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中国の治安・警察当局は、滴滴出行(ディディチューシン)に対して、サイバーセキュリティー対策や個人情報の収集について調べるため、オフィスを立ち入り調査した。これは、同社の株式がニューヨーク市場に上場した数日後に発表されたもので、これを嫌気して上場後間もない同社株は暴落した。

 

中国の証券規制当局が、一連の取り締まりを拡大したことで、米国市場に上場する中国企業の時価総額は4000億ドル(約44兆円)ほど値下がりしたという。これを受けて、米国の投資家は中国企業にリスクに見合うだけの投資価値があるかを見極めようとしている。SEC(米証券取引委員会)が、中国企業の新規上場について慎重姿勢をとるのは当然であろう。

 


『大紀元』(8月4日付)は、「米SEC、中国企業のIPO手続き停止 米中金融デカップリングに拍車」と題する記事を掲載した。

 

SECは7月30日、中国当局による民間企業への規制強化のリスクを投資家に開示する新たなガイダンスが作成されるまで、中国企業の米市場での新規株式公開(IPO)や有価証券の売却に関する登録手続きを停止すると発表した。専門家は、SECの方針で、米中間の「金融デカップリング(切り離し)」に拍車がかかったと指摘した。

 

(1)「背景には、7月初めに中国当局が米市場に上場した配車アプリ、滴滴出行に対して取り締まりを強化し始めたことがある。滴滴出行は6月30日に米市場でIPOを果たしたばかりだ。中国当局は、米国にデータが流出する恐れがあるとして、ネットワークの安全を審査すると公表し、敵滴出行の関連アプリをアプリストアから削除すると発表した。これを受けて、米市場では中国株の売り注文が集中した」

 

中国が、滴滴出行に対して「嫌がらせ」をしたのは、中国の情報漏洩を忌避したとされている。実は、この情報のなかに、中国経済構造の弱点が隠されているという見方がある。つまり、個人の消費力が極めて低いことから、中国経済の将来性を把握されることを嫌ったというのである。

 


(2)「時事評論家の江峰氏は7月30日、ユーチューブ上の自身の時事番組で、SECの新指針によって中国企業は今後ウォール街で資金調達ができなくなったとの見解を示した。同氏は、金融分野における米中間のデカップリングは加速化しているとした。「中国企業が、米政府に事実を記述した財務書類を提出するのを拒否しているため、米投資家にリスクをもたらした。こうした米中間のデカップリングは中国当局によって加速された。また、中国国内においては、当局は引き続き民間企業を抑圧していくだろう」。中国当局は、昨年上半期以降、独占禁止法違反の疑いがあるとして、IT大手のアリババ集団やテンセントなどに罰金を科し、アリババ集団系列の金融企業アント・グループの香港と上海両市場での上場計画を停止した」

 

中国は先ごろ、米国市場からの分離(デカップリング)を目指しているわけではないとして、世界的な金融機関を安心させようと試みた。ある証券規制当局のトップは、世界的な銀行や投資銀行のトップに対し、今後については、政策変更を行う前にそれが市場にもたらす影響を慎重に考慮してから行うと述べたという。

 


中国が、学習塾抑制に関してあそこまで抜き打ち的に行ったのは、出生率向上で一刻も猶予ならぬという切羽詰まったものがあったと見られている。株式市場への考慮などしている余裕がないほど、中国国内の矛楯が激化している結果であるというのだ。

 

(3)「こうした民営企業に対する中国当局の厳しい取り締まりを懸念して、米投資家は中国株の売却を進めている。7月29日まで、米国に上場している中国株98銘柄で構成されるナスダック・ゴールデン・ドラゴン・チャイナ・インデックス)は過去1週間、約20%急落した。また、中国当局が26日、営利目的の学習塾設立を禁止すると発表したことを受けて、教育関連中国株の下落幅は60~78%となった」

 

中国の抜き打ち的なやり方で、米国では大きな損害を被っている。中国は、これに対して何らの意向も見せていないのだ。

 


(4)「江氏は、中国当局が香港などの資本市場を「躊躇せずに鉄拳で叩き潰す」理由は2つあるとした。1つは中国共産党内において、習近平派閥、江沢民派閥、太子党派閥などの間の権力闘争に関わる。もう1つは「中国共産党政権は計画経済体制、すなわち公有制体制に戻ろうとする意図がある」という。同氏は、中国当局は新たな社会不安を引き起こさないために、直ちに民間企業を国有化しないだろうと推測した。「しかし、ハイテク企業などはみな、最終的に国家体制の下で運営される」

 

中国が、強硬策に出た背景は二つあるという

1)中国共産党内の権力争い

2)ハイテク企業は国有制にする

 

アリババのアントのIPO準備過程で、江沢民派がこっそりと大株主になりすましていた事実が発覚している。習氏の政敵だけに、ハイテクという時流企業を国有化して政敵を締め出すという謀略を考えても不思議はない。これによって、中国経済が発展しなくてもいい。習氏の座が安泰であれば良いという、これまでと全く異なる考えが強まっている可能性も否定できなくなっている。こうなると、世界覇権は二の次になって、「習近平独裁強化」が最大の目的にすり替えられるのだ。この辺は、流動的になってきたとも言える。

 

(5)「台湾淡江大学 外交・国際関係学部の鄭欽模・学部長は、米政府や国民は、中国当局による企業への干渉を強く懸念していると大紀元に語った。「SECが中国企業のIPO手続きを停止したことは、今まで中国寄りだったウォール街が、金融秩序を破壊した中国企業に向けられた批判を無視することができなくなったことを意味する。ウォール街の中国企業への支援がなければ、米中間の金融デカップリングはさらに進むに違いない」。鄭氏は、中国が公有制体制に戻るのは今後の流れで、当局は「内循環(国内大循環)」に切り替え、より自立した国内経済を成長の原動力とする狙いがある、との見解を示した」

 

米中デカップリングが現実化すれば、中国は米国と同盟国に包囲される形になる。習氏は「新長征」と嘯いていることから「内循環(国内大循環)」経済構造にして自立化(実際は孤立化)して超長期の抵抗を試みるのかも知れない。習氏は、「御身大切」で自分のサバイバルが最大の課題になっている。習氏は、生涯「国家主席」で居座り、権力を握り続けるしか自らの安全を保障する道はなくなっている。その点では、毛沢東と同じ運命を辿るだろう。