a0003_ki_0012_m
   


中国は、これまで武漢が新型コロナウイルスの発症地であることを頑なに否定してきた。世界中から非難と賠償を求められるからだ。そこで、「知らぬ、存ぜず」で逃げ切る姿勢に徹してきたもの。米国バイデン大統領が5月26日、米情報当局に真相究明を命じて、事態はにわかに動き始めた。

 

この裏には、米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)』(5月24日付)で、「武漢ウイルス研究所職員、19年秋に体調不良で通院か 米報告書」と題するスクープがあった。次のように報じている。

 

「中国の武漢ウイルス研究所(WIV)に所属する3人の研究員が2019年11月に、病院での治療が必要になるほどの体調不良を訴えていたことが分かった。これまで公表されていなかった米情報機関の報告書から明らかになった。新型コロナウイルスが同研究所から流出した可能性についてより詳細な調査を求める声が高まる可能性もある」

 


この報道を受けて、バイデン大統領が真相究明を命じた。WSJは、「
武漢研ウイルス流出説、信頼性高まる」(27日付)と題する社説を掲載した。

 

(1)「2020年2月6日、華南理工大学の肖波涛教授(分子生物学)は、この(武漢)ウイルスについて「恐らく武漢の研究所が発生源だろう」と結論付けた論文を発表した。しかし中国政府はコロナの発生源に関する研究を厳しく制限しており、同教授は論文を撤回した。中国共産党はその後、攻勢に転じた。中国の駐米大使は、研究所からウイルスが流出したとの説は「全くばかげている」と主張。こうした説は「人種差別や外国人への嫌悪」をあおりかねないと述べた」

 

中国政府は、昨年2月の中国人学者による「武漢起源説」を撤回させて、米国を感染源とする「インチキ説」を外交部広報官のツイッターで世界へ発信させる恥ずべき行為に出た。

 

(2)「発生源の精査は1年前に開始されるべきものだった。しかし、党派色の強いメディアは公平な議論を妨げた。多くの「専門家たち」は政治的打算で動き、科学に従うよりも集団思考の犠牲となった。単に点数表を付けているのではない。新型コロナの武漢起源説は、次のパンデミックを阻止し、危険な研究施設をより適切に運営し、人類を守るすべを理解する上で極めて重要である。世界は依然として誠実で開かれた調査を必要としている」

 

武漢ウイルス研究所員3人は2019年11月、原因不明の病気で入院している事実が判明している。これは、武漢発症を疑わせるに十分なデータであった。さらに、武漢ウイルス研究所で新型コロナ発生前に科学者たちがきちんとした防護具のないまま、素手でコウモリを扱っていてかまれる様子が含まれる国営放送局・中国中央テレビの映像の存在が確認されている。

 


『朝鮮日報』(6月3日付)は、「『コウモリが手袋かんで破れた』武漢研究所が削除した映像あった」と題する記事を掲載した。

 

(3)「米紙『ニューヨーク・ポスト』(5月28付)H、武漢ウイルス研究所(WIV)の研究者が手袋やマスクなどの保護具を着用せずにコウモリとその排せつ物を扱う様子が映る中国中央テレビの映像を公開した。2017年12月29日に中国で放映されたこの映像で、半袖・半ズボン姿の研究者たちは、手袋以外は保護具を着用しないまま、感染性が高いコウモリの排せつ物を採取した」

 

WIVの研究者が、保護具を用いないで感染性の高いコウモリの排せつ物を扱っていた、と指摘している。この点は、WIVに研究資金を提供している米国側も認識しており当時、注意を与えたと報じられた。

 

(4)「同研究室で一部の研究者は、手袋を着用しないままコウモリの研究サンプルを受け渡しした。研究室の中で一般的な衣類を着て、頭に保護具をつけていない姿も映像にある。この映像で、ある科学者は「コウモリが手袋をかみ切って私をかんだ」「針でジャブ(jab)をもらった気分だ」と言っている。この映像にはコウモリにかまれた部分がひどく腫れている写真も登場する」

 

映像には、コウモリに噛まれて腫れている部分も出てくるという。こうなると、WIVが感染源であることを疑わせるに十分な資料と言えそうだ。米情報当局は、どのような結果をもたらすか予断はできない。だが「武漢クロ説」となれば、中国の立場は世界で完全に孤立する。

 


『フィナンシャルタイムズ』(6月1日付)は、「
コロナ起源巡る新リスク」と題する記事を掲載した。

 

(5)「バイデン氏は、武漢ウイルス研究所からの流出説を巡り米情報機関で意見が割れている点を率直に認めた。同氏は流出説が真実だと立証された場合、その波紋が招く事態を深く憂慮しているかもしれない。バイデン政権がいくら阻止しようとも、米裁判所では中国に巨額の賠償金を求める訴訟が相次ぐだろう。その場合、バイデン政権の中国と対立するところでは対立しても協力できるところはするという微妙なバランスを維持することは極めて難しくなるからだ」

 

米情報機関が、武漢ウイルス研究所を発生源と認めれば、米国裁判所に賠償金請求が殺到すると見られる。以前の予測では、米国だけで2兆ドルという試算もあった。中国は支払い能力を超えているので、大きな問題が発生する。

 


(6)「中国が、新型コロナの発生源を巡り自らが世界に責められていると再び感じるに至れば、また強硬な姿勢で反撃に出てくるだろう。あるいは、世界を分断させようと画策してくる可能性は高い。パンデミックの発生源を解明しようとする動きは誰にも止められないし、必要なことだ。だが、それは大きな危険をはらんでいる」

 

中国は、コロナウイルスの発症地を厳重調査せよと主張した豪州に対して、常軌を逸した制裁を加えている。このことから推測できるのは、中国が世界を分断させる途方もないことを企む危険性を秘めている点だ。一種の「鎖国状態」をつくりだす事態が予想される。

 

次の記事もご参考に。

中国、「窮地」コロナ発生源、米英情報機関が揃って原因究明 武漢ウイルス研究所「焦点」

2021-05-31 

中国、「交換条件」ワクチン提供、中南米で台湾断交を迫る卑怯「米国が対抗し供給」

2021-05-21