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G7首脳会談は、6月11~13日まで開催されている。菅首相が連日、中国脅威の実態を首脳会談で説明し欧州諸国の首脳に理解を求めている。会議の合間には、バイデン米大統領と打ち合わせをするなど超多忙の日程である。これでは、暇つぶしにしかならない日韓首脳会談に時間を割くゆとりはないようだ。

 

今回のサミットの主役は、G7に招待されていない中国と言われている。昨年12月末には、EUと中国の包括的投資協定がようやく締結された。実に7カ年をかけて協議した難産の投資協定であった。それが、新疆ウイグル族をめぐるEUと中国の紛争で、「一夜」にして棚上げ事態になってしまった。中国にとっては大誤算である。

 

こうして、EUも中国脅威論に注意せざるを得なくなったが、地政学的に言ってアジアの受ける脅威とは別次元である。日本がアジア諸国に代わって説明しているところだ。

 


『日本経済新聞 電子版』(6月13日付)は、「菅首相、連日の中国名指し批判 サミットでG7結束促す」と題する記事を掲載した。

 

(1)「菅義偉首相は主要7カ国首脳会議(G7サミット)で中国について連日名指しで批判した。東・南シナ海での中国の活動や経済政策などを巡り、11、12両日の会議で取り上げた。13日も中国を巡る議論で発言する見通しだ。首相は2日目の12日午前の討議で「東・南シナ海における一方的な行動や人権状況、不公正な経済活動はG7の価値観とは相いれない」と中国への懸念を強調した。各国首脳にG7で連携して行動するよう求めた」

 

日本は、中国の軍事的な脅威を米国と並んで防止しなければならない重要な地政学的な位置にある。それだけに、中国の侵略行為を未然に食止める必要性は、外の国よりも格段に強い。太平洋戦争を経験している日本としては、あの未曾有の被害を絶対に繰返してはならないという決意が菅首相の発言の裏にあるはず。

 

(2)「同日午後のセッションでは、日本が提唱する「自由で開かれたインド太平洋」に関して説明した。中国の国際ルールに基づかない行動を抑止する狙いがある。G7と東南アジア諸国連合(ASEAN)の協力の重要性を説いた。経済・産業政策の側面からも中国を問題視した。開幕初日の11日の協議で「産業補助金をはじめとする市場歪曲的な措置、デジタル保護主義、重要技術の漏出といった経済面での諸課題はG7の価値観とは相いれない」と訴えた」

 

中国は、軍備増強のために産業補助金をばらまいている。全て「戦争準備」という狂った状況にある。これを防がなければ、世界覇権という中国の狙いから言って、欧州にも災難が及ぶはずである。

 


3)「首相は、何度も「G7の価値観」というキーワードを用いた。自由主義や民主主義といった価値を共有するG7と権威主義的な動きを強める中国を対比させる表現だ。中国への姿勢に違いがあるG7各国の結束を促す趣旨とみられる。米国は中国を「唯一の競争相手」と位置づける。日本は東シナ海をはさんで中国の脅威と向かい合う。一方で、ドイツやイタリアは経済関係で中国を重視してきた経緯がある」

 

ドイツやイタリアは、EUの中では対中国政策で融和的な面があった。だが、イタリアはすでに対中姿勢を変えている。一帯一路でイタリアに何らのメリットもないことが分かった結果だ。ドイツは、メルケル首相が今年9月に引退する。「緑の党」は、反中国姿勢を明確に打ち出しており、いつまでドイツが「親中」姿勢を続けられるか疑問視されている。

 

(4)「首相はバイデン米大統領と12日、断続的に協議した。G7の首脳宣言での対中抑止の文言の明記に向け緊密に連携していくと確かめた」

 

対中国問題では、日米が対抗主軸にならざるを得ない。それだけに、G7でも日米は密接に協力する立場にある。中国が「核心的利益」と位置づける台湾は、東アジアの安全保障の要である。中国は台湾へ武力による威嚇を繰り返している。この台湾を中国の侵攻からいかに守るか。それは、同時に尖閣諸島の防衛と深い関係を持っている。

 

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