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昨年の中国人口動態が、発表され始めた。瀋陽市を初めとする大都市の人口の自然増加率がマイナス、つまり「人口減」であることがわかった。中小都市に続き、中国の一部の主要大都市でも本格的な「人口マイナス成長」の時代に突入した。

 

世界覇権を狙うと豪語してきた中国だが、覇権狙いどころか足元のふらつく経済へ落込むことになった。一方の米国では、メキシコ国境に何十万という移民予備軍が殺到している。米国はその気になれば、いつでも人口調整できる恵まれた条件にある。人口動態だけから見ても、中国は米国に楯突ける事態でない。

 


『大紀元』(4月22日付)は、「中国、一部大都市が人口の『マイナス成長に突入』 専門家『大きなターニングポイント』」と題する記事を掲載した。

 

中国メディア「21世紀経済報道」は、人口統計を公表した26市のうち、8市の人口の自然増加率がゼロを下回ったと報じた。

 

(1)「瀋陽市は、人口の自然増加率がゼロを下回った最初の「新一線都市」となった。 同市の2020年の自然増加率は-3.34(登録人口)で、昨年より3.38ポイントも低い。また出生率は6.68で、昨年よりも1.67ポイント低く、死亡率は10.02で、昨年より1.71ポイント増加している。中国では、北京、上海、広州、深圳市に次いで発展している都市とされる15都市を「新一線都市」と格付けしている。遼寧省・撫順市は、これまでにデータを発表した都市の中で、人口の自然増加率が最も低く-13.を記録した。さらに江蘇省の泰州、揚州、鎮江、常州、無錫市の5都市、山東省の威海市なども人口がマイナス成長となった」

 

北京、上海、広州、深圳市などに次ぐ人口規模の「新一線都市」(15都市)の一角である瀋陽市が、初の人口減に陥った。瀋陽は、遼寧省の省都である。日本で言えば、県庁所在地の人口が自然減(出生数<死亡数)に見舞われたのである。遼寧省全体の経済が、いかに不振であるかが分かる。

 

無錫(むしゃく)といえば、「無錫旅情」という歌がある。太湖のほとりの景勝地である。工業都市でもある。そこの人口が自然減である。日清戦争で、日本海軍が攻略した軍港の威海市(威海衛)も人口減である。中国の地方有力都市が、次々と「落城」している。

 

(3)「中でも、登録人口が500万人を超える大都市である無錫市は、2020年の死亡数が4万20人と、出生数の3万9216人を上回り、人口の自然増加率は-0.16となった。他の都市では人口の自然増加率がゼロを下回らないものの、ゼロに近づいている。例えば、浙江省の寧波市の自然増加率は0.75%となっている」

 

引き潮で、これまで海中に隠れていた岩が顔を出すように、かつてないスピードで人口減が始まったと見るべきだろう。一方、定年延長には反対論が強くて不可能である。当局は、2021~25年の間に、1年の定年延長を図りたいが見通し難である。労働力不足に拍車をかけるので、経済活動は鈍るはずだ。

 

(4)「これまで多くの小さな町で人口がマイナス成長になっていたが、今回の発表で一部の大都市も同じ傾向にあることがわかった。中国社会科学院の人口と労働経済研究所の研究者である王広州氏は、「これは大きなターニングポイントであるが、静かに起こっているため、多くの人々はまだ気づいていない」と指摘した。「中国とグローバル化シンクタンク」の特別招聘上級研究員で人口学者の黄文政氏によれば、「多くの大都市が徐々に人口のマイナス成長の段階に入れば、国全体の人口も将来的にマイナスに成長する。この状況は数年以内に現れ、しかも加速する傾向にある」との見解を示した」

 

当局は、14次5カ年計画(2021~25年)の経済成長目標を立てなかった。現実は、人口減の進行で「立てられなかった」のであろう。中国経済が、大きなターニングポイントであることは間違いない。

 

(5)「中央銀行は14日、「我が国の人口変化に関する認識と対策」と題された論文を発表した。人口問題は同行の管轄ではないため、論文発表は波紋を呼んだ。同論文によれば、中国の高齢化は深刻であるとし、出産の完全自由化(1世帯あたり3人あるいはそれ以上)を呼びかけた。「2020年の人口統計」をすでに発表した地方のデータによれば、2020年の出生人口の減少率は10〜20%となっている。中国経済媒体「第一財経」の18日のデータによれば、2019年の中国の出生人口は1465万人で、1987年(過去40年間の出生人口のピーク年)の58%であることがわかった」

 

中国の中央銀行である中国人民銀行が、高齢化は深刻であるとして出産の完全自由化を提言するまでになっている。中国は、ここまで追込まれている。ただ一人、夢を見ているのが習近平氏である。

 


(6)「中国の人口専門家であり、広東省人口発展研究院の院長でもある董玉整教授によれば、現在の傾向で進めば、第14次5カ年計画期間中(2021~25年)にも、年間出生人口が1000万人を下回る可能性があると指摘している。董氏は、近年の出生数の減少スピードが速いため、数年以内に中国の総人口はマイナス成長になる恐れがあると懸念を示した」

 

昨年の出生数は、暫定値で1003万人である。2021~25年の間に1000万人を割り込むのは不可避だ。国連予測では、中国人口が2027年に1位の座をインドに譲る見込みである。現実には、大幅な前倒しが起こって当然であろう。中国人口がマイナス成長になり、インドに抜かれる事態になって初めて、中国も世界も「中国信仰」から目を覚ますに違いない。そのときでは、遅すぎるのだが。

 

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