている。朝鮮戦争に参戦した国連軍の立場から言えば目下、休戦中の行動に違反している北朝鮮が制裁を受けるのは当然である。米国の主張に軍配が上がるのだ。



(2)「徐薫(ソ・フン)大統領府国家安全保障室長は会合の後、記者団に、「韓米日は北朝鮮核問題の緊急性と外交的解決の必要性について共感し、米朝交渉の早期再開に向けた努力が続かなければならないということで意見が一致した」と述べた。しかし、韓米日3ヵ国の調整を通じてホワイトハウスが明らかにした声明に米朝交渉の早急な再開は含まれなかった」

韓国大統領府は、二枚舌を使っている。日米韓3ヶ国の共同声明では、米朝交渉の早期再開は含まれていないのだ。ここまでして、国民を欺き文大統領の立場を守ろうとする意図は何か。文大統領の「レガシー狙い」であろう。だが、肝心の米国が否定している以上、米朝交渉の早期再開は無理である。

 

(3)「中国の王毅外相は3日、中国福建省廈門で行われた韓中外相会談で、鄭義溶(チョン・ウィヨン)外交部長官に、「韓半島の平和と安定を守り、北朝鮮の安全への合理的な懸念を解決しなければならない」とし、「これに向けて積極的に努力しなければならない」と述べた。王氏も、「中国は韓国と第5世代(5G)移動通信、半導体集積回路などの分野の協力を重点的に強化し、質の高い協力パートナーになることを望む」とも述べた。米国は、半導体が中国を牽制する国家安全保障問題と見なしている。韓米日安全保障高官会合で3ヵ国の半導体供給網の維持を議論したという」

 


中国は、頻りと日米韓3ヵ国の中へ手を突っ込みたがっている。韓国は、結果的にそういう機会を中国へ提供していることは、米韓同盟の精神に反している。米国は、韓国へ厳しく「同盟違反」を指摘すべきだろうが、いまのところは我慢しているに違いない。

 

中韓外相会談では、次のような食い違いもあった。韓国外交部は、「中国側が習近平国家主席の訪韓の意向を再度表明した」と強調し、会談の成果を発表した。中国の発表では、そのような言及はなかった。習氏の訪韓に対して、韓国だけが一方的にしがみついているような形になったのだ。

 

文政権は、習氏の訪韓を政治的一大イベントと考えている。一方の中国は、訪韓について言質を与えないのだ。これは、韓国を「釣る」目的である。文政権は、完全に中国の虜になっている。嘆かわしいことである。

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