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韓国の次期大統領選は、来年3月9日に迎える。最新世論調査では、尹錫悦(ユン・ソンニョル)前検察総長が2カ月連続1位の座を守った。李在明(イ・ジェミョン)京畿道(キョンギド)知事は2位を占めている。尹氏と李知事の両氏の争いの構図が固まってきた感じである。

世論調査会社リアルメーターが4月26~30日、全国18歳以上2578人を対象に次期大統領候補選好度を質問した結果、尹氏は32%となった。先月34.4%より2.4%ポイント落ちたが、依然として30%を維持しており誤差範囲を超えて1位だ。2位は李知事(23.8%)、3位は共に民主党の李洛淵(イ・ナギョン)前代表(9%)だった。李前代表は2.9%ポイント下落して調査で初めて一桁の支持率である。

 


尹錫悦前検察総長は、依然として去就を明らかにしていない。沈黙を守ったままである。ただ、経済や外交の勉強を重ねていると伝えられており、大統領選立候補への意思を固めつつあると見られる。「反骨の士」であるだけに、保守派や中道派からの支持は固いと見られる。

 

この大統領候補世論調査では「番外編」として、洪準杓(ホン・ジュンピョ)無所属議員(5%)、呉世勲(オ・セフン)ソウル市長(4.5%)、安哲秀(アン・チョルス)国民の党代表(4.1%)、丁世均(チョン・セギュン)前首相(4%)らの名前が出ている。「番外編」トップの洪準杓議員が、次のような爆弾発言をした。

 

『中央日報』(5月15日付)は、「洪準杓議員『李在明知事が大統領になれば文大統領は1年以内に監獄へ』」と題する記事を掲載した。

 

洪準杓無所属議員が、「李在明(イ・ジェミョン)京畿道(キョンギド)知事が大統領になれば、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は1年内に監獄に行く可能性がある」と主張した。洪議員は14日、選挙区の大邱(テグ)の事務室で開かれた記者懇談会でこのように述べたもの。

(1)「取材陣の、「誰が与党の大統領候補になると思うか」という質問に対し、洪議員は「いま与党の課題は、文大統領が退任した後に彼の安全を守ることができる候補を見つけることだ」とし、「文大統領の立場では(与党大統領候補として)李知事は絶対に違う。最も危険な候補」と強調した。続いて「文大統領は李知事以外に信頼できる人をどうつくるかを考えているはず」とし「李知事が大統領になれば文大統領は1年以内に監獄に行く可能性がある。誰になるかは分からないが、これだけは自信を持って言える」と話した」

 

李在明氏は、首都圏の京畿道城南市長、京畿道知事と自治体の首長を歴任したが、中央政界での活動経験がない。その李在明氏にとって、頼りになる全国組織「民主平和広場」が5月12日に発足した。注目すべきは、民主党の重鎮である李海瓚(イ・ヘチャン)元代表が援軍に回ったことである。李在明氏は、反文在寅派である。その後援に李海瓚元代表が就いたのは、文在寅派には脅威である。

 

文在寅氏と李在明氏は、2017年大統領選の党内選挙で戦った間である。李在明氏が、討論会で文氏を舌鋒鋭く攻撃したことから、文氏の支持グループは李在明氏への警戒感を強めてきた。李在明氏の陣営は、李海瓚氏の外に文氏の同志である盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権で起用された人材の支援を受けることになり、こうした警戒感に和らぐ効果を期待しているという。

 

与党内部の流れを見ると、文政権の支持率が急落している危機感から、「脱文支持」の動きを強めそうである。李在明氏が次期大統領選で当選すれば、文大統領をヤリ玉に上げて、「ニュー進歩派」を印象づける可能性もありうるであろう。文大統領としては、頭の痛い話になってきた。

 

尹錫悦前検察総長が立候補すれば、保守派と中道派を集めて当選の可能性が高まる。尹氏は、検察総長として文政権の不正捜査を指揮したが、文大統領によってことごとく阻止された。この事実の一端でも暴露すれば、文大統領が逃げ込む場所はなくなる。刑事訴追されれば、待ったなしの刑務所行きとなろう。文大統領としては、大統領選まで気の抜けない日々が続くだろう。

 

(2)「一方、国民の力への復党を繰り返し要求している洪議員は、これに関し「復党問題を論争にするのは国民の力の一部の派閥の中傷にすぎない」とし「今は党に戻る時」と述べた。洪議員は、「尹錫悦前検察総長には哀願し、安哲秀(アン・チョルス)国民の党代表にも合併しようという状況の中で、同じ家族(洪議員)を復党させないというのは、派閥論理でしか説明できない」とし、「私が復党できなければ、自分の派閥のボスが大統領候補になると思っているのか」と指摘した」

 

洪準杓無所属議員は、先の大統領選で文在寅氏に次ぐ得票を得た人物である。この余勢を駆って、自由韓国党(現在の「国民の力」)の党代表に選出された。就任演説で「韓国の保守右派を再建する。一刀のもとに患部を取り除くような大胆な革新が必要だ」と述べた。さらに、「文在寅政権は自由韓国党に『朴槿恵政党』のレッテルを張り、保守勢力を滅ぼそうとしている」と主張し、統一地方選にも備えるために朴槿恵前大統領を自由韓国党から除名したと発表した。これには党内の親朴派が反発して、現在に至っている。

 


その後、
洪準杓氏は自由韓国党が2018年の統一地方選挙で惨敗し、党代表を引責辞任

した。先の総選挙では無所属で立候補し、与党候補や最大野党候補を破って当選した。こういうしこりが、今なお尾を引いており、最大野党「国民の力」への復党が適わずにいる。

 

韓国政界は複雑である。感情的なもつれが大きな要因になっているからだ。日本の保守派の場合、自民党を脱党した人間でもその後に復党している。韓国は、「感情8割・理性2割」の国である。一度もつれた糸は、再び元には戻らないのかも知れない。