韓国外交部は、福島原発のトリチウムを海洋放出する問題について、7年前から模擬裁判を行ない準備していたことが判明した。大学法学部レベルの模擬裁判であるものの、日本の動向をじっと狙っていたことは疑いない。陰湿な雰囲気を感じさせるのだ。
『中央日報』(4月15日付)は、「韓国外交部が『放射能汚染水』国際裁判に対応する論理」と題する記事を掲載した。
韓国外交部は、「第6回国際法模擬裁判競演大会」(2014年)において、放射能汚染水が海に流出した状況で、国際法的にいかなる対応が可能かを論争させ準備してきた。外交部は、4月14日の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の「国際海洋法裁判所に暫定措置とともに提訴する案を検討すべき」という指示を受け、放射能汚染水問題に関する国際司法手続きを検討中だ。
韓国内では、国際司法裁判所へ訴えた場合、日韓の外交的な溝が一層深まることのリスクを指摘する声があるので紹介したい。
1)国内の裁判と違い国際法裁判は一度判決が出れば2審、3審がないため「最初のボタン」をうまく掛けなければいけない。
2)裁判で勝訴できない場合も負担であり、国家間関係でも考慮すべき部分が多い。
3)日本が独島(ドクト、日本名・竹島)問題を国際裁判に持っていこうとするのを韓国は反対してきたが、原発汚染水を裁判に持っていけば今後、別の紛争も司法的手続きに進む圧力が生じかねない。
4)別のイシューで司法的な対応をする準備ができていなければ、韓国政府の立場が苦しくなるだろう。
韓国が、今回の福島原発トリチウムを国際司法へ訴えれば、他の日韓紛争問題も国際司法へ委ねなければならなくなる。韓国が、自国に都合のいい案件だけを国際司法へ訴えるという身勝手さは許されないからだ。また、こういう形で日韓が法的に争えば、両国関係が大きく軋むことになる、としている。
国際司法では、提訴する側(韓国)が全て証拠を集め提示しなければならないという制約がある。
『中央日報』(4月15日付)は、「文大統領が指示した『汚染水放出』提訴、法律的には可能だが勝訴楽観は難しく」と題する記事を掲載した。
法的手続き上は可能な選択肢だが、被害の立証責任は韓国にあり、結果を楽観するのは難しいという指摘だ。
(1)「問題は、国際司法裁判所に対して、暫定措置であろうと本案訴訟であろうと、そのような可能性を立証する責任は問題を提起した韓国にある点だ。「一方的な決定」「十分な協議がなかった」という主張さえも、資料で立証してこそはじめて法廷で認めてもらえる。日本が具体的に海洋法条約のどの規定に反したのか、裁判所を説得する科学的根拠が必要だということだ」
韓国は現在、福島県ほか8県の海産物輸入禁止措置を取っている。日本が、WTO(世界貿易機関)へ訴えたものの、韓国は立証データを提出せず、「風評被害」という曖昧なことで逃げ切った。韓国が、国際司法裁判所へ提訴の場合、WTOのような「逃げ切り」は不可能である。韓国が今度は、全データを提出する義務を負う。
(2)「延世(ヨンセ)大学法学専門大学院のイ・ギボム教授は、「私たちは日本が間違っていると当たり前のように考えるが、これを国際海洋法裁判所が納得できる言語に構築し直すことがカギ」と指摘する。また、「日本の協力義務や事前通報義務など手続き的な義務違反はそれなりに簡単に証明することはできるが、放出を防ぐための実体的な根拠を提示するためには多くの時間と努力が要求される」と説明した」
韓国は感情論で訴えているが、理詰めの証拠を提出しなければならない。WTOの際も、被害を実証できるデータを提出できなかった。つまり、韓国には福島原発問題の具体的被害がないのだ。
(3)「韓国政府は、危険性を立証するにはデータが必要である。だが、汚染水に関連した主な資料のほとんどを日本が持っている。外交部によると、日本側は具体的な処分方式や総量など、核心情報に対する回答すらまだ提供していない。結局、「日本政府の今回の決定は周辺国家の安全と海洋環境に危険を招く」(13日の政府コメント)という主張を立証するには、資料に関連して日本の協力を求めるか別の法的手続きを進めなければならないということだ」
日本は、IAEA(国際原子力機関)に全てのデータを提供して、誤りなきを期している。韓国はデータがないと言っていながら、提訴すると発言していることは、被害がないことを物語っている。日本を威嚇していることと同じなのだ。「反日活動」の一環として、日本に一太刀浴びせたいという感情論に過ぎない。極めて悪質な動きである。
コメント
コメントする