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G7首脳会談が6月13日に終わった翌日、NATO(北大西洋条約機構 30ヶ国加盟)首脳会談は、中国を安保リスクに掲げた。ロシアのような敵対国の位置づけではないが、それに準ずるということである。

 

G7では、中国へ対して温度差があると報じられている。ドイツとフランスが、対中経済関係を重視して、他の5ヶ国とニュアンスの違いがあるというもの。だが、NATO首脳会談では、中国を安保リスクと規定する予定である。中国にとっては、芳しからざるニュースである。

 

『ロイター』(6月14日付)は、「NATO首脳会議、中国を安保リスクと初めて位置付けへ」と題する記事を掲載した。

 

北大西洋条約機構(NATO)はバイデン米大統領が出席する14日の首脳会議で、中国を安全保障上のリスクと初めて位置付ける見通しだ。

 


(1)「前日には主要7カ国首脳会議(G7サミット)が共同声明で、中国に対して新彊ウイグル自治区での人権尊重、香港の高度の自治を求めたほか、東・南シナ海での一方的措置に反対する姿勢を示した。台湾海峡の平和と安定についても強調し、問題の平和的解決を促した。複数の外交筋によると、NATO首脳会議の最終声明では中国を敵対国と表現しないものの、ロシアの軍事演習に参加するなど、NATOにとって「システミックな」挑戦になっているとして懸念を表明する見込み

 

NATOは、中国がロシアへ軍事演習などで接近していることから、危険な存在と見なし始めている。そこで、中国を危険な存在としてマークすることになったもの。日本や豪州は、NATO加盟国でないものの、密接な関係を維持している。

 

(2)「サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は記者団に対し、「(NATO)声明ではこれまでよりも確固とした形で中国に言及するだろう」と述べた。NATOのストルテンベルグ事務総長は14日、中国の経済的、政治的、軍事的な台頭に対応しなければならないとし、首脳会議の最終声明は新たな対中戦略を強固にするものになると述べた。記者団に対し「中国はわれわれに近づいている。サイバー空間でもアフリカでも中国を目にするが、われわれ自身の不可欠なインフラにも中国は大規模に投資している」と指摘。「中国がわれわれの価値観を共有していないことをわれわれは知っている。われわれは同盟でともに対処する必要がある」と述べた。また、中国は敵国ではないとしつつ、安全保障上の挑戦になっていると付け加えた」

 

下線のようにNATO事務総長が、首脳会議の最終声明は新たな対中戦略を強固にするものになると予告している。踏込んだ中国警戒論となろう。

 


『ロイター』(6月14日付)は、「NATO、『野心的な』安保政策の整備着手へー米ホワイトハウス」と題する記事を掲載した。

 

米ホワイトハウスは13日、北大西洋条約機構(NATO)首脳会議が14日に開かれるのを前に、NATOが2030年以降の安全保障対策継続に向け首脳らが「野心的な」取り組みを始めると明らかにした。

 

(3)「首脳会議では、加盟30カ国が「ロシアの攻撃的政策と行動、中国がわれわれの集団安全保障、繁栄、価値観にもたらす課題、テロリズム、サイバー脅威、気候変動などの国境を越えた脅威など、進化する戦略環境へのアプローチ」を取るとするNATOの新たな「戦略概念」で合意する予定。ホワイトハウスは、新戦略概念は22年の首脳会議での採択に向け準備されると指摘。さらに「加盟国の指導者は、NATOが30年以降にも市民に安全保障を提供し続けることを確実にするため、野心的な取り組みを始める」と述べた」

 

下線部分が、具体的に何を指すのか不明である。ただ、軍事面だけの脅威でなく、「価値観にもたらす課題、テロリズム、サイバー脅威、気候変動などの国境を越えた脅威など」と広範囲に守備範囲を固めていることだ。中国の気候変動=脱炭素の動きは、極めて緩慢である。2030年まで、二酸化炭素排出量が増え続けると予告しているほど。こういう経済優先=軍事優先姿勢を阻止しなければならない。中国は、軍拡優先の経済運営を平然として続ける意思である。

 


(4)「各国首脳らは、「重要インフラに対する破壊的なランサムウエア(身代金要求型ウイルス)攻撃を含む、一段と頻発する深刻な脅威に対する耐性」の確保に向け調整を強化するという新たな「サイバー防衛政策」も承認する方針。ホワイトハウスは、各国が次世代通信ネットワークの導入に当たり、信頼できるサービスのプロバイダーを採用する意向とも述べた

 

下線部は、ファーウェイの「5G」導入阻止を意味している。米国は、トランプ政権時代からファーウェイ阻止を掲げている。NATO加盟国からファーウェイ製品を追放する意向であろう。