a0960_008407_m
   

韓国は、これまで「安保は米国、経済は中国」という二本足の外交姿勢を取ってきた。今回の米韓首脳会談によって、「経済も米国」へと切り変えた。米国の主導するサプライチェーンの充実路線に乗ったからである。米国で、半導体とバッテリーで約400億ドルの投資方針を打ち出したのだ。

 

韓国は、こうして「安保も経済も米国」という大きな流れに乗ったが、中国への「怯え」は依然として続いている。できるだけ中国を刺激したくないという臆病な態度に変わりはなさそうだ。この点が、日本と大きく異なる点である。日本は、中国による台湾危機と連動する尖閣諸島への脅威という現実問題を抱えている。対中姿勢では、韓国と異なる「現実路線」を要求されている。

 

日本の危機は、同時に米国の危機でもある。日米が、対中戦略で一体化するのは当然のことである。韓国から見れば羨ましく見えるようだが、日米と韓国の危機感の間にはギャップがあるだけに、これをどう埋めるかが今後の課題になる。

 


『朝鮮日報』(5月25日付)は、「『ひとつの体』になった日米、足だけかけた韓国 本番は韓日米首脳会議」と題する記事を掲載した。

 

(1)「米国のジョー・バイデン大統領が描く北東アジア地域の核心戦略は、韓日米3国協力を土台としている。特に、日本は外交・安保・経済などの分野で中国を圧迫するための米国の核心パートナーに該当し、韓国はバッテリー・半導体など新技術関連サプライチェーン(供給網)構築のために最も適した協力対象だと評価されている。韓日米協力は単に「同盟強化」という側面の他にも、バイデン政府が全力を傾けている対中牽制(けんせい)と新技術サプライチェーン構築の鍵を握る核心的な結びつきだという意味だ」

日米韓三ヶ国が結束して中国へ立ち向かう場合、日韓の間にはギャップが存在する。日本は、外交・安保・経済などの分野で中国へ対抗するための米国の核心パートナーである。韓国はサプライチェーンという兵站部の担当に特化しそうである。ただ、日米韓三ヶ国の結束を乱してはならない。

 


(2)「バイデン政府の優先順位を反映するように、日米および韓米首脳会談の共同声明には新技術サプライチェーンを構築するための協力意志が入った。日米首脳は、共同声明を通じて半導体・5Gなどの分野のサプライチェーン構築に向けた協力を「安全及び繁栄に不可欠」と表現して両国間の協力を明示した。韓米も、共同声明にサプライチェーンの協力に関連して「新たな紐帯の形成を約束した」という内容を入れた。サプライチェーンの構築を目標に、一致した立場を打ち出す韓日米3国が「ワンチーム」を形成する場合、韓米および日米間の二国間協力以上の効果を発揮することができるという期待も出ている」

 

韓国の専門家は、半導体・バッテリー分野の日米韓三ヶ国の協力が実現すれば、それ自体でも大きなシナジーを発揮するとみている。それはそうだろう。中国の羨むドリーム・ティームの結成である。

 

(3)「今回の韓米首脳会談では、中国が鋭敏に反応している台湾海峡と南シナ海問題に対する共同声明が出され、韓国政府の「中国傾斜論」をある程度払拭させる契機となった。ただし、日米首脳が共同声明を通じて直接中国を明示して牽制(けんせい)基調を鮮明にしている。韓米共同声明には、「中国」という単語は入っていない。国際社会の批判が続いている新疆ウイグル族人権問題に対しても、韓米首脳は共同声明に関連内容を入れなかった。バイデン政府の対中圧迫に一部参加しながらも、中国を刺激しないための措置と解説される」

 

韓国は、38度線を境に中朝連合軍を抱えている。それは、日米の経験しないシビアな事態である。ただ、日米韓三ヶ国の強力布陣を結成すれば、無謀な中朝といえども簡単に手を出せなくなる現実を忘れてはならない。韓国は、中朝に隙を見せてはならないのだ。第二次世界大戦後、北欧諸国がソ連軍の侵略に対抗すべく「ハリネズミ戦略」を展開した実例を見倣うことである。あのソ連軍が、手出しできなかったのだ。

 

(4)「韓日米協力の観点からみると、対中牽制に関連し、むしろ米国よりも積極的に立ち向かう日本と、絶えず余地を残さなければならない韓国間の立場の違いは潜在的葛藤要因になり得るという分析もある。特に、日米が韓国に対してより積極的な対中牽制の動きを要求する場合、異見が浮き彫りになる可能性が高い」

 

日本は、中国を恐れたことがない。中国の裏表を研究し尽くしているからだ。中国は、張り子の虎である。韓国は、今こそ冷戦時代の北欧諸国の対ソ連軍対策に見せた姿勢を学ぶべきだ。北欧はNATOに加盟して、米軍事力の傘に入っていたのである。

 

北朝鮮問題は、同じ朝鮮民族という独特の感情問題を抱える。ただ、政治体制が全くことなる「金ファミリー」の統治下である。この一族が、生き延びることを手助けする形の南北交流に、韓国国民は拒否感を持っている。特に、若者層に多い。文政権は、この流れを無視できないのだ。

 


(5)「韓国外大のカン・ジュンヨン国際地域研究センター長は、「バイデン政府の希望通り、韓日米3国が一丸となって一糸乱れず中国を制御するための動きに参加する状況は現実化しにくい」とし、「日本はより強力な対中圧迫を要求できるかもしれないが、文在寅(ムン・ジェイン)政府は『対中圧迫』というしくみで韓日米が強くまとまる状況に呼応しにくく、バイデン大統領もこれを十分に認知していると考える」と話した。


韓国は、中国を宗主国にしてきたので心理的に恐怖の的である。この韓国に対して、「中国を恐れるな、毅然と対応せよ」と言っても馬に念仏かも知れない。ただ最低限、日米韓三ヶ国の隊列を乱すような振る舞いを抑制して欲しことだ。兵站部隊に徹して貰って結構だろう。