菅義偉首相とバイデン米大統領の首脳会談で台湾問題や人権問題に触れたことに、中国が反発を強めている。同国の在米国大使館の報道官は4月17日、日米の共同声明に「強く不満を表明し、断固として反対する」とのコメントを発表した。
報道官は、台湾や香港などについて「中国の内政問題だ」と反発した。東シナ海や南シナ海問題は、中国の主権に関わるとも主張した。そのうえで「中国側は必ず国家主権、安全、発展の利益を断固として守る」と強調した。
以上のコメントを聞くと、中国は国際法を無視した行動を今後も続ける意思であることを表明したのも同然である。こういう無法国家の中国に、国際法の存在を認識させる方法はあるのか。深刻な問題である。
中国の十八番は、相手国への経済制裁である。日本へはその可能性はあるのか。中国の2020年の上位貿易相手国は次のようになっている。
輸出国 輸入国
米国 4297億ドル 韓国 1775億ドル
香港 2793億ドル 日本 1656億ドル
日本 1373億ドル 台湾 1553億ドル
韓国 1027億ドル 米国 1539億ドル
ドイツ 711億ドル ドイツ 969億ドル
豪州 948億ドル
(出所:JETRO)
上記データを見ると、中国にとって日本は輸出先で3位、香港を除けば実質2位である。輸入では日本が2位である。日本が、中国にとって重要貿易相手国である。日本から素材や中間製品を輸入して加工し、輸出する加工型貿易であることが分かる。この日本へ経済制裁すれば、中国が損失を被る構造になっている。
中国が、デカップリングになればどれだけの痛手を受けるか。改めて指摘するまでもない。こうした貿易構造ができあがっている中国が、国際法を無視した行動を取れば、確実に制裁を受けるはずだ。いくら習近平氏が、民族主義に酔っているとは言え、霞で生きている訳でない。正常な感覚の持ち主であれば、「冷戦」から「熱戦」へと舞台を回す度量はないと見られるが、どうなるかである。
『大紀元』(4月17日付)は、「中国、日本を『特別扱い』する理由とは」と題する記事を掲載した。
日中間の強い経済的な繋がりは日本の対中政策の足枷になっている。しかし、両国の経済が依存関係にあっても、それは双方向なものである。強いて言えば、中国の日本に対する依存度は、日本の中国に対する依存度よりも大きい。日本はこの問題を戦略的な観点から理解することができれば、対中政策を大胆に転換させることが可能になる。
(1)「「日本の衰退」、「失われた30年」、「『日本は技術的には成功したが市場では失敗した』という呪縛から抜け出すには、日本は中国と協力するしかない」といった説が中国のメディアやネット上に氾濫しており、多くの人がそれを信じている。しかし、これらは中国が意図的に仕組んだ精巧な嘘に過ぎない。中国当局の対日政策は、これとは違うものだ」
中国の貿易構造を見れば、日本の存在の大きさが分かるはずだ。その日本へ悪口雑言を言い放つことは理解に苦しむことだ。ましてや、輸出先トップの米国覇権へ軍事的に挑戦するとは、米国が反発して当然である。
(2)「例えば、2016年に米国は最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD、サード)」を韓国に配備することを決めた。その際、反発する中国は米国には何もしなかったが、韓国に経済的制裁を科した。中国は、限韓令(韓流コンテンツ禁止令)、ロッテ
グループボイコット、旅行禁令などの制裁と通じて、文在寅(ムン・ジェイン)政権にサードの追加配備をしないなど約束させ、妥協を引き出すことに成功した」
韓国は、中国のご機嫌うかがいするから舐められる。韓国が、中国へ抵抗したことがないから、それを良いことに圧迫を加えている。甘く見られているのだ。
(3)「このケースと対照的な、別の物語もある。2017年12月、日本政府はミサイル攻撃への防衛のため陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」2基の導入を決定した。(2020年6月25日に配備計画の停止が正式に発表された)ただ、韓国のサード配備と違って、日本は自主的に導入を決めた。中国は日本の動きを東アジアの戦略的バランスへの破壊だと批判しているが、経済的制裁を日本に課していない。なぜだろうか?」
日本へ経済制裁すれば、中国の輸出産業がストップする。中国は、これを熟知しているから、日本への嫌がらせを控えているに過ぎない。
(4)「なぜ中国は日本だけを「特別扱い」するのだろうか。実際、中国は何も日本だけを特別視しているわけではない。中国はただ単に弱者には苦しみを与え、強者には媚びへつらっているだけである。つまり、日本に対する特別扱いは、熟考の末にそう選択せざるを得なかっただけである」
日本への経済制裁を控えているのは、日本企業が中国へ進出しており、100万人単位の雇用を確保している面もあろう。
(5)「実際、1995年以降、日中関係は常に摩擦が絶えなかった。中国の対日政策の基本措置の一つは「政治と経済の分離」であり、政治的理由で両国間の経済協力を干渉しないことを常に強調してきた。その主な原因の一つは、中国が経済的に日本に依存しているからだ。これはある意味、日本経済の強さを証明している。つまり、中国経済は共産党が宣伝しているほど強くないこと、そして日本経済は決して衰退しているわけではない、ということだ」
中国のやり口は、あくどいという一言である。日本を衰退と蔑み、米国は没落して中国が世界覇権を握ると宣伝している。世の中は、そんなに上手く回るものでない。中国は、習近平の身辺に変化が起これば、それで全て終わる脆弱な構造なのだ。専制主義国家は、一夜にして崩れる運命である。それが、歴史の教訓である。
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