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半導体生産で韓国2位

サムスン李氏は仮釈放

韓国経済は戦前の日本
米国は世界の王座奪回

インテル2ナノ半導体

 

米国は、米中対立に伴い半導体・レアアースなどのサプライチェーンづくりに乗出している。これによって、中国に依存せずに安定的供給を実現しようという狙いだ。このサプライチェーンづくりには、米国と同盟国が協力するので、日米韓三ヶ国が核になる。

 

米国の狙いは、国内の生産能力を引き上げるべく同盟国に協力を求めて、米国絶対優位の体制をつくることにある。さらに、日韓には中国と疎遠にさせるという副次効果を期待している。中国封じ込めを目指しているのだ。

 

半導体生産で韓国2位

米国のサプライチェーンづくりの核は、半導体生産である。米国は半導体の母国であるが、海外での生産が活発化して、国別の生産能力シェアではトップの座を失っている。最新データ(2019年12月)では、次のような結果となっている。

 

台湾  21.6%

韓国  20.9%

日本  16.0%

中国  13.9%

米国  12.8%

欧州   5.8%

他    9.0%

(米IC Insghts調べ)

 


上記のデータは、生産企業の国籍を問うていない。中国が、米国を上回る半導体生産能力を持っているのは、中国企業以外に他国資本の生産が加わっていることを示す。企業別の半導体売上高では、米インテルが世界首位(15.6%=2020年)である。だが、インテルは米国での生産を減らして他国へ進出して生産している以上、安全保障という観点から言えば、極めてリスキーな立場に置かれている。

 

米国バイデン政権が、半導体の国内生産ウエイトを上げて、「万一」の事態に備えようというのは今回のパンデミックが大きな教訓になった。その後の世界的な半導体不足に悩まされ、米国企業が軒並み影響を受けたことから、米国内での半導体増産にシフトすることになった。

 

台湾は、半導体生産で世界トップである。これは、TSMCという世界半導体のファウンドリー(半導体委託生産)企業が君臨している結果である。世界7位の米テキサス・インスツルメンツと密接な関係を持つ企業だ。台湾が、半導体生産で世界トップというのは、中国にとって羨望の的である。

 


中国企業による半導体生産は、試行錯誤の状態である。中国国営の半導体企業である紫光集団(精華大学主体)は、4回もデフォルト(不渡り)を出して目下、裁判に付せられているほど。中台で、半導体技術の差をこれほど露骨に見せつけているケースはないであろう。

 

中国が最近、台湾に対して頻りと軍事的な圧力を掛けている背景には、台湾市民に独立を諦めさせて、中国と一体化するように誘導しているとの説も出てきた。中国の狙いは、半導体技術をまんまと手に入れることだ。中国にとっての半導体は、超重要なテーマである。

 

サムスン李氏は仮釈放

米国は、中国による台湾半導体への狙いを見つめながら、台湾防衛と同時に、米国内での半導体増産に力点を置く構えである。これが、もたらす韓国経済への影響は計り知れないものがある。韓国からの半導体輸出は全輸出の20%程度である。このうち、米国と中国向けは、4対6程度で中国向けがやや多い状態だ。この米国向けの半導体輸出が将来、米国内の生産に置き換わる可能性と、米インテルが新半導体開発でサムスンを引離すという情報が駆け巡っている。この問題は、後で取り上げるが韓国経済にとって重大な局面転換を意味する。

 


これまで、「サムスンがこけたら韓国経済は終わり」が、定説になってきた。かつては、サムスンと現代自動車が、輸出の「二頭馬車」であった。その現代自が、以前の力を失っており、サムスンへの依存が一層、高まってきたからだ。その中で起った、世界の半導体地殻変動は、容赦なく韓国経済を巻き込むはずである。韓国にとって、反日で気勢を上げているゆとりはなくなる。

 

世界の半導体が大きく局面展開しそうな中で、サムスン総帥の李在鎔(イ・ジェヨン)サムスン電子副会長が、朴槿惠(パク・クネ)政権の「国政壟断」事件に連座して懲役2年6カ月で収監中ある。この状態では、サムスンの迅速な経営意思決定は不可能である。そこで、仮釈放議論が出てきたのである。当初の世論調査では、仮釈放反対論が多数であった。昨今では、賛成論が過半に達している。韓国経済の深刻さに気付いてきたのであろう。

 

何ごとも「世論しだい」の文政権は、ようやく8月15日の光復節に合せて仮釈放を与える決断をしたようである。

 

中央日報の取材によると、ソウル拘置所は李氏を含む光復節仮釈放の対象者リストを法務部に報告した。これによって、仮釈放審査委員会(審査委)が最終審査する。審査委は8月初め会議を開いて仮釈放対象者を決めるという。仮釈放の対象者になるためには、刑期の60%以上を満たすべきとされている。

 

李氏は、7月末で60%基準を満たす。これで、仮釈放基準は充足されるが、法的には拘禁状態であり臨時に解放されるゆえ、副会長職への復帰や海外出国などには制限があるという。それでも制約が大きく解かれるはずだ。経営判断で意見を述べるぐらいは可能であろう。

韓国経済は戦前の日本
李氏の仮釈放は、サムスンの置かれた状況からすれば自然のこととは言え、韓国経済の層が極めて薄いことに気付かざるを得ない。サムスン一社の輸出が、韓国経済を引っ張るのは正常でないからだ。韓国の産業構造が、極めて歪であることを示している。ここで、その問題点を整理しておきたい。(つづく)