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韓国文大統領は、来年2月の北京冬季五輪で北朝鮮の金正恩国務委員長と会談を計画中と見られてきた。だが、IOC(国際オリンピック委員会)は、東京五輪へ参加しなかった北朝鮮の資格停止を決めたことから、文氏は北京での金氏との会談が不可能になった。

 

文大統領は、来年5月までが任期である。文氏は、南北交流への糸口をつくる外交努力を重ねてきたが、北朝鮮の一方的な中断によって宙に舞っている。文氏は、IOCによる北朝鮮制裁によって、最後の会談機会を失うのは確実である。

 


『中央日報』(9月9日付)は、「IOC、東京五輪不参加の北朝鮮に資格停止 文大統領の平和構想に直撃弾」と題する記事を掲載した。

 

国際オリンピック委員会(IOC)が2022年まで北朝鮮のオリンピック委員会(NOC)の資格を停止させることにした。北朝鮮の一方的な東京五輪不参加決定にともなう懲戒で、2022年2月の北京冬季五輪に北朝鮮代表団が参加するのは不可能になるものとみられる。文在寅(ムン・ジェイン)政権の韓半島(朝鮮半島)平和プロセス再稼働計画にも直接的影響を及ぼす恐れがある。

 

(1)「IOCは8日に報道資料を出し、こうした執行委員会での議論結果を発表した。IOCは具体的に▽国際制裁により保留したが北朝鮮NOCに配分されていたIOCの財政的支援を没収する▽北朝鮮NOCの懲戒期間中はIOCのすべての支援やプログラムの恩恵受ける資格を剥奪する▽2022年北京冬季五輪出場資格を得た北朝鮮NOC選手に対してはIOC執行委員会が適切に決める――などだ」

 

IOCは、北朝鮮に対して3つの制裁を科した。ただ、選手の出場については個人の資格で出場する可能性を残している。ロシアは、ドーピングで国家として出場できぬが、個人資格で出場を認めていると同じ対応になる。

 


(2)「IOCは、「北朝鮮NOCが東京五輪の成功的開催に向け寄与しなかった点を考慮した措置」と明示した。「北朝鮮のNOCは東京五輪に参加しなかった唯一のNOCだった」とも明らかにした。ただ制裁期間は執行委員会の決定により再考できるとも明示した。これに先立ち北朝鮮NOCは4月に総会を開き、新型コロナウイルスを理由に東京五輪不参加を決めた。「悪性ウイルス感染症(新型コロナウイルス)による世界的な保健危機状況から選手たちを保護するために」としながらだ」

 

北朝鮮は、反日で東京五輪に参加しなかったが、こういう形でペナルティが加えられた。過去の財政支援も没収され、22年末までの資格を剥奪されるという不名誉な措置である。

 


(3)「これと関連してもIOCは、「われわれは東京五輪前数カ月にわたり北朝鮮NOCと多様な疎通と協議を通じ安全な開催を再確認しており、ワクチン提供を含め適切な解決策を見出すことができる建設的提案を最後の瞬間まで出したが、北朝鮮NOCから体系的に拒絶された」として不快感を隠さなかった。IOCは、北朝鮮にワクチン支援まで提案しながら東京五輪参加を誘導したが、北朝鮮が一方的な不参加決定を翻意しなかったということだ。IOCは、「北朝鮮NOCは(東京五輪不参加により)五輪憲章に提示された措置と制裁にさらされるという事実に対し極めて明確な警告を受けた」とも説明した」

 

改めて、IOCの持つ権力の大きさが注目される。ドーピングだけでなく、五輪不参加でも出場停止という制裁が加えられるからだ。五輪参加は義務である以上、国家としての不参加は許されない。北京冬季五輪も参加が義務である。欧米で言われている北京冬季五輪ボイコット論は、政府関係者が出席しないというだけの限界がある。

 


(4)「これまで外交界では、文在寅政権が2022年2月の北京冬季五輪を契機に南北関係改善を試みるだろうという観測が支配的だった。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が友好国である中国の慶事を祝う名分で五輪に参加する場合、南北首脳会合も可能になるかもしれないためだ。次期総選挙が2022年3月に行われることを考慮すれば、文大統領の任期末にぴったりのタイミングに機会を設けることができた」

 

文大統領は、今回のIOC決定が大きな痛手になろう。東京五輪には出席せず、北京冬季五輪へ出席するという形で、日本への「意趣返し」を狙っていたであろうが、これも不発に終わる。文氏の外交戦略は、ことごとく失敗という形で締めくくられそうだ。