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空母は囮で強気演出へ

日本の債務過多と酷似

ネット金融を囲い込む

米経済は快走で引離し

 

習近平国家主席の判断を見ていると、国内政治の締め付けと対外軍事進出を同時に行なっている。これは、対外的な軍事示唆を積極的に行なって、国内政治基盤を固める「外→内」の政治パターンである。

 

空母は囮で強気演出へ

中国の海洋軍事進出は、「外→内」の要であり空母がその役割を担っている。その主役は、「遼遠」「山東」という2隻の空母だ。皮肉なことに航行中の4月、ともにエンジン故障を起こして立ち往生する姿が、衛星写真によってネットに公開された。ネットでは、中国空母を揶揄する投稿が相次ぎ、中国がメンツを失う格好になった。

 

衛星写真によれば、「遼遠」が打撃陣(機動部隊)を従えた演習において、日米艦船がその打撃陣の真ん中に映し出されている。これは、実戦において「遼遠」が攻撃され撃沈の憂き目にあうことを想像させるものだ。中国海軍の熟成度が、極めて低いことを証明する形になった。中国は、この体たらくにもかかわらず、台湾攻略を示唆する強気発言を続けている。本当に攻撃意思があるのか疑問に思える。

 


現実に攻撃意思はないが、その「素振り」を見せて国内政治に利用している点も否めないのである。この伝で言えば、米国の世界覇権に挑戦するという宣言も、国内向けの発言であると考えられる。中国は、空母が航行中にエンジン故障を起こす程度の技術力しかない国である。常識的に考えれば、米国のみならず米同盟国を相手に戦争できるはずがないであろう。

 

このような客観的な思考に立つと、習近平氏は国内基盤を固める便法として世界覇権論を利用していると見るべきだろう。現に、国内ハイテク企業の取り締まりを始めている。ハイテク企業の成長促進による国力増進よりも、ハイテク企業の成長拡大が習氏の権力と衝突することを未然に防いでいる側面が強いからだ。

 

ハイテク企業は、21世紀の世界をリードする産業である。習氏は、その「卵」を自由に育てず、自分が囲い込んで刃向かわないようにしているのである。この振舞の中に、習氏は中国経済の世界一論を巧みに利用しながら、習近平「永久政権」をより確実にする戦略とみえる。

 

客観的にみる中国経済の成長性には、明らかな限界が漂っている。人口動態と生産性の動向から、中国がパンデミック以前の成長率を維持するのは、ますます困難になると予測できるのである。

 

人口面では、2020年の国勢調査結果が、この4月初旬に発表予定であったが理由もなく遅延されている。『フィナンシャル・タイムズ』は、中国当局者の匿名による情報で、2020年の総人口が減少したと報じた。当局は、この情報を否定して「総人口は増えている」と断片的な発言をしている。これは、前回国勢調査時の2010年よりも増えたのか。あるいは、一昨年の2019年より増えたのか不明である。その際、「総人口の減少は2023年からとなろう」とも言ったと報じられている。いずれにしても、人口減が目前である。

 

生産性の伸びが停滞している。中国の生産性の潜在力に関し世界銀行が2020年6月に公表した文書によれば、TFP(全要素生産性)成長率は全般的に大幅に減速している。世界金融危機(2008年)以前の10年間の年率は2.8%だったが、2009~2018年は0.7%に鈍化しているのだ。これは、企業の債務増加が新規設備投資を抑制している結果とみられる。

 

中国の生産年齢人口比率のピークは、2010年である。これ以降、年を経るに従い減少率が大きくなっている。ピークからすでに10年もたっている現在を考えれば、2020年から減少カーブの角度が大きくなってくるはずである。日本経済も生産年齢人口比率のピークは1990年である。2000年代に入って、潜在成長率はガクンと落ちて大慌てした。中国も、これから同じことが起って当然。マルクス主義を唱えても、その「お呪い」は効かないのだ。

 

日本の債務過多と酷似

習近平氏は、日に日に衰えを見せている中国経済にムチをいれることができないという根本的な悩みを抱えている。昨年一年、金融を緩和したが大半が不動産融資に回ってしまい、実物投資(設備投資など)を刺激することにならなかった。最早、これ以上の金融緩和が無益と知らされ、今年1月1日から住宅ローンと不動産開発融資に制限を設けたほどだ。

 


中国経済最大のリスクは、こうして金融面に現れている。過剰債務によって支払い不能というデフォルトの多発に神経を使わざるを得ない状況に追込まれている。まさに、2000年代の日本経済が直面した苦悩である。小泉内閣が、金融機関の不良債権処理に全力を挙げていた時代を、ぜひ思い起こして欲しいのである。現在の中国は、この状況に遭遇している。中国の苦しみが、日本には肌で伝わってくるであろう。(つづく)