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中国は、強く対応する相手には慎重になると指摘されている。どうやら、これは本当である。4月16日の米中首脳会談の共同声明で「台湾問題」を取り上げて以来、中国軍機の台湾海峡侵犯回数が急激に減少している。

 

米国が、中国へ強く対応することを警戒している結果と推測されている。最近、米軍機が台湾へ着陸しても沈黙している理由だ。これまでの主張では、米軍機が台湾へ着陸した瞬間に中国軍の攻撃を覚悟せよと広言してきた。そういう中国の危険行為は、まったく見られないのである。米軍の総反撃を恐れ始めてきた証拠とされる。

 


『日本経済新聞』(7月27日付)は、「台湾周辺の中国軍機侵入、過去3カ月で半減」と題する記事を掲載した。

 

中国軍機による台湾への威嚇行為が大幅に減っている。日本経済新聞の調べによると、過去約3カ月間(100日間)で、台湾の防空識別圏(ADIZ)に侵入した中国軍機は延べ112機にとどまり、それ以前の3カ月間と比べて半分以下に減った。足元では中国が米国への過度な刺激を控えるようになっていると専門家らは分析する。

 

(1)「台湾の国防部(国防省)の発表からまとめた日本経済新聞の独自集計によると、中国軍機が台湾の防空識別圏に侵入した数は、4月16日の日米首脳会談を境に大きく減少した。会談後に出た共同声明では、52年ぶりに「台湾海峡の平和」が明記され、米国による台湾問題への関与の意思が明示された。そのため中国の反発も予想されたが、これまで抑制的な傾向が続いている」

 

中国軍機による台湾の防空識別圏への侵入は、4月16日の日米首脳会談を境に大きく減少した。この結果、中国の軍事的脅迫に対しては屈することなく強く対抗すべきであることを示唆している。韓国のように、中国の脅迫に安易に屈するのは「不可解」である。

 

(2)「これは同会談前の100日間と、会談後の100日間の侵入データを比較すると明らかだ。年明けの1月7日から4月16日までの100日間でみると、中国軍機が台湾の防空識別圏に侵入した日は、70日を数えた。10日間のうち7日間侵入するハイペースで、侵入した軍機も延べ248機を数えた。一方、4月17日から直近の7月25日までの過去100日間でみると、中国軍機が侵入した日数は30%減の49日と大きく減少した。軍機の延べ数も55%減の112機と大幅に減った」

 

4月16日を境に、その100日前と100日後では、中国軍機の侵入日数は30%減、侵入機数は延べ55%減である。明らかに、日米共同声明の影響による。

 

(3)「中国が、台湾問題で強気姿勢を打ち出してきた行動変化の背景に、複数の要因があると専門家らはみる。米中情勢に詳しい台湾の専門家の王智盛・中華亜太菁英交流協会秘書長は「バイデン政権発足から半年間、米中は探り合いの状態が続いたが、いまだどのように付き合えばいいのか模索している段階だ」と指摘する。そのため中国は、米国に対して最も刺激となる台湾への威嚇は控えるようになったと分析する

 

中国は、闇雲に強硬策を取ることのリスクを計算し始めている。

 


(4)「さらに来年2月の北京での冬季五輪まで残りわずかとなり、22年秋には5年に1度の党大会を控える。「習近平(シー・ジンピン)氏の3期目続投問題が党大会の焦点だ。中国は今後も強気なことを口では言うだろうが、習氏が再任されるまでは、実際の行動は控えめになるだろう」と分析する」

 

このパラグラフが、習氏の「立身出世」とからむことだ。米国を刺激し過ぎてはいけないが、刺激を中止する訳にもいかない。この微妙な段階で出た結論は、回数を減らすことであろう。

 

(5)「台湾国防部のシンクタンク、国防安全研究院の蘇紫雲所長も、中国軍機の侵入減少は、明らかに日米共同声明が影響していると指摘する。これ以上の台湾への威嚇は「米国への過度な刺激になるため、行動を抑制している」と分析する。「南シナ海での米国など各国による活動も、中国へのけん制に大きな役割を果たしている」とも語る。

 

中国は、ようやく包囲されていることを自覚するようになっている。

 


(6)「中国国防省も指摘するように、今年に入って米軍による南シナ海での活動は切れ目無く続いている。直近の7月12日も米駆逐艦「ベンフォールド」が西沙(英語名パラセル)諸島の近海を航行し、中国が猛反発した。2月にはフランスの攻撃型原子力潜水艦も南シナ海を航行している。英国も20」、新空母「クイーン・エリザベス」率いる打撃群が9月に日本に寄港すると発表した。南シナ海を通過する可能性がある。ドイツも今夏、フリゲート艦をアジアに派遣し南シナ海を航行させるとみられる」

 

中国は、米国の存在を軽く見てはいけない。主要国中で米国と関係が薄いのは、中国、ロシア程度であろう。他はすべて米国と同盟、準同盟という関係である。中国が逆立ちしても勝てる相手ではないのだ。中国が、誤解して軍事行動に移れば制裁を受けるのは必至である。

 


(7)「こうした圧力に、中国政府は連日、沿岸部で軍事演習を続け、力を誇示している。だが両岸問題に詳しい台湾の専門家は「演習の狙いは、中国が弱腰と見られないように、主に国民向けにアピールするためのものだ」と指摘する。台湾周辺や南シナ海を巡る今後の注目点の一つは、米国が計画するミサイル配備だ。中国の後手に回っていた米の配備の進捗次第では、周辺地域での軍事力のバランスは今後、大きく変化するためだ」。

 

米国が、地球上に張り巡らした軍事基地は80ヶ国に約800もある。これは、中国の軍事力をはるかにしのぐ点と面である。米国の覇権維持には、こういう軍事力が背景の一つにある。