a0960_006628_m
   

中国軍による台湾と尖閣諸島への軍事圧力は、日に日に強まっている。日本は、これを傍観している訳でなく、南西諸島で着実に対中防衛線を固めている。

 

陸上自衛隊は、防衛空白地域となっていた南西諸島へのミサイル配備計画を進めている。2016年に日本最西端の与那国島へ駐屯地を新設した。鹿児島県・奄美大島と沖縄県・宮古島は2019年に新設。そして、2022年末までに南西諸島で4カ所目になる石垣島市に駐屯地が完成する。中国のミサイル攻撃を迎撃するためだ。

 


『大紀元』(8月5日付)は、「
石垣島にミサイル防衛部隊 南西諸島で4カ所目 2022年末まで=報道」と題する記事を掲載した。

 

日本防衛省は、強圧的な軍事拡張主義を取る中国共産党政権に対する抑止力を高めるため、台湾から南西諸島、九州における防衛能力を強化し、2022年末までに沖縄県石垣島に陸上自衛隊のミサイル部隊を配備する計画があると日本や台湾のメディアが報じた。

 

(1)「防衛省関係者がメディアに語ったところによると、石垣島に配備予定の部隊の規模は500~600人。陸上ミサイルと地対空ミサイルを構える部隊と、武力攻撃や大規模な自然災害などに即時対応できる部隊からなるという。近年、中国の軍事力の拡大に伴い、空母「遼寧」を中心とした中国海軍の編隊が、宮古海峡を経由して、中国の対米戦略ライン「第一列島線」を横断することが多くなっている」

 

中国海軍は、頻りと宮古海峡を通過して日本を威嚇している。そのたびに、日米海軍が詳細データを収集しており、日米へ対抗機会を与えているようなもの。決して賢明な策ではない。ただ、中国海軍が太平洋へ出るにはこの宮古海峡か、台湾南のバシー海峡を通るしかないという事情もある。

 


(2)「報道によると、防衛省はミサイル部隊の配備時期をまだ確定していないが、2022年末の完了を目指すという。岸信夫防衛相は、2023年の防衛予算の一部として、石垣島に近い与那国島に電子戦部隊を追加配備するための計画も進めていると述べた。岸信夫氏は今年4月、与那国島に展開する自衛隊を視察した。記者団に対して「台湾の近さを再認識した。南西地域の防衛強化は極めて重要な課題であり、着実に進めたい」と語った」

 

南西諸島は、台湾に近い地域である。ここへ、ミサイル部隊を配置することは、中国の喉元へ「匕首」を突付けるような威力を持つ。

 

(3)「対艦・対空ミサイルの配備計画がある石垣島は、台湾から約300キロの距離にある。1200キロにおよぶ日本の南西諸島のなかで、4番目のミサイル配備カ所となる。ほかには奄美大島、沖縄本島、宮古島に置かれている。中国軍は、台湾海峡で紛争が発生した場合、米軍の参戦を防ぐため、何年も前から接近阻止・領域拒否(A2/AD)戦略を展開してきた。 日本のミサイル配備は、中国海軍の第一列島線内における同戦略に対抗することとなり、台湾地域の紛争において、米軍による防衛能力を高めることにつながる」

 

下線部は、極めて重要である。中国軍は台湾侵攻のポイントとして、米空母の接近を阻む戦術として接近阻止・領域拒否(A2/AD)戦略を採用している。中距離ミサイルの発射で米空母の接近を阻止する戦略だ。米軍は、米ロ協定で中距離ミサイル開発を放棄してきたが、そこをまんまと突かれたもの。だが、米国はすでに米ロ協定を破棄して、中距離ミサイル開発に着している。これと同時に、日本の南西諸島で4カ所のミサイル部隊が稼働すれば、大きな戦略効果を上げられる。

 


ミサイル迎撃に見る実際の防衛効果は実証済みである。今年5月11日、パレスチナのロケット攻撃をイスラエルのアイアンドームで迎撃する様子が、イスラエル国防省によってSNS上で公開された。およそ20秒の短い動画の中で、イスラエルのアイアンドームは、約20発のパレスチナのロケットを、花火の爆竹を炸裂させるように次々と迎撃したのだ。

 

イスラエル国防省は、「90%の命中率を記録した」と発表した。アイアンドームは多数の実戦経験を通して同時迎撃能力が大幅に向上し、最大射程も70キロから100キロ以上にまで伸びた。当初はロケット弾・砲弾だけを防ぐことができたが、今では弾道ミサイル迎撃も可能なまでに進化しているという。

 

(4)「中国は台湾併合のために、武力行使を辞さないとの威嚇を継続している。これを受けて、日本は懸念を表明し、「台湾防衛は日本防衛」との認識を示す政治家も少なくない。中国外交部は、日本が台湾防衛への支援や援助を表明していることに対し、「中国への内政干渉」と反発している。岸防衛相は、82日に『フィナンシャル・タイムズ』によるインタビューで、中国政府が「台湾を包囲しようとしている」と警告し、国際社会に対して台湾海峡の平和維持、台湾の存続に注意を傾けるよう呼びかけた」

 

台湾にもむろん、ミサイル部隊は設置されている。これに加えて、南西諸島の4カ所のミサイル迎撃部隊が対応する。中国によるA2/AD戦略による米空母接近阻止が、果たしてどこまで有効か疑問となろう。中国が、尖閣諸島への軍事圧力で「中立日本」を反中へ立ち上がらせたのは、大変な誤算である。中国外交は、極めて強い感情論で動いていることが分かるのだ。