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韓国文政権は、米韓同盟によって米国に顔を向けているが、心から親米となれない心の葛藤を抱えている。中国は、この隙を突いて揺さぶりを掛けているのだ。強引に中国側へ引き寄せようという戦略で、目的は韓国の技術横取りである。この「虎の子」を、簡単に中国へ引き渡すようなことがあれば、もはや「二股外交」という曖昧さは許されない深刻な事態を招く。

ただ、別掲記事で取り上げたが、危ないところで「Uターン」したようである。国際情勢の厳しさが分かってきたのだろう。これまでの学生運動家上がりの外交感覚では、国を滅ぼすという危機感が立ち止まらせたと見られる。依然として、まだ文政権内に米国懐疑派が巣食っていることは疑いない。

 

韓国が、危ない橋を渡りそうになったのはなぜか。文政権の世界観が、中国に近似していることである。韓国進歩派の価値観が、中国に近いと言えるのだ。それは、文政権を100%支えるメディアである『ハンギョレ新聞』の主張にも現れている。


 

『ハンギョレ新聞』(4月6日付)は、「インド太平洋戦略は『自己充足的予言』にすぎない」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のチョン・ウィギル国際部先任記者である。

 

2007年以降、再び強まってきた米国の封鎖に直面した中国は、南シナ海を内海にしようとしている。一方、米国はインド太平洋戦略に基づく海の封鎖で中国に圧力をかけている。このような事態は、中東から東アジアまで続く海域で不安と対決の増幅につながる恐れがある。

 

(1)「第二次世界大戦以降、世界は前例のない海の安全と航行の自由を享受してきた。米国が掌握した制海権のおかげだ。制海力があまりないソ連が、米国の制海権秩序を認めたからでもある。中国の浮上とこれを阻止しようとする米国の戦略は、再び海をめぐる争いを可視化させた。ここで改めて考えなければならない点がある。中国は皆に航行の自由を保障する米国の制海権秩序を認めようとしないのか。また、米国のインド太平洋戦略は本当に中国の封じ込めに効果的なのか。これは「自己充足的予言」である。つまり、そう考えるほど、それが現実化する可能性が高まるということだ」

 

「自己充足的予言」とは何か。これは、ある社会的事象や状況に関して,誤った判断や思い込みなどが,新たな行動を引起し,その行動が当初の誤った判断や思い込みを現実化する、というもの。ここでは米国が、インド太平洋戦略で防衛線を敷くことで戦争になるだろうとしている。

 

この議論は、戦略論として間違っている。インド太平洋戦略は、中国の侵略が予想されるので、抑止力をつけて開戦を未然に防ぐものだ。米ソ冷戦が「熱戦」にならなかったのは、西側諸国の毅然とした防衛決意の結果である。朝鮮戦争が起こったのは、韓国側の防衛体制がゼロであったことによる。身近に、北朝鮮の「自己充足的予言」の誤りが存在する。

 

(2)「インドは周辺海域の海上の安全を、日本は東アジア海域で中国勢力のけん制を意図したが、米国はこれを「世界戦略」として捉えたのだ。中国(中華人民共和国)は建国以来、南シナ海の領有権を主張してきたが、南シナ海環礁島で人工構造物を本格的に積み始めたのは、バラク・オバマ政権の「アジアへの帰還」戦略が発表されてからだ」

 

南シナ海は、全面的な公海である。中国の領有説は2016年7月、ハーグの常設仲裁裁判所によって「法的根拠がなく、国際法に違反する」との判断が下されている。筆者は、この重大事実をわざと棚上げしている。米国を批判し中国の肩を持つのは、メディアとして不公平の極みなのだ。

 

中国が、南シナ海で島嶼を埋め立て軍事基地化し始めたのは、米海軍の影響力が減殺された後だ。米海軍は、1992年にフィリピン・スービック海軍基地から撤収し、フィリピンにおける米国の軍事的な影響が著しく減少した。オバマ政権の「アジアへの帰還」(2009年以降)は、米軍の空白を突く中国軍の動きをけん制すべく始まった。米国の「アジアへの帰還」があったから、中国軍の南シナ海基地化開始という論理は逆である。完全な誤りである。

 

(3)「中国など東アジア経済が世界の工場と言われるまで拡大し、中東の石油など原材料の海路としてインド洋の重要性が浮き彫りになったのは、必然かもしれない。米海軍は、中国がインド洋沿岸部に沿って(パキスタンの)グワーダル、(スリランカの)ハムバントタ、(バングラデシュの)チッタゴンなどの港を掌握する「真珠の首飾り」戦略を採択したという「中国脅威論」を発表した。しかし、これは主要港で専用埠頭をつくる程度にもかかわらず、まるで軍港として租借でもしたかのように誇張したものだった」

 

このパラグラフも一方的である。中印は従来、国境で紛争を起こしてきた。中国は、これをけん制すべく「真珠の首飾り」戦術を始めたというのが、一般的な見方である。中国の「一帯一路」戦術に現れているように、中国は権謀術策に長けている。余り中国を庇い立てすると、メディアとしての自殺行為となろう。

 


(4)「米国のジョー・バイデン政権は今、対外政策を再調整している。要は中東の比重を減らし、アジアの比重を増やすことだ。ところが、米国は再びインド洋の他方を東アジアと結びつけ、勢力争いを繰り広げる構えである。問題は、米国がインド太平洋地域と規定する勢力圏の“インド”に足を踏み入れる拠点があまりないため、勢力圏を作るためには莫大な介入と資源を投入しなければならないという点だ。例えば、米国の空母が常駐するか、少なくとも随時配置されてこそ、少なくともインドも対中封鎖に協力することができるだろう

 

中国が、海洋進出を止めればインド太平洋戦略も動かずに済む。「安全保障のパラドックス」と言って、中国が軍備増強すればクアッドやNATO(北大西洋条約機構)も同等の対応を取るのだ。中国は、対中防衛ラインが地球規模で築かれることを深く考えるべきなのだ。

 

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