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21日の米韓首脳会談を目前にして、米韓で綱引きが行われている。韓国は、ワクチン入手を目標に掲げている。米国は、クアッド(日米豪印)への参加を重視している。こうして、ワクチンとクアッドが日韓のテーブルに載せられている。

 

韓国が避けて通れないのは、クアッド参加問題である。「正規会員」か、分科会に参加するだけの「準会員」に止まるかの瀬戸際である。韓国は、中国の脅迫を恐れてせいぜい「準会員」程度でお茶を濁す戦術だが、どうなるか。

 

『日本経済新聞 電子版』(5月17日付)は、「日米豪印と韓国の連携協議へ、21日に米韓首脳会談」と題する記事を掲載した。

 

米国と韓国は21日にワシントンで開く米韓首脳会談に向け、議題などを巡る水面下の協議を続けている。日米豪印4カ国の枠組み「クアッド」を巡っては、韓国との連携が協議される可能性が高まっている。米国は対中政策で韓国側に連携強化を求めているが、韓国側は中国の猛反発を呼ばない程度の協力にとどめたい考えだ。

 

(1)「クアッドは、自由や民主主義の価値観を基盤とする枠組みで、軍事や経済で台頭する中国への対抗が念頭にある。3月に開いた4カ国首脳によるオンライン協議では、ワクチンと先端技術、気候変動に関する3つの作業部会を設置すると決めた。文在寅(ムン・ジェイン)政権内ではクアッドへの参加は見送る一方で、この作業部会に加わる案が浮上している。外交関係者によるとすでに米国は韓国などの関係国に参加を促している」

 

韓国は、クアッドの正規会員でなく分科会員になって、技術的メリットだけを得たいという、欲の深い考えである。これによって、ワクチンも手に入れるという「ダブルメリット」を狙っている。米国が、これをどう評価するかである。

 


(2)「米国は韓国にとって唯一の同盟国だが、文政権は対立を深める米中のいずれにもくみしない外交を模索している。クアッドは対中包囲網の性格が強いとみて「参加要請を受けたことはない」と距離を置いてきた。ただ、米国が協力を重ねて求めたことで、何らかの関与が必要だとの考えに傾いているようだ。文氏はクアッドに一定程度協力する見返りに、バイデン大統領から米朝交渉の早期再開に前向きな言質を引き出す戦略を描く。まず「朝鮮半島の非核化」を目標に掲げた2018年のシンガポール共同声明をバイデン政権が継承していることを確認したい考え。北朝鮮が非核化に向けた措置をとれば、経済制裁の緩和を含む見返りを与える「段階的非核化」で一致したい思惑もある」

 

韓国は、クアッドの準会員になって、北朝鮮政策で北への制裁緩和を狙っている。こういう韓国の姿勢をみると、外交原則である「ギブ・アンド・テイク」を離れて、「テイク・アンド・テイク」を狙っているとしか思えない。日韓関係と同じで、韓国の貪欲さが目立つのだ。

 

(3)「米国から韓国へのワクチンの供給支援も首脳会談の議題の一つになる。文氏はワクチン確保の遅れを巡って批判されており、9月末までに対象者全員への1回目接種を終える計画は実行が危ぶまれている。米国はクアッドの参加国へのワクチン供給を優先する姿勢を示す。韓国のクアッドへの姿勢を見極めた上で、ワクチン支援の規模を判断する方針だ。協力を受けられるかは来春の韓国大統領選の行方も左右するだけに、文氏は結果としてクアッドへの協力を強いられるとの見方も出ている」

 

米国は、韓国のクアッドへの姿勢を見極める。つまり、「正会員」になるかに注目している。

 

(4)「韓国側は、米国が求める半導体の供給網(サプライチェーン)でも協調姿勢を示す。文氏にはサムスン電子やSKハイニックスの経営幹部が同行する。首脳会談前日の20日に米商務省の会合に出席し、安定供給策や投資計画を説明する見通しだ」

 

韓国政府は、自ら腹の痛まない企業の設備投資を煙幕に使う戦術である。米国は、この目眩ましにどう反応するか。

 

(5)「韓国がクアッドに接近した場合は、中国の反応が焦点になる。王毅(ワン・イー)国務委員兼外相はクアッドを「インド太平洋版の新『北大西洋条約機構(NATO)』」と呼び、警戒している。朴槿恵(パク・クネ)前政権が16年に米国の地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)の配備を決めた際には、中国は韓国への団体旅行を制限するなど厳しい報復措置を繰り出した経緯がある」

 

韓国は、クアッドの正規会員になって中国から報復を受けたら、米国が即刻「代理戦争」を買って出るぐらいの対応しなければ安心できないのだろう。そういう腹を割った話合いができるか。ここが、分岐点である。