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中国の「戦狼外交」は、確実に自国企業の対外直接投資を減少させている。「お行儀の悪い」中国企業の直接投資を受入れようとする国が減っているのだ。とりわけ、先進国での中国企業への警戒感が強い。スパイ行為を警戒しているのであろう。

 

昨年のEU(欧州連合)と英国では、中国企業の直接投資が45%も減った。2016~19年までの累計では、すでに約30%の減少である。いかに中国企業が不人気であるかを示している。ちなみに、米国の2016~19年までの累計では約48%の減少である。欧米での業種別動向では、不動産、娯楽・観光、テクノロジーでの投資減少が目立っている。

 

『大紀元』(6月21日付)は、「中国の対EU投資、10年ぶりの低水準 要因はパンデミックのみならず『政治関係の悪化』も―報告」と題する記事を掲載した。

 

中国からEU27加盟国および英国への投資は、2020年に10年ぶりの低水準に落ち込んだ。専門家の分析によると、要因は 「政治的な関係の悪化 」で、今後も減少傾向が続くとみている。調査会社ロジウム・グループとドイツのシンクタンク「メルカトル中国研究所(MERICS)」の報告で明らかになった。

 

(1)「両組織による共同報告書「Chinese FDI in Europe: 2020 Update(欧州における中国の海外直接投資、2020年更新版)」によると、中国から欧州への海外直接投(FDI)は、2019年の139億ドルから77億ドルに減少し、10年ぶりの低水準となった。新型ウイルスによる渡航規制や、中国国内の経済状況も要因だが、「パンデミックが唯一の原因ではない」と報告書は指摘する。投資の低下は、欧州諸国の人々にとって中国からEUに対する「報復的な制裁措置」は受け入れ難いとの拒否感が強まっていること、また、中国当局の海外投資規制や、EUのFDI審査の強化なども理由に並べた」

 

EUが、中国への警戒姿勢を強めていることでFDIが減っている。背景は、政治的な理由である。

 

(2)「EUは3月、ウイグルのイスラム教徒に対する人権侵害に関与したとみられる4人の中国政府関係者に制裁を科した。その数日後、中国共産党政権は英国側の9人の個人と4つの団体への報復制裁を発表した。また、紛争中の南シナ海や台湾をめぐるEUの関心の高まりも、西側諸国と中国の政治的緊張を高める要因となっている。報告書は、中国による対米投資が激減したのは「FDI審査ではなく、政治的な関係の悪化によるもの」と分析している。この前例から、中国による対EUや英国投資も同様に減少に傾くと見ている」

 

中国とEUが昨年12月末、包括投資協定で7年越しの交渉が署名にまでこぎつけた。だが3月に、中国によるEU側への報復措置で批准に必要な欧州議会の審議が棚上げになった。署名から2年以内に批准されなければ「失効」する。中国にとっては、大きな代償を払わされている。

 


(3)「ウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長は6月15日、EUと中国を隔てる主な問題は人権問題であり、中国はEUにとって「ライバル」であり、「経済的に強力な競争相手」だと述べた。報告によると、中国の対EU総投資額の50%以上はインフラ、ICT、電子装置が上位3分野を占める。

 

ライエン欧州委員会委員長は、人権問題が対中国との争点であることを認めている。この問題が解決しない限り、包括的投資協定の批准手続きを進めないというニュアンスである。

 

(4)「ライエン委員長によれば、EUは最先端技術を確保して国家安全保障上の脅威に取り組み、投資審査のプロセスを強化している。「機密分野の取引は審査され、ブロックされる可能性が高くなる」と語った。また、中国企業による買収やM&Aは、2016年以降、毎年減少している。2020年には13年ぶりの低水準に縮小し、同年までに完了した案件の総額でみれば、前年比45%減の約400億ドルとなったことがわかった」

 

中国企業による買収やM&Aは2016年以降、毎年減少している。これによって、中国への技術移転件数が減るわけだ。EUが、最先端技術を守り国家安全保障上の脅威に取り組んでいる結果である。

 

中国は、EUから閉出された。新技術導入で、大きな痛手は必至である。戦狼外交のもたらす高いコストを払わされているのだ。