テイカカズラ
   


中印関係の険悪化を象徴するニュースが伝わってきた。インドのモディ首相がチベットの精神的指導者であるダライ・ラマに直接電話をかけて誕生日を祝ったもの。ダライ・ラマは1959年インド北部にチベット亡命政府を樹立、中国からの独立運動を導いている最高指導者である。

 

インド政府は、これまで中印関係を考慮して、ダライ・ラマとの接触を避けてきた。ところが今回、モディ首相自らが電話して祝意を伝え、この事実を公開した。中印関係が、最悪事態にあることを改めて示している。トニー・ブリンケン米国務長官も、声明を通じて祝意を表した。

 


『中央日報』(7月8日付)は、「ダライ・ラマ誕生日を公開祝賀、習主席に一発食らわした印モディ首相」と題する記事を掲載した。

 

7月6日(現地時間)、印メディア『エコノミック・タイムズ』は、「モディ首相が中国と紛争中にもかかわらず、ダライ・ラマに電話をかけて彼の86歳の誕生日を祝った」とし「異例」と伝えた。この日、モディ首相はツイッターにも「ダライ・ラマの誕生日を祝うために彼と電話で話をした」とし「彼が元気に長生きできるよう祈っている」とコメントした。ダライ・ラマは1959年インド北部にチベット亡命政府をたてて中国からの独立運動を導いている。

 

(1)「この間、モディ政府は2019年まで中国との関係を考慮してチベット亡命政府とは距離を置いていた。これに先立ち、チベット亡命政府が2018年亡命60周年事前記念行事を大々的に進めようとした時もインド政府は難しい表情だった。ところが今回はモディ首相がダライ・ラマに直接電話をかけて話をし、また、祝賀事実を公開した。モディ首相が中国に「一発」食らわせたのも同然だという反応が外交界から出ている」

 

インドが、中国の敵であるダライ・ラマへ電話して祝意を伝える挙に出た。モディ首相は、インド太平洋戦略における「クアッド」(日米豪印)というつながりをバックに、中国へ厳しい姿勢を示した形である。

 

(2)「AP通信は、「モディ首相が2014年就任後、ダライ・ラマと話をしたことを公開的に確認したのは今回が初めて」と説明した。ジャワハルラル・ネール大学のスリカント・コンダパッリ教授(中国学)もロイター通信とのインタビューで「昨年までは政党の人さえ(ダライ・ラマの誕生日を)公開的に祝うことが許されなかった」と話した」

 

インド政府は、ダライ・ラマとの関係強化で中国へ妥協しない強硬姿勢を見せている。

 

(3)「昨年5月パンゴン湖乱闘事件、1カ月後の6月にインド軍と中国軍からそれぞれ20人と4人の死者を出したガルワン渓谷「棍棒衝突」など、中印間の国境衝突はその後、新型コロナウイルス感染症(新型肺炎)事態と冬季の寒さなどで小康状態だった。しかし、インド現地のタイムズ・オブ・インディアは「天候が暖かくなり、中国政府が今年1万5000人水準だった駐留兵力を5万人に増やしたことに伴い、インド軍も5万人の兵力を急派した」と報じた。モディ首相の異例の行動にインド現地メディアも「今回の通話事実の公開は中国からの強い反発はもちろん、境界隣接地域における両者の緊張感を誘発している」と伝えた」

 

中印国境をめぐる紛争は、緩和化に向かうどころか悪化している。昨年6月夜半、中国軍がインド軍を襲った事件は、インド側に強い怒りと警戒心をもたらしている。インドが、クアッドへ参加したきっかけは、この中国による夜襲事件にあった。

 


(4)「中国政府はダライ・ラマを「祖国分裂活動家」と規定し、これに対する言及そのものに敏感に反応してきた。1959年、中国政府はチベット地域に対する一国二制度を終わらせて直接統治を始めたが、長く「祭政一致」(宗教と政治的権力が分立しない)の伝統を守ってきたチベット人にはダライ・ラマが今も精神的柱の役割を果たしている。1959年3月、チベット人は中国政府の宗教弾圧に対抗して2万人余りが参加した大規模武装デモを起こして鎮圧された。その後ダライ・ラマはインド北部ダラムサラにチベット亡命政府の拠点を置いて非暴力独立運動を率いてきた」

 

中国は、ダライ・ラマに強い圧力を加えている。中国が、多民族の宗教にまで干渉しているのは、新疆ウイグル族への弾圧と同じ理由である。



(5)「チベット人は、ダライ・ラマが「観世音菩薩」の化身であり、死なずに生まれ変わり後継者の身体を探して果てしなく生まれ変わると信じている。現在のダライ・ラマ14世は先立って「90歳になったら生まれ変わるかを決める」と明らかにした。中国政府は2010年、外信記者に「ダライ・ラマの後継者選びには中国中央政府の承認が必ずなければならない」と釘をさした状況だ。だが、今年86歳を迎えたダライ・ラマが後継者を選んで中国の承認を素直に受け入れる可能性は高くない」

 

ダライ・ラマは、チベット信仰の象徴である。インド政府が、このダライ・ラマとの関係強化に乗出したのは、中国への強い反撃を意味している。

(6)「誕生日を迎えたダライ・ラマはYouTube(ユーチューブ)の映像を通じて「私に本当の愛と尊敬、信頼を寄せてくれているすべての友人たちに心からの感謝を伝えたい」とし「死に至るまで非暴力と慈悲の心を掲げていくことを約束する」と話した。続いてインド政府に対して「私が難民となってインドに定着して以来、私はインドの自由と宗教間の調和を最大限に享受してきた」として感謝を伝えた」

ダライ・ラマは、これでインド政府からのさらに温かい支援を受けられることになった。同時に、中国の非人道的行為への批判の輪を広げることになった。