a0960_008567_m
   

中国政府は、厳重な情報管理をしている。だが、企業の過剰債務でデフォルト危機の渦中にあることをデータは示唆している。金融機関は新規貸出に慎重になっていることで、おおよその状況判断が可能であるからだ。

 

GDPに対する新規貸し出しの伸びを示す「クレジット・インパルス」は、2020年11月の32%をピークに低下し、直近5月には25%と20年2月以来の低水準になった。これは、金融機関が貸出先の信用不安に伴い新規貸出を抑制している結果と見るべきだろう。金融機関側から言えば、確実な返済が見込めない先に貸出するはずがない。国有企業ですら、デフォルトに追込まれる時代である。

 

2019年に起きたデフォルトでは、総数に占める国有企業の割合が1割強だった。それが20年にはほぼ半分に急増し、21年も約4割を国有企業が占める状況である。国有企業の経営不振が目立っており、政府は万一の状況に対応する準備に着手した。

 


『日本経済新聞』(8月2日付)は、「中国、国有企業の支援基金」と題する記事を掲載した。

 

中国の中央政府や地方政府が国有企業を支援する基金を相次ぎ立ち上げている。計画中の基金も含めると資産規模は計2100億元(約3兆6000億円)を超す。低利・長期の資金を提供するなどし、経営改善につなげる。格付け会社は前向きに評価する一方、生産性の低い「ゾンビ企業」が延命する恐れもある。

 

(1)「天津市は6月、200億元の基金を設立した。「天津市の国有企業に対する市場の信用を高める」という。広西チワン族自治区も4月に専門家を招いて会議を開き、設立を検討中だ。いずれも支援の詳細な仕組みは明らかにしていないが、高利・短期の借入金を低利・長期の資金に置き換えたりして国有企業の資金繰りを改善する方針だ。きっかけは、2020年7月に中央政府が1000億元の信用保障基金を設立したこと。国務院(政府)国有資産監督管理委員会傘下の「中央企業」と呼ばれる国有企業31社と国有ファンドの中国国新控股が共同出資した。中央企業の経営は健全なことが多く、1000億元の基金設立は万一の事態に備えた予防的な色彩が強い」

 

中国企業の過剰債務は、設備投資にも悪影響を与えるなど、早期の改善が求められていた。だが、政府の成長優先政策で債務返済する時間的ゆとりも与えられず、現在の苦境に立ち至った。もはや限界点に達している。最後は、財政負担で債務軽減を行わなければならなくなったのだ。本来ならば、社会福祉などに充当すべき予算が流用されるのであろう。

 

(2)「国務院は3月、地方国有企業の債務リスクに関する指導意見を公表した。「中央企業の信用保障基金モデルを参考にするなどして、リスクを解消する」よう求めた。地方政府による基金設立はこの指導意見に沿ったものだ。基金には地元金融機関などからも出資を募り、財政悪化が進む地方政府の負担を軽減する。相次ぐ基金設立について、米格付け会社S&Pグローバルは6月28日、「投資家に安心感をもたらす」と前向きに評価するリポートを公表した」

 

地方国有企業のデフォルト救済負担は、地方政府にしわ寄せされるが、当の地方政府自体も難儀している。地方財政の歳入に占める土地売却益は、平均して約5割にも達して不健全極まりない。こういう状況で、地方国有企業の救済にはとても手が回らないであろう。万策尽きた状態へ陥っている感がする。

 


(3)「ただ、地元雇用の安定を重視した支援や救済が中心になれば、本業のもうけで元利払いすらできない「ゾンビ企業」を延命させ、国有企業の経営改革はさらに遅れかねない。透明性の高い支援ルール作りに加えて、S&Pは「長期的には、債務問題の解消には企業自身のビジネス競争力の向上が必要」としている。

 

地方の雇用状況は芳しいものでない。「ゾンビ化」した地方国有企業でも、雇用の受け皿になっている。そうなると、簡単に倒産を認める訳にもいかない切羽詰まった状況に追込まれている。成長率低下の中で行う企業再建は、容易ならざることだ。2000年代の日本企業が、いやというほど経験したところである。その事態が、これから中国で始まる。