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中国の有力不動産開発企業である中国恒大は、これまで黒い噂に包まれてきた。最近では、資材仕入れ先に払う資金がなく、完成したマンション10戸を渡し、それが時価の6割で売却するというSNSが話題になったほど。中国恒大の「運命」が、刻々と迫っている印象である。

 

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(8月13日付)は、「中国恒大の巨額債務、ついにツケを払う時」と題する記事を掲載した。

 

中国で最も大きな負債を抱えた不動産開発大手のトラブルは、収束にはなお程遠い。中国恒大 集団(チャイナ・エバーグランデ・グループ)の株価は今週に入り11%上昇している。電気自動車(EV)部門や不動産管理部門などの上場子会社の株式を一部売却する交渉を行っているとの発表が好感された。だが、同社の財務状況は依然として厳しい。同社株は昨年7月から80%近く下落した。社債もディストレスト債の水準で取引されている。中には額面の半分にも満たないものもある。

 


(1)「中国恒大が保有する上場2社の株式は約160億ドル(約1兆7700億円)と評価されており、差し迫った流動性の圧力を和らげる一助となるかもしれない。特に、安定した事業で利益を上げている不動産管理会社は、他のデベロッパーにとって魅力的な存在となり得る。一方、多額の負債を抱え、まだ1台も販売していない不採算のEV部門は、売却するのは難しいかもしれない。中国恒大が保有するEV部門の株式65%は約100億ドル相当で、2月から8割余りも落ち込んでいる。同社は今月既に、インターネット部門の株式7%を中国のインターネットサービス大手、 テンセントホールディングス を含む投資家に売却し、約4億ドルを調達している」

 

中国恒大は、最後のあがきをしている。新規部門でEV(電気自動車)を立ち上げるなどと手を広げているが、救済役にはほど遠い。万策尽きたところである。


(2)「財務の穴を埋めるためには、さらに多くの資産を売却する必要がある
。中国恒大は3月時点で約1040億ドルの有利子負債を抱えていたが、それすら最も緊急性の高い問題ではない。社債の償還期限は全て来年3月以降だ。それより心配なのは、支払いを受けていない納入業者や請負業者である。多くの業者が資金を取り戻すために訴訟を起こし、そのうち何社かは中国恒大の一部資産を凍結させることに成功した。一例として、深圳に上場している利欧集団(レオ・グループ)は先週、期限を過ぎたか期限が間近な未払いの広告料や商業手形を含め、5500万ドルを求めて中国恒大を提訴することを明らかにした。また、建材業者の塁知集団(レッツ・ホールディングス)は中国恒大の商業手形の受け入れを停止すると発表した。同社は既にそうした手形およそ500万ドル相当を有する。こうした小さな金額は積み上がるものだ」

 

3月末で、約1040億ドルの有利子負債を抱えている。これだけでない、日常の取引業者に支払わない「買掛金」(仕入れ債務)が、ほぼ1000億ドルもある。いずれも、弱小業者である。

 

(3)「中国恒大は12月時点で1000億ドル近い仕入れ債務があった。他のサプライヤーや請負業者も加わるにつれ、訴訟や資産凍結が負のスパイラルを引き起こす可能性がある。中国恒大にとっては比較的小さな債務でも、サプライヤーにとっては存続問題になりかねない。大口債権者は解決に向けた交渉意欲を持つかもしれないが、これほど多くの中小企業と調整するのは困難だ。中国恒大は昨年、買掛金を増やすことで借入金の縮小に成功したが、もはやそれをやり通すのは不可能だろう。慎重なサプライヤーが増えれば、既存プロジェクトを完成させるのも難しくなるかもしれない。他のデベロッパーは中国恒大のプロジェクトを幾つか買い取ることに関心があるかもしれない」

 

中国恒大は、買掛金を増やして借入金を減らすという自転車操業を続けてきた。だが、借入金と買掛金を合せると、約2000億ドルの債務になる。もはやクビが回らない状況だ。

 


(4)「今回の危機の引き金となった、中国政府のレバレッジに対する締め付けで、そうする力も抑制される可能性がある。
政府がこうした全ての問題を無秩序な混乱へ陥るがままにさせる公算は小さい。多くの中小企業や、事前販売済みのマンションの購入者が巻き込まれることを踏まえると、なおさらだ。ただ、借り入れに依存した成長を続けるための信用が中国恒大に流れ続けるのを放置することもないだろう。同社は資産売却を継続し、規模縮小を受け入れる必要がある。特に株主は、無傷では済まないかもしれない。中国恒大の膨れ上がった債務は、長年にわたって同社の成長をけん引してきた。とうとうそのツケが回ってきた

 

下線部の意味を要約すると、「減資」によって株主へ負担させる方法が浮上する。極端なことを言えば、100%減資して、有利子負債を資本に充当させ、見かけ上の財務体質改善を図るという荒療治も考えられるのだ。最近の中国政府は、株主に損をさせることに平気ゆえ、どんな再建策が出てくるか分からない。