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中国人民解放軍が、台湾海峡で軍事示唆を展開している。中国本土ではヨチヨチ歩きの半導体産業が、台湾では一大産業として世界を睥睨(へいげい)するまでに急成長している。中国が、にわかに台湾侵攻を宣伝し始めた理由でもあろう。

 

米海軍が4月11日、興味深い写真を公開した。米海軍第7艦隊所属のイージス艦「マスティン」艦長が、艦橋で足を投げ出し横に立つ副長とともに、中国海軍初の空母「遼寧」の通過を見過ごしている光景だ。米海軍の説明によると、この写真は4月4日、フィリピン海で撮影された。マスティンと遼寧は、互いに見えるほど近い距離を通過したのである。

 

米イージス艦の艦長が、何ら緊張することなく遼寧を見やっている姿は、『中央日報』(4月12日付)によれば、「現在の米中関係を示しているようだ」としている。中国が肩をいらつかせていても、米国は、相手の実力のほどを知り抜いているので、慌てていないという意味であろう。

 


『朝鮮日報』(4月12日付)は、「半導体大乱、突然「無視できないほど巨大」になった台湾」と題する記事を掲載した。


「今世界は危険なほど台湾製半導体に依存している」。米『ブルームバーグ通信』は今年1月末、当時始まったばかりの世界的な半導体供給不足についてそう指摘した。記録的な寒波で米国内での半導体生産が全面中断する中、世界の主な自動車メーカーが相次いで台湾に支援を求めたからだ。ブルームバーグは「台湾の存在が突然、無視できないほど巨大になった」と評した。

 

(1)「米半導体工業会(SIA)は4月1日、ボストン・コンサルティング・グループと共同で発表したリポートを通じ、「台湾のファウンドリー(受託生産業者)が1年間半導体を生産できない場合、全世界のIT企業で4900億ドル規模の経済的損失が生じる」と分析した。さらに、「台湾の半導体生産能力が永久にまひすれば、世界の半導体サプライチェーンは完全に崩壊し、それを再建するのに最低3年の時間と3500億ドルの資金が必要になる」と試算した」

 

スマートフォン、テレビ、自動車から先端兵器システムに至るまで半導体を必要としない機器はないとされる時代にあって、世界のシステム半導体の半分以上を生産する台湾の存在なくして、いかなる先端製品も成り立たなくなったのだ。台湾半導体の世界的位置が、いかに大きいかを物語っている。中国は、台湾を喉から手の出るほど欲しい立場だ。これは、同時に、米国が絶対に台湾を中国に渡さないという意味である。

 


(2)「台湾現地では、「ファウンドリーの好況を追い風として、韓国を超える半導体大国になろう」という声が高まっている。実際に台湾は昨年、半導体生産額が前年比20.9%増の3兆2200億台湾元(約12兆4200億円)を達成。うち半分以上がファウンドリーによる生産分だった。さらに台湾積体電路製造(TSMC)は最近、「(注文が殺到し)今後は大口の注文でも値引きはない」と発表した。他のファウンドリーは値上げを予告している。そのため、ファウンドリーが占める割合はさらに高まりそうだ。値上げされたとしても、まずは半導体の確保が急務の客先は、ファウンドリーに苦言を呈することができない立場だ」

 

パンデミックによって、世界中が一挙にデジタル経済へ突入した。これを背景にして、半導体需要が膨らんでいる。「半導体飢餓」で生産をストップする産業も出てきた。自動車産業もその一つである。この基調は今後、さらに強まる傾向だ。台湾の位置は、ますます引き上がられる。それと共に、中国軍の雑音が高まることは必至の情勢である。

 


(3)「台湾政府は、世界首位のTSMCだけでなく、現時点ではシェアがさほど大きくない2~4位の企業も本格的に育成し、台湾を半導体生産の中枢としていく戦略だ。3月25日には台湾・苗栗県に現地3位のファウンドリーである力晶積成電子製造(パワーチップ・セミコンダクター・マニュファクチャリング、PSMC)が2780億台湾元を投じる新工場の起工式を行った。当日は蔡英文台湾総統も自ら出席し、くわ入れを行った」

 

台湾政府は、半導体ファウンドリー世界1位のTSMCに続いて、将来の世界2~4位候補企業も育成する方針である。台湾が、「半導体島」になる日は近い。それだけに、中国軍のやっかみは深まるという悩みを抱える。

 


(4)「台湾の半導体産業にも懸念材料がある。現地では慢性的な問題点として、「五欠」という表現がある。水不足、電力不足、土地不足、労働力不足、人材不足だ。台湾は今年も冬の渇水で半導体工場が稼働中断の危機に直面し、ガソリンスタンドでの洗車や家庭用水を節約する方式でようやく稼働を維持した。天然ガスの在庫不足による電力不足、国土面積の限界による土地不足も問題点として挙げられる。さらに致命的なのが労働力・人材などの欠乏だ」

 

台湾メディア『聯合新聞網』は、「半導体の崛起(くっき)を狙う中国による技術の奪取が深刻なので、中国の労働力は使わないというのが不文律だが、大規模な工場増設でそのルールも破られる兆しがある」と報じている。台湾での増産に限界があるので、TSMCは日本での増産を検討している。韓国メディアは、日本が半導体大国になると警戒するほどだ。


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