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中国が、香港で行っている民主派弾圧の「白色テロ」は逐一、世界中へ打電されている。あれを見れば、西側の「親中派」といえども絶句して、中国から身を退くであろう。世界覇権を狙うと言う中国が、西側を敵に回している姿は、世界覇権を諦めた結果とも見える。となれば、いま繰り広げている民衆弾圧は、自分の城を強引に守ろうという姿勢の表れにも受け取れるのだ。

 

『フィナンシャル・タイムズ』(8月3日付)は、「香港で広がる『白色テロ』、強まる政府批判封じ」と題する記事を掲載した。

 

香港のベテランジャーナリスト、スティーブ・バインズ氏が英国に脱出した。民主派を無差別に弾圧する「白色テロ」が香港で横行し、ジャーナリストが高いリスクにさらされているためだ。同氏が出国を明らかにした日、独立系の中国語ニュースサイト「端伝媒」が香港からシンガポールに拠点を移すと発表した。前日には香港のポップスター黄耀明(アンソニー・ウォン)氏が3年以上前の選挙集会で歌を披露して民主派候補を応援したとして逮捕された。

 

(1)「2019年の民主化運動を受けて、中国政府は20年に反体制派を取り締まる香港国家安全維持法(国安法)を施行し広範な反政府活動を弾圧してきた。反対派は同法がメディアなどの政府批判を封じるために悪用されていると指摘し、記者たちも報道の自由を抑圧していると訴える。バインズ氏は友人や公共放送局の香港電台(RTHK)の元同僚に宛てた手紙で、「国安法が昨年施行されたが、香港に高度の自治を認めるという中国政府の約束を信用して活動する余地はまだ残っていると思っていた。だが、そうした幻想は日を追うごとに打ち砕かれつつある」と述べた」

 

今、香港で始まっている弾圧は、習近平氏の「終身国家主席」を実現する上で不可欠な「ショー」である。かつて、ヒトラーがユダヤ人狩りを始めたと同じ手口である。こうして香港を手に入れた習近平氏は、自己の権力の絶大さを反対派へ見せつけているのだ。

 


(2)「RTHKは英公共放送BBCをモデルに1928年に開局したが、現在は編集の自主性を制限すべく業務の見直しを迫られている。香港政府は、19年の抗議デモの報道に偏りがあったとして同局を非難し、報道経験がない公務員をトップにすげ替えた。バインズ氏は個人的、政治的理由で香港を離れる決心をしたという。英『フィナンシャル・タイムズ』(FT)の取材に応じた同氏は、第三者を通じて香港の親中派から警告を受け、身の危険を感じるようになったと明かした。「(警告してきた人物は)けんか腰でこう脅迫した。『足元に気をつけろ。覚悟しておけ』と

 

下線は、中国がすでに暴力国家に落ちこんでいることを示している。

 

(3)「当局は6月、民主派の香港紙・蘋果日報(アップル・デイリー)の幹部数人を国安法違反容疑で逮捕するとともに同社資産を凍結して同紙を廃刊に追い込んだ。中国の国営メディアは、アップル・デイリー創業者で勾留中の黎智英(ジミー・ライ)氏を繰り返しやり玉に挙げ、同氏が米議員に対し香港政府に制裁を課すよう働きかけていたなどと批判した」

 

香港紙『蘋果日報』を廃刊に追い込んだ勢力に、金融機関が上げられている。蘋果への入金を拒否した銀行はどこだったのか。HSBC(香港上海銀行)も疑われている。

 

(4)「『白色テロ』とは台湾で戒厳令が解除される1987年までの数十年間、政府が多くの反体制派を投獄・弾圧した独裁主義体制を指す。香港では19年の反政府デモに対する報復への恐怖を描く表現として用いられている。バインズ氏は「香港を席巻する白色テロはまだまだ続く。事態が好転する見込みはみじんもない」と語った」

 

「白色テロ」は、香港から生まれた言葉だという。中国本土は「赤色テロ」、香港は「白色テロ」とは、悲しい話だ。

 

(5)「ポップ歌手の黄氏は18年の選挙集会で不正行為があったとして、民主派の元立法会(議会)議員の区諾軒氏とともに香港の汚職取り締まり機関である廉政公署に起訴された。廉政公署は「黄氏は選挙で区氏に投票するよう誘う目的で、集会参加者を楽しませるために歌のパフォーマンスを提供し、(飲食や娯楽を提供して投票を呼びかける行為を禁じた)選挙条例に違反した」と発表した」

 

香港では、ポップ歌手まで起訴されている。これが、かつての英国式民主主義が育った香港のなれの果てである。

 

(6)「19年の反政府デモで街頭を練り歩く移動式刑務所を制作した現代芸術家の黄国才(ケーシー・ウォン)氏も3日、身の安全を恐れて香港から台湾に避難したことを明らかにした。香港政府トップの林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は1997年に英国が香港を返還する際に中国が約束した自由が侵害されているとの主張を退けてきた。7月にはこう自慢してみせた。「株式・不動産市場からハイテク・新興企業、芸術・文化まで、いまやすべてが活況を呈している。香港に秩序と安定が戻ったからだ」

 

下線は、真っ赤な噓である。香港の自由と民主主義は、習近平の「白色テロ」で殺されたのだ。