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中国が、勝手に設定した「第一列島線」近傍の諸国は、共同で中国に対抗しなければならない。こういう呼びかけが、元フィリピン海軍トップからされた。

 

第一列島線とは、九州を起点に、沖縄台湾フィリピンボルネオ島にいたるラインを指す。中国は、ここを境界線にして米軍艦船を中国側に入れさせないという作戦海域である。具体的に言えば次のような作戦を意味している。中国海軍にとっては、台湾有事の際の作戦海域である。同時に、対米有事において、南シナ海・東シナ海・日本海に米空母・原子力潜水艦が侵入するのを阻止せねばならないというもの。

 

この第一列島線の内容が明らかになった以上、日米はこれを打破すべく戦略を展開している。日本が、南西諸島防衛でミサイル部隊を配置しいているが、当然な自衛権の行使である。フィリピンもこれに呼応しようという動きであろう。

 


改めて考えれば、中国の設定した第一列島線に対して、関係国が何ら共同で中国に抗議しなかったのも不思議である。中国が、多国の領土を自国の防衛線に決めるというのは主権の侵害に当るからだ。

 

『大紀元』(9月9日付)は、「『第一列島線の各国は団結を』日台比が共同戦略計画を策定すべき 比元将軍が提言」と題する記事を掲載した。

 

元フィリピン海軍副提督ロンメル・ジュデアン氏は、米政府系『ボイス・オブ・アメリカ』(VOA)のインタビューで、南シナ海台湾海峡で中国共産党(以下、中共)の脅威がエスカレートしている中、フィリピン、台湾、日本は緊密な防衛関係にあると述べ、3国が協力して対中防衛政策を展開するよう呼びかけた。

 

(1)「沖縄から南のフィリピンまでの第一列島線は、中共からの軍事的脅威に対する最も重要な防衛線であるだけでなく、中国の貿易の流れをコントロールするのに十分な海上輸送ルートでもあるとジュデアン氏は指摘。日本、台湾、フィリピンは、中共の軍事的脅威と現状変更の試みを効果的に抑止し、国際秩序を維持するために、継続的に拡大・改善可能な共同海洋軍事協力メカニズムを構築すべきだという

 

下線部分の指摘は、中国の脅威に直面する日台比にとって、いかに防衛するか重要である。ただ、三ヶ国同時にこういう認識が共有されなかったことは事実である。

 

(2)「ジュデアン氏によると、台湾第一列島線の中心に位置している。フィリピンにとっては、フィリピンの北側、台湾の南側の海域が最も重要な防衛エリアとなる。日本にとって最も重要な地域は尖閣諸島である。地理的には台湾がハブとなっている。台湾は、中共との政治的紛争に対処する経験を最も多く持っている。台湾が、日本とフィリピンの軍事協力や合同演習へ将来的に参加することは、オプションではなく必須であるという」

 

台湾の重要性は、米国バイデン大統領になってから強調されている。日米首脳会談、米韓首脳会談、G7首脳会談などを通じて、台湾防衛の重要性が取り上げられている。

 

(3)「同氏は、合同演習の鍵となるのは、共同作戦計画を策定するためのガイドライン(軍事協力指針)と通信システムであると指摘した。そのため、米国や東アジア共同体が採用している軍事協力指針に台湾が参加できれば、日本、台湾、フィリピンが一緒に合同海上演習を行う機会が生まれる。台湾が米国の認証を受けた通信機器を使用することで、軍同士の通信やデータ交換が可能になる。これにより、海洋安全保障協力・対話は、3国間の協力プロジェクトとなるという」



台湾が、東アジア共同体が採用している軍事協力指針に参加する事態になると、中国に台湾攻略の口実を与えることになろう。それは、中国を開戦へけしかけるようなもので危険である。そういうリスクを冒さずに、いかに台湾防衛に協力するか。その知恵が問われている。

 

(4)「日本とフィリピンは、過去に陸軍と海軍の共同訓練を行っており、今年7月には初の空軍共同演習が行われた。台湾の国防・安全保障研究所の学者である王尊彦氏は、VOAのインタビューで、台湾が安全保障問題で日本やフィリピンとの関係を維持し、将来的には両国の軍事演習を見学または参加することができれば、第一列島線の安全保障を強化することにつながると述べている。また、日本は東南アジア諸国への武器・機材の輸出を積極的に推進していることから、台湾と異なる装備システムを使用している国との相互運用性は、日本の規範によって徐々に解決されていくだろうと付け加えた」

 

日比両国が、台湾防衛で協力することで合意できれば、大きな進歩になる。

 


(5)「ジュデアン氏は、台湾の安全保障は日本とフィリピンの両国にとって重要であり、日本は「台湾有事は日本有事」を明確にしている。だが、フィリピン政府はまだそれを認識していないと指摘した。フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領は就任以来、何度も中国を訪問し、「一帯一路」構想への参加を積極的に推進するなど、親中的な姿勢を見せているが、南シナ海問題では、中国政府に対して厳しい姿勢で臨んでいる。一方、米国との関係では、ドゥテルテ氏は米中の間でバランスを保とうとしているが、そのアプローチは「極端すぎて、ほとんど効果はない」。同氏は、ドゥテルテ氏の米中両国に対する外交政策の迷走は、同盟国間の軍事協力に影を落としていると指摘した」

 

ドゥテルテ大統領の任期は、22年5月までだ。憲法上の規定によって再選禁止であるが、副大統領として実権を振うとの見方もあるほど。となると、フィリピンの対中政策はふらつく恐れが強い。