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習近平氏の「共同富裕社会」では、高騰した住宅価格の引下げも目標に挙がっている。それが、とんだ波紋を呼んでいるのだ。背負いきれないほどの負債を抱えた不動産開発会社が、資金繰りに躓いて、倒産の憂き目を見る緊急事態を迎えた。来年4月には、想像もできない倒産の大津波が来る。

 

不動産最大手中国恒大は、自らデフォルト危機を予告するという、かつて聞いたこともない状況に追込まれている。これまで、不動産開発融資は2~3年の間隔で緩和されたり、引締められたりするサイクルを描いてきた。今回は、これまでにない引締めが行なわれている。

 

習氏は、繁栄していた学習塾も鶴の一声で「窮地」へ追込んだ。今や、不動産開発がその二の舞いに遭っている。「住宅は住むためのもので投機対象でない」という至極真っ当な正論によって、バタバタと倒産する時代へ突入した。「ご時世が変わった」のである。

 


『大紀元』(9月9日付)は、「中国不動産会社 毎日平均1社のペースで倒産」と題する記事を掲載した。

 

中国メディア『時代週報』によると、今年度に入ってから中国不動産会社274社が倒産している。毎日平均1社が倒産している計算だ。

 

(1)「融創中国・代表取締役の孫宏斌(そん・こうひ)氏は先日、今年後半の不動産市場は「惨烈」となり、「我々以外の会社は破綻する可能性がある」と発言した。近年、中国当局は「家は居住のためものであり、投資用のものではない」と宣伝している。特に昨年後半からは管理当局が「3つのレッドライン」を提唱。不動産会社のレバレッジを制限し、住宅ローンの金額を厳格に管理するようになった」

 

中国経済を支えて不動産開発企業が、こういう惨憺たる状態である。若者の失業率が15%台という厳しい状況では、結婚もままならない状態である。中国では、結婚に当たり男性が新居を用意するのが慣例である。失業状態では結婚は無理。住宅が売れないのは当然である。また、都心部では約2割が転売目的で空き家になっているという調査がある。新築住宅が、販売不振に陥る理由は山ほどあるのだ。

 


放っておいても売れなくなるはずなのに、当局は次のような不動産販売チェックに踏み出している。

1)不動産会社のレバレッジを制限する。

2)住宅ローンの金額を厳格に管理する

 

要するに、不動産企業の借入れ制限と個人の住宅ローン制限である。これによって、企業も個人も住宅関連貸付から締め出されてしまったのである。不動産企業が、倒産に追込まれるのは当然である。

 

(2)「これにより、不動産業界の上場会社でも危機に瀕している。例えば、今年2月、業界のトップ30に入る「華夏幸福」社は、経済的な環境、業界環境やパンデミックなどの影響により、会社の運転資金の不足する事態に陥った。結果、一部の債務が計画通りに返済できなくなったと発表した。大手「陽光100中国」社も9月3日時点で、返済できなかった借入金および支払利息の累積残高は186億6400万人民元(約3180億円)に上ると発表した」

 

中国の最大手クラスの中国恒大が、デフォルト宣言する時代である。たとえ上場企業でも、資金繰りに窮するのは自然の流れである。この事態では、土地手当の必要性がなくなることを意味する。つまり、地方政府の土地売却益が減ることである。地方財政が火の車になっており、習政権がハイテク企業に寄付金を強要する背景がこれだ。

 

(3)「広発固収(中国の資産管理会社)のチーフ・アナリストである劉郁(りゅう・いく)氏は、昨年「3つのレッドライン」規制が導入された後、民間不動産会社の資金調達が大幅に厳しく制限されるようになったと述べた。その結果、過去に多額の負債を抱えている一部の民間会社は融資が受けられなくなり、信用を損なう恐れがあると指摘した」

 

不動産企業は、一度に多額の資金を借入れて建築にとりかかる。その借入が当局の管理でチェックされており、借入れができなくなれば、不動産ビジネスはお手上げである。倒産するしかないのだ。全て、自己資金で賄える不動産企業など存在するとは考えられない。運転資金は、融資で賄っているのだ。

 

資金需要には、運転資金と設備資金がある。不動産企業は、物件を売却すればそれでプロジェクトは終わる。こうして、全てが運転資金という性格を持つのだ。その運転資金借入ができなくなれば、一巻の終わりになって倒産するしかない。水商売と同じ性格である。

 

(4)「中国指数研究院の調査によると、不動産会社が債務返済のピークを迎えるのは今年9月で、返済額は838.5億元(約1.42兆円)。次回のピークは2022年3月から4月で、返済額はそれぞれ1039.4億元(約1.77兆円)と9400.6億元(約16.01兆円)になるという」

 

中国不動産企業の債務返済が集中するのは、今年9月と来年3~4月という。

今年9月  約1.42兆円

来年3月  約1.77兆円

  4月 約16.01兆円

 

この返済額のピーク金額を見れば、これからの不動産業界に何が起るかは見当がつく。来年の4月は、あらかた倒産になりかねないであろう。中国経済は、ただならぬ事態へ突入した。