ムシトリナデシコ
   

これまで、韓国の経済成長率は5年間で1%ポイントずつ低下してきた、と指摘されている。ところが、文政権になって状況は大きく変わった。経済政策の失敗で潜在成長率が、2019~20年に0.3~0.4%ポイントと一挙に低下したというのだ。これは、韓国の中央銀行である韓国銀行が発表したもの。

 

5年間で1%ポイント低下は、生産年齢人口比率の低下を反映したものである。労働力が減少すれば、経済成長率の低下は不可避である。これに対して、ロボット化で補えば良いという楽観論もあるが、ロボットは生産しても消費をしないのだ。労働力減少は、経済成長にマイナスとなる。

 

韓国の場合突然、生産年齢人口(15~64歳)が急減するわけでない。減少はするが、文政権による最低賃金の大幅引上げによる雇用構造の破壊が、潜在成長率を大きく下方へ引っ張った。韓国進歩派政権が、皮肉にも韓国を貧しくするのである。韓国国民は、こういう事態を認識せず、今日も政争を繰り広げている。

 


『中央日報』(9月13日付)は、「新型コロナの衝撃で2%台に落ちた韓国の潜在成長率、『雇用悪化が原因』」と題する記事を掲載した。

 

高齢化で始まった韓国の潜在成長率下落傾向に新型コロナウイルスが油を注いだ。新型コロナウイルスの衝撃で今年と来年の韓国の潜在成長率は2.0%台まで落ちたという分析が出てきた。

(1)「韓国銀行は13日、「新型コロナウイルスを考慮した韓国経済の潜在成長率再推定報告書」を通じ、2021~22年の韓国の潜在成長率を2%前後と推定した。2019~20年の潜在成長率も2.2%前後と推定した。2019年8月の推定値である2.5~2.6%より0.3~0.4ポイント低くなった。潜在成長率は物価上昇を刺激しないで達成できる最大の経済成長率を意味する。潜在成長率が下落したというのは経済の基礎体力が弱くなったとみることができる。韓国銀行は「新型コロナウイルスの衝撃で雇用事情が悪化し、サービス業生産能力が低下した点が下落要因として作用した」と説明した」

 


韓銀は、最近の潜在成長率を思い切って引き下げた。

2019~20年の潜在成長率2.2%前後。

2021~22年の潜在成長率2%前後。

 

2019年8月の潜在成長率の推定値2.5~2.6%より0.3~0.4ポイント低くなっている。これは、文政権の稚拙な経済政策を織込んでいると見られる。潜在成長率は、ある意味で「物理的」な概念であって、短期的に大きく変動するはずがない。文政権による最低賃金の大幅引上げがもたらした雇用構造破壊が、潜在成長率を引き下げた見るほかない。

 

上記のように潜在成長率が、0.3~0.4ポイントも引下げられる事態を、金銭で評価すべきである。厖大な金額がむざむざとドブに捨てられ、救える命も救えないという悲劇が起っているのだ。韓国人は、こういう厳しい現実を認識することだ。大きな罪を犯しているのである。

 

(2)「潜在成長率は新型コロナウイルス流行前から下落傾向を見せていた。韓国銀行によると潜在成長率は2011~2015年に3.1~3.2%、2016~2020年に2.5~2.7%と下落した。高齢化による生産年齢人口減少など構造的要因が原因に挙げられる。ここに新型コロナウイルスの衝撃が加わり潜在成長率下落幅を拡大した。韓国銀行は新型コロナウイルスが潜在成長率に及ぼす影響を2019年~20年にはマイナス0.4ポイント、2021~22年はマイナス0.2ポイントと予想する」

 

韓銀は、中央銀行であるから文政権批判を控えているが、韓国の生産年齢人口比率のピークは、2014年の73.41%である。それが、2020年に71.67%へ低下している。この低下幅は、明らかに潜在成長率を引下げる。文政権には、この低下幅を補う政策としての生産性上昇政策を行わず、最低賃金の大幅引上げという逆療法を行った。これが、禍根を残したのだ。

 


(3)「韓国銀行は新型コロナウイルスによる供給網の悪化、在宅勤務拡大にともなうITインフラ構築などの費用増加、サービス業の生産能力低下、構造的失業にともなう履歴効果(経済に大きな衝撃が加えられると以前の傾向に回復するのに長い時間がかかる現象)などを原因に挙げた。韓国銀行は「オンライン授業の拡大にともなう育児負担増加、対面サービス業の廃業などで女性の経済活動参加率が大きく下落し労働投入が減少したこともまた別の要因になった」と説明した」

 

下線部は、最低賃金の大幅引上げがもたらした雇用構造の破壊である。まさに構造的失業がもたらされている。新型コロナウイルスが、一段と構造的失業を深刻化させたのである。例えば、文政権が発足した2017年上半期を境に、青年層(15~29歳)の雇用が減少傾向になっているのに対し、高齢層(60歳以上)の雇用は増えているのだ。この2つの年齢層の雇用数が、韓国で史上初めて逆転したのは、文政権の雇用政策の失敗を裏付けている。高齢層の雇用が増えたのは、政府の失業救済のアルバイト増である。

 


(4)「韓国銀行は、「潜在成長率が以前の傾向に回復するためには新型コロナウイルスが残した持続的な影響を最小化し、経済構造の変化にも効果的に対応していく必要がある。新成長産業に対する支援を強化し企業の投資環境を改善することが何より重要だ」と明らかにした。このほかに雇用環境が弱くなった女性と青年の経済活動参加率を高めるための政策的努力も潜在成長率回復の条件として提示した

 

下線部は、最低賃金の大幅引上げがもたらした雇用構造を元の状態に戻すことを示唆している。つまり、韓国では進歩派政権が存続するかぎり、経済成長の回復は望めないことを暗示している。日本人の私が、なぜこういうことを心配するのかといえば、韓国社会でまともに実証分析する人が現れないからだ。