文在寅の思惑が大外れへ
日韓の置かれた同一条件
韓国の人権論は日本向け
中国の日本威嚇は空鉄砲
日米首脳会談が4月16日(現地時間)、ワシントンで開催された。米国は、対外戦略で中国との競争に打勝つことを最大目標に掲げている。インド太平洋戦略「クアッド」(日米豪印)は、そのマジノ線に位置づけられた。日本はその核である。バイデン米大統領が、最初の対面による首脳会談相手に菅首相を選んだのは当然であろう。
米国は、中国の世界覇権への挑戦を絶対に退ける強い意志で臨んでいる。日本が数ある米同盟国の中で、最大のパートナーになっていることは、日韓関係にも微妙な変化を与えている。日韓関係が悪化しても、従来のような米国の仲裁する動きが全く見られないことだ。日韓関係がひび割れした理由は、韓国の国際法違反にある以上、米国は日本へ妥協を求める訳にいかないのである。
米国は、中国に対して国際法遵守を要求している。この立場から、国際法違反の判決を二度も続けて出した韓国に対して、米国が是認できるはずがない。韓国はこういう国際法的な視点がゼロである。日本を悪者にすれば、米国が中に入って仲裁してくれるという甘えが今もつきまとっている。
卑近の例で言えば、日本が福島原発の処理水であるトリチウムをIAEA(国際原子力機関)との話合い(過去4回)をベースに、2年後の海洋放出を決定した。この間、各国外交団に事態の顛末を100回も説明してきた。それにも関わらず、韓国は日本の一方的決定と非難している。米国は、日本の措置に賛成する旨の国務省談話を発表した。
韓国は4月17日、米大統領特使で気候変動問題を担当するケリー氏をソウルに招き、日本の「悪行」を訴え善処を求めたが不首尾だった。ケリー氏は、「日本はIAEAと非常に緊密に協力して解決策を進めてきた。すでに両者の連携が進行中で、非常に明確な規定と期待値がある手続きの中に、米国が飛び入るのは適切でない」と述べた。韓国が、反日目的で米国を引き込む目論見は失敗したのである。
文在寅の思惑が大外れへ
日米関係の一段の緊密化は、米韓関係の位置をより低いものにさせている。私は、韓国が明確に「クアッド」加入姿勢を示さない限り、「外様大名」の位置に引き下がると指摘してきたが、先のケリー氏の発言はそれを雄弁に物語っている。実は、先の日米首脳会談の成果は、5月下旬に予定されている米韓首脳会談の成り行きに大きな影響を与えると考えられる。韓国は、日米首脳会談の結果をかなり追認させられると見るべきだろう。韓国が、最も関心を持つ北朝鮮問題は、日米首脳会談で決まった北朝鮮政策にそったものにならざるを得まい。
文大統領は、南北問題解決において韓国が運転台に座ると強調してきた。現状は、日米韓三カ国が「共同運転」する形になっている。北朝鮮のミサイルが、日米の安全保障に大きな脅威になってきた以上、もはや韓国の一存で決められる問題でなくなったのである。韓国は、こうした情勢変化を見落としている。南北の話合いがベースとなって、解決策を見つけられるという妄想に浸っているのだ。そういう安易な解決段階は、とうに過ぎている。
ここで、日米首脳会談の概略を見ておきたい。
1)台湾海峡の平和と安定の重要性を強調
2)日米安保条約5条を尖閣諸島へ適用することを再確認する
3)半導体などのサプライチェーンで連携
4)香港や新疆ウイグル自治区の人権状況への深刻な懸念共有
5)脱炭素へ2030年までに確固たる態度を取る
6)日本の今夏の五輪開催への努力を支持
上記6項目中、韓国と無関係なのは2)と6)である。他は、すべて韓国も関係している。その意味で、日米首脳会談の共同声明は、5月下旬に予定されている米韓首脳会談の「ひな形」と見るべきだろう。米国は、あえて米韓首脳会談を日米首脳会談よりも1ヶ月以上遅らせ、韓国に決意を迫っていると考えられる。米韓首脳会談の共同声明が、日米首脳会談よりも「低級」であれば、中国に付け入る機会を与えかねないのだ。となれば、米国が韓国へも強い姿勢で迫ることが予測できよう。
日韓の置かれた同一条件
前記の主要項目について、私のコメントを記しておきたい。
1)台湾海峡の平和と安定の重要性を強調している点は、韓国も無縁でない。日米共同声明で「台湾」が明記されたのは52年ぶりである。米中関係が、米ソ対立の冷戦時代へ逆戻りしているという意味だ。韓国には、そのような認識はゼロである。よりによって、鄭義溶(チョン・ウィヨン)外交部長官が4月2、3日に中国を訪問し、王毅外相と会談した。その席で、中韓外務・国防「2+2会議」の開催を決めた。出席者のレベルは低くすると言う。
米中対立が深刻化している中で、米同盟国の韓国が中国へ接近するのは何とも不思議な現象である。多分、国際情勢が急変していることへの認識が不足している結果であろう。米韓首脳会談では、この点を米国から糺されるであろう。(つづく)
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